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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
DQ11小説アンソロジー主催を勢いでしている傍ら、switch購入してバケツを愛でるイカであり、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコがあれば生きて行ける!
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「チキであったな」
 そう呟いたラダールの言葉に、王の槍達は小さく頷いた。
 祝いの演舞の素晴らしさは、ラダールのみならず王の槍の誰もが息を飲む雄々しさと壮麗さを感じさせていた。海を知らぬ山の民であるカンバル人にとって、波々と張った巨大な水盆のようなルノ・ヤルターシという舞台の上で、不安定な船の上を跳ねまわり演武を交えることは想像もできぬほどに難しく思えた。暴れ狂う馬の上に立って、槍舞をするようなものである。
 しかし流石は海の男。サンガルのタルサン王子の実力は、屈強な男達の中でも一際に輝かしいものだった。そんな彼が、躓きよろけ、倒れたところを新ヨゴ皇国のチャグム皇子に抱きとめられたことは青天の霹靂ともいうべき失態であったろう。
 だが、武芸に秀でたカンバルの男達は誰もが見抜いていた。あれはタルサン王子の失態ではなく、ワザとであると。チャグム皇子が彼の拳を跳ねあげなければ、タルサン王子の拳は容赦無くチャグム皇子の顔を打ち据えたことだろう。
 チャグム皇子に怪我はなく、その場を穏便に済ましてしまった。結局はサンガルと新ヨゴの間のことであり、カンバルが口を挟めば大小であれ軋轢が生まれる。このことにラダールは言及しなかったし、王の槍もまた彼らの王が口を噤んだことを口にすることはなかった。恐らくそれはカンバルだけでなく、他国の王族の護衛達も感じていたことであろう。だが、彼らの言葉は全てチャグム皇子の機転の前に封じられてしまった。このことは一生明るみに出ないことだろう。サンガルは新ヨゴに大きな借りを作ったことになる。
 それよりも、チャグム皇子がとっさに行った受け身。これが、カンバルに伝わる『チキ』という体術であったことの方が、彼らにとって驚きであったのだ。カンバルで武芸を嗜むものは、武器を握る体を作るための基礎としてまずチキを学ぶ。カンバルが武勲誉れ高いのは、馬でも槍の扱いに秀でているのでもなく、武器がなくともその身一つで武人たりうるが故である。
「咄嗟の反応を見るに、チャグム皇子は祝いの演舞の全体を見ていたことでしょう。多少武術に通じて出来る技ではありません」
「影武者か? 供につけている者が皇太子にしては少なすぎると思ったが、影武者ならばありうる」
「いや、あり得ない。サンガルの『新王即位ノ儀』に影武者を送るなど、互いの国に亀裂を生じさせる愚かな行為だ」
「しかし、新ヨゴ皇国の帝になる者は、穢れてはならぬという。武術は穢れに近い存在で、護身用に学ぶ機会も与えられぬはずだ」
 口々に交わされる言葉を聞きながら、ラダールはぽつりと呟いた。
「歌語り」
 王の槍達ははっと気がついた。美しい歌声を持つ放浪の歌い手。彼の歌はカンバルの王城でも披露されたことがあり、その演目には隣国であるチャグム皇太子の物語があった。チャグム皇太子がカンバル出身の女性の助けを得て、天の恵みを引き寄せた話であった。多くの家臣は大それた物語と流したが、ルイシャ贈りの儀式に参加した者達はその不思議な出来事に興味深く耳を傾けた。
「チャグム殿下は本当にカンバルの民に助けられて、あの場にいるのだな。縁とは不思議なものだ」
 ラダール王はそう言って、窓辺に歩み寄った。サンガル王の計らいで最も涼しい風通しの良い部屋を当てがってもらったのだろうが、日が沈んでもカンバルの夏よりも暑かった。確かに海の恵みは素晴らしく、豊かさも美しさもカンバルとは比べものにならぬほどである。しかし、この暑さだけはどうにも我慢できなかった。
「早く、ユサの山並みを見たいものだ」
 部屋にいた誰もが、王の言葉に心から同意した。
 どんなに素晴らしい場所でも、故郷を敏感に感じてしまうほどに恋しかったのだ。


虚空の旅人序盤あたり。
新ヨゴが牛車、ロタが馬車だとしたら、カンバル王は普通に馬乗って来そうですよね。カンバルは武人の国で王も武人という設定なので、気弱な王様でもあまり守られてない感がありそうです。というか、王の槍が強すぎるので王という括りであるならばかなりの強さを持っているはずなのに、ひ弱に感じられそうでちょっと可哀想です。(この手の話でまた一話増えそう)
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