ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 錫杖が光の尾を引きながら愚弟を薙ぎ払うと、ほろほろと崩れ去った悪夢の向こうに、あどけなさが残る童が立っていた。その姿を見て、冷や汗が噴き出る。怒りで燃えるような熱と、悪寒によって震える程の寒さに、体が二つに割れてしまいそうだ。不意に沸いた対極の感情に、余は言いようもない不気味さを感じていた。
 神と称えるに相応しい余が、見窄らしい旅人の子供に何を感じている?
 『時見の箱』はその童を殺める、様々な未来を余に見せた。小箱が流星群となって童を貫く未来。錫杖が薄い胸を貫く未来。吹き飛ばし四肢があらぬ方向に折れて動けなくなる未来。余が手ずから細い首を手折る未来。一瞬の間に、余は童をこの世界に存在する、ありとあらゆる方法で殺害した。しかし、どの未来も訪れない。指一本動かす事はできなかった。
 静かに童が立っている。
 余をひたと見つめる夕暮れの最後の一片を宿した瞳が、余に狙いを定める鏃の光に灼かれる。弦が引き絞られる音が甲高い音の隙間を縫って、余の耳に突き刺さる。
「貴方はあんなにも多くの命を奪ったのに、自分の手を汚すのは嫌なんですね」
 童の瞳にはっきりと軽蔑の光が浮かんだ。
「僕の兄さんを動物か何かだとお思いですか?」
 や。漏れそうになった声を飲み込んだ。
 余が何を言おうとした? あり得ぬ。あり得ぬ! 余は世界の王として全ての愚民を導く使命を帯びているのだ!
 童が矢を放つ。その動きはまるで水の中を進むように緩慢で、軌道に小箱を滑り込ます事など造作もなかった。鏃にクズの一撃を完全に防いだ小箱の一片が触れる。こんな細く頼りない木の矢など、いとも簡単に弾いてくれるだろう。
 にやりと持ち上がった口角が、そのまま開く。
 鏃はまるで砂糖菓子でも貫くように、小箱を砕いた。驚愕と己の身を守ろうとする反射で、多くの小箱が矢の進軍を阻もうと隊列を組んだ。軌跡に幾重にも重なって重厚な盾となろうと、矢は悉く貫いてみせた。矢を叩き落とそうと、如何なる魔物もの打ち砕く鉄槌を落としても、そこには既に矢は存在しない。
 なぜだ! なぜ、たかが一本の矢止められぬ!
 鏃の金属面に、余の顔が映り込む。エテーネの王として肖像画に描かれし威厳ある顔ではない。恐怖に塗れ、生き延びようと醜態に歪んだ男の顔。これが余の顔だと言うのか?
  嘘だ! 拒絶が時を止めようと足掻くが、どんなに遅くなろうとも矢は止まらぬ。錫杖で振り払おうとしても、矢はまるで巌のように固くそこにある。
 移動して逃げようとしても、見えない力に縫いとめられたように体が動かなかった。
 どうしてこうなった?
 何がいけなかったのだ?
 突きつけられた現実に、やり場のない怒りが湧き上がる。そしてその怒りは、全ての元凶たるあの名前すら呼ぶのも悍ましい愚弟に向いた。
 愚弟の時渡りの力があれば、箱はとうに満ちておった。彼奴がリンジャハルの厄災に乗じて、姿を眩ましおったのが最も悪い。エテーネの王族の責務を放棄し、余が王国の滅びを回避すべく身を粉にしているのも、彼奴が協力を惜しんだからだ。
 愚弟の従者の言葉の通り生きておったなら、魂までもを箱に捧げ時渡りの力を搾り取ってやろう!
「『時見の箱』よ! 今一度、余に栄光の未来に至る道を示せ!」

もう一話いくんだ。やばいなぁ。意外に面白い感じに話が進んでるよ?

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