ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 時の力? 僕が訝しげな顔をした先で、クルッチはぴしっと長い腕を振った。
『でも、ユーシャさまの使う力と、この国のヒトが持ってる力は元が違うッチ。源流が異なる時の流れが反発して、あの獣に流れる時間をメチャクチャにしたッチ』
 レナート殿? 掛けられた声に顔を上げると、心配そうな顔がある。僕は慌てて取り繕った。
「僕がエテーネ出身じゃないからでは?」
 嘘ではない。
 クルッチの言葉が正しければ、あの獣の光線はエテーネの人間にしか作用しないのだろう。しかしエテーネ王国の出身でなくても、力が同じものだったら僕も昏睡状態だった。どんな結果であれ、僕は攻撃を受けたのだ。運が良かっただけで、誉められたものではない。
 なるほど。ローベルさんは納得したように報告書に視線を落とした。几帳面な文字が、白い紙の上に次々と書き込まれていく。
「それが理由とは軽々しく判断できないが、特記事項として君がエテーネ王国出身者でない事を記しておこう」
 そうだ! ラゴウ隊長が喜色満面で声を上げた。手紙に齧り付くように筆を走らせる。
「異形の獣! 異形獣! 我ながら気の利いた名前じゃないか!」
 うきうきと心が弾む様子を隠しきれず、隊長は蝋を乗せたスプーンをアルコールランプの火に掛けて溶かす。手紙を収めた封筒に溶かした青い蝋を垂らすと、王国軍の印璽を押す。
「突如現れた異形獣を撃退した功績! 私が王都に招聘され昇進するのは間違いない!」
 封蝋した手紙を翳すと、明るい未来が見えているのか高らかに笑い出す。
 そんな様子を呆れもせず真面目な顔で見ていたローベルさんも、分厚くなった報告書を封筒に収めた。僕に向けて差し出された封筒は、襲撃の状況や、獣の攻撃動作、被害者の状況など、沢山の報告書を収めて重たげに撓んで垂れている。ラゴウ隊長がたった一枚の報告書で浮かれているのとは対照的だ。
「君が馬を最も早く駆れる。不寝番で疲れている所に悪いのだが、この報告書を至急王都キィンベルに届けてほしい」
 わかりました。そう応えて封筒を受け取ると、ずっしりとした重みが腕に伝わった。
 今すぐに厩舎へ向かい、緊急事態に備えて鞍を着けられた馬に跨って駆けて行ってしまいそうな僕の肩を、副隊長は労うように叩いた。生真面目な顔が綻んで、うっすらと笑みが浮かぶ。
「腹が減っては戦闘は出来ぬ。朝食を用意する間、仮眠してくると良い」
 僕は恥ずかしさに頬が熱くなった。
 大エテーネ島全土に及ぶ王国は、大陸と呼ぶには小振り程度の広大な国土を擁している。王都キィンベルまで、馬を飛ばしても一日は掛かる。意識を失った隊員を馬車で運ぶのに、三日を予定していた。一睡もせずに馬を飛ばして、うっかり眠気に意識が落ちてしまったら馬に怪我をさせてしまう。
 なだらかな坂の上に建った本部を出ると、辺境が一望できた。
 島国全体は日中は暑く蒸すが、夜になるとからりと乾燥して冷える。磨かれた空気に朝日が黄金色となって辺境の自然に降り注いだ。雪を冠る程の標高がない山々は、頭のてっぺんから少しずつ濃い緑の衣を脱いでいる。島全体に無数の川が走り、増水した川に削られて起伏に富んだ渓谷を生み出していた。人の住処が王都に集中している関係か、大地は手付かずの豊かな森林が萌黄色に染まる。
 故郷とは全く違うが、自然豊かな田舎の風情に心が落ち着いた。
 僕は大きなあくびを一つ漏らして、草むらに横たわる。涼しげな風が僕の顔を撫でて目を閉じさせ、暖かい日差しが掛けられて緊張した体を解していく。一緒に王都に行く子は誰だろう。そんな考えがふわふわと浮かんだ。
 お前って本当に寝付き良いな。そんな相棒の声が聞こえた気がした。

ラゴウさんの小物っぷりが面白い。自分が描かないキャラを描いてる感がすごくする。

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