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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
DQ11小説アンソロジー主催を勢いでしている傍ら、switch購入してバケツを愛でるイカであり、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコがあれば生きて行ける!
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 紫の衣はまるで闇を滑るように真紅の巨獣に迫った。振り下ろされた鋭い鉤爪を蝶のようにひらりとかわし、まるで翼でも背に生えているかのように軽々とアルゴンリザートの背に降りた。抜き身の白刃にいきり立った別の個体が、アンルシア姫の乗っている個体に体当たりをして両者が揉んどり打って地面に倒れた。
 兵士達も次々にアルゴンリザードの群れに突撃していくが、長い尾に払われ転倒し踏みつけれる者、短い腕と油断して爪に切り裂かれる者が続出した。優雅に翻弄するアンルシア様と違い、兵士達は明らかに劣勢で足手まといに見えてしまう。
 私達も手伝うことがあるだろうかと、やきもきした時、アンルシア様がさっと腕を振り上げた。淡い光が雨のように兵士達の上に降った。傷が塞がり、立てなかった者が重い体を引きずりながらも立ち上がる。ベホマラー。こんな上級の回復魔法を僧侶でもないのに使いこなす…、これが勇者という存在の実力なんだわ。
 アンルシア様が白刃を閃かせるごとに、アルゴンリザートの尾は断ち切られ、深く切り込まれた鱗から鮮血が迸る。逃げる背を切り裂き、転倒した背を踏みつけて笑っていた。ほぼ一方的で圧倒的な戦いを、彼女は楽しんでいるようだった。
 笑っている。
 胸がざわめいた。『違う』と、心のどこかから声がする。
 勇者は魔物と戦い、苦境に立たされることばかりで戦いに笑みを見せる印象がない。それでも、弱きものは敵であっても差し伸べている優しさを持つ者だ。戦意を失った魔物を見逃し、殺した魔物達が天の梯を昇れるよう祈る。そんな存在であったはず。
 …どうして、そんなことを思うんだろう。
『轟く雄叫びが空に震えました。ギーっと不気味な音を立てて大地は割れ、地獄の門が開いていきます』
 男の子の声が聞こえる。声変わりのしていない、まだ幼さの残る声。
『地の底から恐ろしい魔物達が現れ、アストルティアを真っ暗な闇で覆ってしまったのです。ですが、人々は嘆くことはありません。なぜなら、グランゼドーラ王国に勇者がいたからです』
 これは、勇者様の物語だ。どうして忘れていたんだろう?
 今までピペの絵本を読んでも懐かしいと思うばかりだったのに、この声を聞いただけで全ての内容が湧き出でる泉のように次々と思い浮かべられる。
『勇者が力を解き放つとアストルティアは暖かい力に包まれ、魔物達は逃げて行きました』
 そうだ、勇者様が無益な殺しをしないと思ったのは、その一節があったからだ。勇者様の力は魔物達を殺すのではなく、人を守るためにある。逃げる魔物を追ってまで殺めるような人ではない。
 アンルシア姫は…この人は、勇者じゃない。
 心の声が、なぜか断言した。
「ボーッと するな! ミシュア!!」
 ラチックさんの声が思考を切り裂いた。切り裂かれた隙間から現実が飛び込んでくると、目の前にアルゴンリザートが迫っていた。その手が振り上げられ、今、振り下ろされようとしている。
 爪が私を切り裂く! 盾を滑り込ますことも、避けることもできない。その事実が恐怖になって、私の口から悲鳴が迸った。青い瞳を大きく見開き絶望に塗れたひどい顔をした娘が、迫る爪に歪んで映った。それから視線を引き剥がし、頭を抱え、強く目を瞑った。

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