ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 お
「おみこし わっしょい?」
 目をまんまるくして凍りつく僕の袖を引いたのは、兄さんだった。生クリームをぺたぺたつけた頬をぺろりと舐めて、楽しげに笑う。
「エルトナのお祭りだよ。神様が地上に降りて過ごすちっちゃいお屋敷を、エルフ達が力を合わせて担いで練り歩いたの見ただろー? カミハルムイなんて物見櫓みたいな、でっかい神輿を引き回して迫力満点だぜ!」
 そういえば、見た。
 エンジュさんのお誘いで、皆でツスクルのお祭りに行ったんだよな。深い森の闇の中に、竹で組んで紙を張った筒状の物の中に蝋燭を入れて灯す提灯ってものが、たくさん吊り下げられて幻想的な空間。生まれたばかりの世界樹の精霊と、村で選ばれた幼子がヒメア様が祝福した世界樹の若木を持って座る。その空間は納屋くらいありそうな立派な社だ。柱も梁も瓦屋根まで、美しい木目で選ばれた一級品。職人が施した世界樹の枝葉を再現した細工は本物のようで、様々な花や果物で飾り立てられていた。大勢で声を合わせ汗を迸らせ、時々、沿道のご隠居に水をぶっかけられながらツスクルの村を練り歩いていたっけ。
 一人では不可能な事も、皆で力を合わせれば可能になる。だからお神輿なのか。
 …やっぱりロトさんの例え、難しくない?
「カンダタが集めてきた話だと、禁術を使った勇者様って即死しなかったんだよね。つまり魂を消費して禁術を発動させたんじゃなくて、魂を媒介に禁術の力を行使したんじゃないかなって思うの。最終的に禁術を媒介して、魂が修復不能なほど傷ついちゃうから『魂が対価になる』って話になってるんだと思う」
 言われてみればピぺちゃんが伝え継いだ内容では、勇者アルヴァンは当時聖域とされた王家の墓に自身を封印する余裕があった。死ぬタイミング一つでそこまでわかってしまうだなんて、詳しい人は目の付け所が違うんだな。
「みんなでわっしょいしたら、みんな痛くなっちゃうんじゃねーの?」
 兄さんが首を傾げると、ロトさんも一緒に首を傾げる。
「媒介する魂の数を増やして負担を分散させれば、それぞれの魂の自己回復力の範囲内で収められると思う。そうなれば、誰も死なずに済むと思うんだよねー」
 これはたった今、ロトさんが考えた確証のない想像なのはわかっていた。実際にその方法で不死の異形獣を倒せるかなんて分からないし、誰も死なないなんて断言できない。
 それでも、誰も死なない方法を考えているのは彼女だけだ。
 アンルシア姫も、ピぺちゃんも、ラチックさんも、王様や王妃様、兵士の皆も、僕達でさえ、誰かが死ななければ倒せないと思っている。その誰かに自分がなろうと思っても、心の恐怖で言葉にならず手も挙がらない。己の臆病に憤り、誰かが名乗り出ないかと周囲を伺う空気。誰かが名乗り上げたら感謝をしながらも、殺してしまったような罪悪感を抱いて生きていかなければならない。
 この光に手を伸ばさなければならないと、僕はロトさんの名前を呼んだ。
「アンルシア姫に会っていただけませんか?」
 青い目が何回かぱちぱちと瞬いた後、ぱぁっと顔が輝いた。憧れの勇者様一行にお会いできるって、感激しているんだな。今話した打開策を提案したら、世界の命運を背負わされるって言うのに、遊びに行くようにしか見えない。
「アストルティアの勇者様に? すごーい! うれしーい!」
 いやー。分かってるのかなぁー。
 カンダタさんに目配せすると、苦笑いを浮かべながら首を小さく竦めてみせた。
「じゃあ、ルアムくん!」
 満面の笑みを見ていると、この困難を乗り越えられると思えてくる。冷え切った僕の手を掴んだ手は、柔らかくて温かくて力強い。相棒。顔赤いぞって、兄さん余計なことは言わないでほしい。
「お神輿、ちゃんと用意してきてね!」
 僕と兄さんは顔を見合わせて、一つ噴き出したら笑うのが止まらない。
 禁術をお神輿なんて言う人は、世界広しといえど貴女くらいだと思いますよ。

固まりました対応策!
現代のグランゼドーラは、とりあえず一区切りです!

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