ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 少なくとも父は俺を納得させようと、説明してくれたのだろう。全く要点を欠いて目的が見えず、民を害したのは己だと自供し、我が子を道具とする人として有るまじき行為。どれをとっても納得も理解もできないが、少なくとも父の誠意だったと思いたかった。
 しかし同時に、父が己は何も悪き事をしていないという、弁明を連ねているようにも感じた。実の娘の命を脅かす行為は、己の本意ではなく王国の為だと責任を転嫁する。俺が従えば己の弁明は正当化されるのだろう。
 俺は姉さんを抱き上げ装置に向き直るのを見て、父が満足そうに頷いた。
「あと少しで時見の箱が、余にエテーネ王国の滅びを回避する未来を見せてくれる」
 もう父の目に俺は映っていない。
 俺が装置の前に姉さんを横たえた、水が少しでも避けられるように外套を掛けたのにも気がつけない。愛しい人を見上げるような熱のこもった眼差しが神具に注がれ、うっとりと陶酔した横顔が見えるばかり。
 ぐずる子供を宥める風を装ったような、雑な扱い。衰弱した子供を心配すらしない、親としての自覚の無さ。世界が己を中心に回っている王は、抱き留めるように神具に手を広げる。
「滅びの未来を回避すれば、余の名は『救国王ドミネウス』として未来永劫語り継がれる! 余の功績は太陽のように燦然と輝き、愚弟など家系図を汚す惨めなシミになるであろう!」
 鞘の中を刃が駆け抜け、涼やかな音を立てて抜き放った。
「パドレ叔父さんへの劣等感だけで、これだけの事をしでかしたのか!」
 なんて愚かな!
 時渡りの力が弱い事は、王家の恥。その劣等感は、父だけのものではない。
 姉さんは時渡りの力があろうとなかろうと、俺を受け入れてくれた。父が俺を疎ましく思っていると知っていても、姉さんの太陽のような笑みがあればいくらでも耐えられた。
 叔父さんも叔母さんも、クオードという一人の人間として見てくれた。どんなに王宮の高官達が陰口を囁こうと、実力を否定する事はできないと、時渡りの力に変わるものを模索する俺を応援してくれた。軍団長に就任した時、叔父さんは父よりも早く祝いの言葉と品を持って駆けつけた。俺が今も愛用している剣を差して立って見せると、誇らしげに目を細めて喜んでくれて心底嬉しかった。
 ディアンジとザグルフが俺に向ける尊敬の眼差しを、どれほど誇らしく思えたか。王国軍の軍人達が、俺を王族の子でなく一人の仲間として受け入れられた時、どんなに胸を焦がしたか。
 俺は父と同じく時渡りの力の弱い、王族の恥だろう。
 だが、俺はクオードとして受け入れてくれた人々が、誇れる存在でありたい。
 だからこそ、俺は俺を卑下しない!


クオードくんもトビアスくんに似た気配がするなぁ。
王道熱血主人公。ただ、彼には迷いがないというか、揺るがないんだろうなぁって思います。トビアスくんはルアム達やルビーちゃん、他の領界の竜族と関わって視野が広がって大きくなったけれど、クオード君はすでに完成されている気がします。
これから彼を描いてどう変わっていくのか、ちょっと楽しみです。

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