ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 天の神よ、地の人よ、かの者をたたえよ。
 危険な魔物を討ち滅ぼし、大エテーネ島に住まう諸氏族を支配せし、マデ氏族の長レトリウス。その威勢はレンダーシア全土に響くまでとなった。
 レトリウスの武勇、キュレクスの叡智、ユマテルの秘術。それらが集い束ねられ、ここにレトリウスが冠を戴く偉大なる王国が生まれた。
 国の名はエテーネ。
 キュレクスより齎された名は、異邦の言葉で「永遠」を意味する。

 ■ □ ■ □

 エテーネ王宮から最も離れた閑静な区域に、マローネ叔母さんに充てた小さな離宮がある。元々は出産直後や病気をした王族の療養として建てられた宮である為、王宮を凝縮したような贅を凝らした空間が広がっている。日当たりの良い一角には王宮の中央に聳える大樹を接木した大木が育ち、池の周辺にはラウラの花畑が出来ている。結界によって風雨から守られ、大樹の木陰で日差しの劣化もない宮は、美しい芸術品のように佇んでいた。
 足早に離宮へ足を運ぶ俺に、警護にあたる兵士が敬礼する。短く問題ないという報告を聞き労いの言葉を返すと、俺は玄関の扉を開け放つ。建国王の逸話を描いたステンドグラスが美しい玄関広間から階段を登ると、壁のない広々とした空間に子守唄と木の葉擦れが囁き合うように聞こえていた。王宮の聞くに絶えない醜聞も、ここでは小鳥の囀りに退けられている。
 傍に控えていたファラスの冬空の瞳がこちらを向くと、マローネ叔母さんにそっと声を掛ける。ぱっと顔を上げた叔母さんの小麦色の髪が、日差しに金色に輝いていた。赤子を膝に抱いた叔母さんの傍に歩み寄ると、あんな恐ろしい目に遭ったというのに、すやすやと眠る従兄弟を覗き込む。
「将来は大物になりそうですね」
 叔母さんが愛おしそうに従兄弟の頬を、指の背で撫でる。
「助けてくれたプクリポ族の子が、祝福を授けてくれたそうなの」
 隣国のリンジャハルは港町の関係で、生まれた赤子はウェディ族から祝福を受ける風習がある。ウェディ族の祝福を受けた子供は泳ぎが上手くなり、海の幸運に恵まれると言われている。エルフ族は聡明に育つ幸を授け、ドワーフ族の寿ぎは技巧を伸ばし、オーガ族の祝いは頑強な体を与える。とはいえ赤子を腕に抱き、赤子の幸福を願ってもらうだけの所詮験担ぎ。だがその風習はレンダーシアの各所にあり、訪れた異国の旅人を持て成すかわりに祝福を求めた。
 プクリポ族の祝福は、幸運。
 従兄弟の父はリンジャハルの悲劇で行方不明になり、先日には実の伯父に命を狙われた。時渡りの才能に恵まれた親を持てば、否応なくエテーネ王国を背負わされるだろう。波瀾万丈な星の下に生まれた従兄弟。どんなに過酷な運命を歩まされようと、幸せであって欲しいと願うならこれ以上ない祝福だ。
 クオード。俺の手を握った叔母さんの切実な表情に、胸が一つ高鳴る。
「私とこの子を守ってくれた旅人達を、どうか助けてあげて」
 叔母さんも姉さんも、父が旅人達を処刑する事に酷く心を痛めておいでだ。ドミネウス邸にミジンコのように湧いたルアムとレナートは、太々しい態度で気に入らなかった。しかし王都キィンベルで停滞した流通を支え、ファラスの要請に応じて叔母さんと従兄弟を守ろうとしてくれた事に心から感謝している。処刑を回避し救いたいと、俺だって思っているのだ。
 俺は叔母さんの手を優しく握り返した。
「勿論です。姉上と共に救出の手を打っています」
 ありがとう。叔母さんは潤む瞳で俺を見て、そっと頬を撫でた。包み込む花の香りと柔らかな熱、赤子から立ち上る甘い香りを目を閉じて胸いっぱいに吸い込んだ。
「貴方もメレアーデも無茶をしては駄目よ。貴方の無事を願っているわ、クオード」
 叔母さんの傍に控えていたファラスも、誇らしげに俺をみている。
「クオード坊ちゃんの立派なお姿、我が主にもお見せしとうございました」
 かっと顔が熱くなる。
 パドレ叔父様の従者であるファラスは、俺が乳飲み子だった頃も知っている。幼い頃は従者のみならずパドレ叔父様の邸宅を守る使用人達も、俺を『坊ちゃん』と呼んでいた。だが、もう俺は坊ちゃんと呼ばれる年齢じゃない!
「俺を坊ちゃんと呼ぶのは禁止だ! 良いな!」
 かしこまりました。ファラスの肩が笑いを堪えて震えていた。

祝福の話はありそうだなって事で書いてます。
ちょっとマローネママ様に触れておかないと、次に出てきた時誰この人状態になりかねないので、ここで出てもらいました。

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