ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 勇者と呼ぶには華奢で、乙女と呼ぶには凛々しい娘は表情を強ばらせた。賢者が滅亡を予言するのは、ただの世迷言とは一線を画す。たった一匹。しかしその一匹を止められないのなら、この世界の全ての生命を脅かす脅威となりうるだろう。
「我ら叡智の冠は四重の封空で奴を封印する」
 背後でラチックと精鋭の兵士達が戦闘を始めたのだろう。大楯が鋭い爪と打ち重なる金属音が、雷鳴もかくやと響き渡る。豪雨の最中では火炎の威力は上がらず派手さは無いが、ドルマ系の闇が爆ぜてなお暗い闇が光を押し退ける。
 繭の光を浴びたアンルシアが、並び立つ叡智の冠を目を細めて見ていた。
「封空の内部から幾重にも重ねる事で、可能な限り時間を稼ぐ。その間に不死の力を持つ、あの魔獣を倒す方法を見つけるのだ」
 共に冠を戴く者達を見回せば、心得顔で頷いた。それぞれが杖を掲げれば、封空の魔法陣が錬成され攻防の音が止む。暴風雨の音を押し退けて、兵士達の歓声が上がった。
 それでも喜んでいられる状況では無い。
 魔獣が封空を破ろうとしているのか、衝撃にブロッゲンが目覚めた。外から封空を維持できると自惚れるつもりはなかったが、想像以上に余裕はないかもしれぬな。
 待ってください! 勇者の縋る声が頬を叩く雨水と混ざる。
「ルシェンダ様も、賢者様方も皆が居なくなってしまったら、不死の魔獣を倒す方法なんてどうやって探せば…」
 確かに、我々叡智の冠はこの世界最高の識者と認識されている。我々が預かり知らぬ事は、世界の誰に聞いても知らぬと言える逸材達だ。だが不死の魔王と先代の勇者については、私達よりも詳しい存在が勇者の傍にいる。
 盟友ピぺ。
 彼女の故郷が残した千年前の事実は、グランゼドーラが闇に葬った内容を含んでいた。これに世界宿屋協会の諜報力が加わって分からぬなら、もう打つ手は無いと言って良い。
 それに…。私は手の中に転がり込んだ、切り札を思う。
「アンルシアちゃん。お主にはベストでパーフェクトな仲間と縁がある。アストルティアの力を束ね、この世界の線路を未来に繋げる役目もまた、勇者がなすべき事じゃ」
 茶目っ気たっぷりにウインクを一つして、お先にとホーローが封空の内部に入り込む。まるでシャボン玉のような円形に歪んだ空間の中にするりと入り込むと、魔法陣が描かれて魔獣共々内部が見えなくなる。
「安心するがいい。そう数日で突破される、柔な結界は作らぬでな」
 聞く者を安堵させるような低い声で断言すると、エイドスは『ホーローの術は大まかで早いが雑じゃな』と辛辣な呟きをする。魔法陣が鮮明になり輝きを増すと、エイドスも封印された空間に入っていった。
 それを見守っていたブロッゲンの杖が、アンルシアを励ますように言う。
『ブロッゲン様なら、寝ながらでも維持できるのでアール!』
 うむ。ブロッゲンが頷いているのか船を漕いでいるのか判別できない首の動きをして、コツコツと杖を突きながら封空の中に消えていく。
 アンルシア。雨に濡れて不安な表情の頬に張り付いた金髪を、耳にかけてやる。
「仲間と共に世界を救えると信じている」
 私は勇者に微笑むと、踵を返した。私の名を呼ぶ声を振り払い、雨は届かず、風は吹かず、寒くも暑くもない空間に入り込む。乳白色の空間の中で魔獣を取り囲み、既に賢者達が己の居場所を定めていた。エイドスが煙管を片手に美味そうに煙を噴かしている。
 私は杖を掲げ封空の魔法陣を構築し、高々と宣言した。
「アストルティアに未来を…!」
 未来を! 賢者達が復唱し、私達だけの戦いが静かに始まった。


はぁーい! 異形獣襲来!というわけで、中編が終了です。

拍手に感謝!更新御礼見ていただき嬉しいです!ぱちぱちっとありがとうございます!

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