ハコの厚みはここ次第!
■ Calendar ■
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 14 | 15 | 16 | |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
□ search □
俺は目眩で世界が傾ぐ気分だった。
大魔王を倒したからって、世界中の様々な厄災を勇者と盟友に任すだなんて間違ってる。勇者と盟友の使命は大魔王を倒した時点で終わった。二人とも愛する人と結ばれて、純白のウエディングドレスで美しく着飾って、子供を授かって笑って生きて良いんだ。
でも、アンはそれを望まないだろう。
困っている人を自分が助けられるなら、力を惜しまない。今回の繭も、誰に頼まれるまでもなく襲撃に対応できるよう待機している。どんな恐ろしい敵と戦う事になろうと、命を失う事になろうと、皆が笑って平穏に生きれるなら構わないと言って退けるだろう。
分かっている。アンはそういう子だ。
アンの為なら、ピぺも運命を共にする事を躊躇わないに違いない。勿論、俺も二人の為に命を惜しむつもりはない。
だからって…
俺の肩に温かい手が触れた。はっと目を向けると、眩しそうに目を細めた赤と碧の瞳が俺を見上げていた。
「今代の勇者は良い仲間に恵まれたな」
俺は体を屈めてケネスの手に頭を付ける。そのまま動かない俺を見て、ケネスが一つ息を吐いて頭を撫でてくれた。えへへ。ケネスはあんまり褒めないから、嬉しいなぁ!
徐にケネスは手を引っ込め、切なそうな顔で俺を見た。
「歴代の勇者と盟友の末路は、どれも碌でもねぇもんばっかりだ。お前らだけでも『大魔王を倒した勇者様達は、末長く幸せに暮らしましたとさ』で終わってもらいたいもんだ」
ぱぁっと視界が明るくなった気がした。ケネスが俺達の幸せを願ってくれているだなんて、すっごく嬉しい! がばっと手を広げて抱きしめようとしたが、猫のようにするりと逃げられる。それでも傍から離れない師匠に、俺は向き合った。
「勇者と盟友 要らない 世界 作りたい」
そうして初めてアンとピぺが、普通の幸せを手に入れられると思った。アンとピぺが勇者と盟友に囚われないで、自分で自分の幸せを選べるようにしてあげたい。
「ケネス。どうしたら いい?」
目元を煙管を持っていない手が覆って、ケネスが大きく息を吐いた。大きく肩を落として項垂れる。どうしたんだろう? 注意深く見守っていると、うっすらと開いた口から声が漏れた。
「そんな創造神もできない事、俺の天使様以外にも言う奴がいんのかよ…」
手を外して虚空へ投げられた視線が、ゆっくりと俺に向けられた。一つ息を吐いて『先ずは、真上の繭をなんとかしてからだ』と呟いて、ケネスは俺に言った。
「やれるだけ、やってみるか」
ケネスが協力してくれるなら、できない事なんてない!
うん! 反射的に抱きついて、ぐえっ声が漏れたけど気にしない。人肌の体温が心臓の鼓動と共に染み入ってくる。ケネスが諦めると、分厚い壁と空間を抜けて強くなる雨脚が静寂を脅かしてくる。頭上の繭の圧が確かに体に伸し掛かっていた。
戦うしかない。戦って、戦って
二人の幸せを、世界から勝ち取ってみせる。
ラチックはマジで、ピぺとアンルシアを娘みたいに思ってる。ブラックチャックの長老歴も長かったので、結婚して子孫と平穏に暮らすってのが幸せっていう古い考えがどうしてもあるんですが、それを差し引いても大魔王を倒した後も戦いに引き摺り出される娘達を心底不憫に思ってる。
勇者の力が効かない強敵の存在があると知って、なおさらどうかと思ってる。
創造神もできない事をやるって言ってやった実績があるので、天使様のお言葉は重い。それでも天使様は大丈夫脳筋な子なので、ケネスが考えなくちゃなりません。大変です。
Comment