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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
DQ11小説アンソロジー主催を勢いでしている傍ら、switch購入してバケツを愛でるイカであり、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコがあれば生きて行ける!
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 舞い手が全てを語った後、初めて王の槍が王の元に召集された。カンバルの王、ラダールはカンバル人にしては色の白い男ではあったが、その顔色が蒼白に見えるほどに顔色が悪かった。体調が優れないのか、王の一挙手一投足に武人達の眼差しが向けられた。だが、物心ついた時からカンバルを導く武人として叩き込まれたラダールの足運びは、その気質とは裏腹に乱れなく力強いものだった。
 掛けよ。その言葉がようやく王の槍達の耳に触れ、カンバルの氏族最強の槍使い達が席に着いた。
「バルサから、皆、全てを聞いただろう」
 ラダールの消え入りそうな声に、王の槍達は無言で頷いた。
 先代カンバル王が奸計により王位を手に入れたこと。武人が武器で打ち合い力量を示すのと異なり、ラダールの父であるログサムは病弱な兄に毒を盛り殺し、口封じのために主治医を葬った。その主治医にも、娘の命を脅かすことをチラつかせ脅迫させたうえで実行させたのだ。そして最終の仕上げに娘を殺す。ここに居並ぶ王の槍だけではない、カンバルの民全てが嘔気付くようなおぞましい事実だった。
 そして主治医の男から娘を託された、ジグロ。彼は、ここにいる王の槍の親族を殺している。
 バルサはジグロがなぜ、友を殺さなくてはならなかったのか。なぜ、彼らの敬愛する親族は殺されなければならなかったのか語った。この場にいる全員が、ラダールの父の奸計の一部始終を知るに至っていた。
「私の父の行いは許されることではない。だ、だから、お前達が私に、忠誠を誓い続ける、ことも、ない」
 震える王の言葉に、王の槍達は王が何を言いたいのか察した。
 ラダールは自分に自信がない。誰よりも自分が王であって良いのかを悩むような男だった。気弱で判断力に欠き、お世辞にも賢明という評判は得られてはいない。彼が王であれたのも、偽りの英雄であるユグロの存在があったからだ。
 今では王の槍が王の意見を促し聞いている。しかしユグロが隣にいた時は王の意見より先にユグロが物言い、それに王が同意する形式が成り立っていた。先王が崩御された直後に即位した、幼さの残るラダールであったら誰もが致し方ないと思うだろう。だが、もう、ラダールは成人している。
「わ、わたしは、王に、ふさわしくない。お前達が、そう思うなら、あ、新たな王を、選ぶと良い」
 ラダールは絞り出すように言った。
 ログサムの息子はラダール一人だが、ログサムには兄弟が多くいた為にラダールには幾人もの従兄弟がいる。ラダールよりも年上の従兄弟も存在した。中でもアローンは溌剌で聡明と評判であり、王の側近として挙げられる日も遠くはない。
 ログサムの陰謀を明らかにするだけで、ラダールを今の地位から引きずり下ろすことは実に容易いことだった。そして王の槍が全員で新たな王を選び忠誠を誓えば、カンバルに新たな王が誕生する。それを止める力はラダールにはなかった。
 ラダールはじっと待った。王の槍達が己を王として失格だと罵る声を、薄汚い王座に座していると侮蔑する声を、無能な王だと失望する声を、ありありと思い描いていた。とても苦しいことだったが、それを否定することができなかった。
 『そんなことはありません』ユグロの声が耳に触れたが、ラダールはその声を拒絶した。自分が王であることが、カンバルの未来を曇らせることをラダール自身が一番よくわかっていたのだ。
「王のご意見は理解いたしました。我々の意見を申させていただきましょう」
 そう言ったのは、ムロ氏族の王の槍だった。彼は席から立ち上がり、集まった王の槍達を見回した。全員が起立し、その石突で床を打った。ダーン! 響き渡った音にラダールはびくりと身を固めた。
『我らが王は、ラダール王、ただ一人!』
 王の槍が声を揃えてそう言った。その言葉に、ラダールは目を見開き、口だけが『なぜ…』と動いた。
「我々は王に忠誠を誓った瞬間より、絶対の服従を自らに課しています。王の判断が過ちであっても、我々は従います。ログサム王にジグロ討伐を命じられた先代の王の槍達のように、我々は私情を捨て王の手足となるのです。その覚悟は今もこの槍の穂先の輝きのように鈍ることも陰ることもありません」
 王の槍達が口元に笑みを浮かべ、彼らの王を見ていた。
「王よ。貴方は、自身が思うようなお方ではありません」
「先代の陰謀に、生まれてすらいない我らの王が無関係であることは明白」
「ルイシャを取りに行く時、王は怯えておいででした。美しくも未知の世界、偉大すぎる山の王。圧倒されたのは、我々とて同じです」
「カームの言葉で恐怖を振り払った貴方の行いは、まさしく王だった」
「王は自らの恐怖よりも、民を思い行動できるお方であると示したのです」
「恐怖を振り払っても、手元が狂うのは混乱と等しい。しかし、王は見事ルイシャを賜った。冷静であった表れです」
 そして、最後の王の槍が言葉を口にした。
「王がカンバルの民のためにルイシャを得たその日、私達は忠誠を新たにしたのです」
 金の輪が王に向け高々と掲げられた。その金の輝きは朝焼けのように美しかった。


こういう話があったんじゃないかなぁあああ!!とか思いながら書いてる!
ラダール王に絶対服従の王の槍達だけど、ラダール王が『ど、どうしよう』とかオロオロしてると、色々と思うところがあって思うところがとても従者のそれじゃないだろうところが面白いです。『もうちょいしっかりしろ』って人から『おいおい、そう答えちゃうんですか!?』って人まで様々っぽい。体育系思考故に『ごちゃごちゃ言ってねーで決めろー!』とか思ったりしてもいい。
ラダール王が超大器晩成型なので、王の槍や従者の忍耐が試される。

いやぁ、おかげさまで、脳内に沸いた守り人話を出し切ることができました。あーすっきり。お付き合いいただき、ありがとうございます!
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