ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 グランゼドーラ王国の南東の海上に出現した魔王城に魔物達が集結し、総攻撃の準備をしている事を魔軍十二将は隠しもしない。勇者アルヴァン様と盟友カミルは、それぞれペガサスと飛竜に跨り偵察を重ねていました。先日、魔物に気取られ戦闘となり魔王城に踏み込み、魔軍十二将を蹴散らし不死の魔王に深手まで追わせたものの致命傷は瞬く間に完治し撤退に至ったのです。
 たった二人で魔王に挑む。
 エメリヤ妃が顔を真っ青にして叱責した程の、無謀な行動でしょう。王の三歩後ろに控える淑やかな王妃が声を荒げたのも、アルヴァン様が怪我を負って帰還したからです。さらにその傷の原因が不死の魔王から盟友カミルを庇った為と聞けば、怒りのあまりに昏倒してしまわれましたわ。
 致命傷ではないにしろ、決して軽傷と軽んじられない傷。
 アルヴァン様は『魔王城を掻き回したので暫くは総攻撃はないでしょう』と、朗らかな声で休息を取ると宣言したのです。勇者にも休息が必要であると常々考えておられたジュテ王も、カミルへの叱責の言葉を飲み込み下がらせました。
「勇者に迷惑を掛けぬよう、より一層己を律すると誓います」
 慇懃に紡がれた言葉に込み上げた苛立ちを、どうにか飲み下す。腹に力を込め背筋を伸ばし、頭を垂れるカミルを見下ろしました。
「アルヴァン様を見捨て、ヤスラムと逃げようとしたのではと疑惑を抱きました。しかし、こうして護堂に足を踏み込んだ貴女が、勇者の為に行動している事は信じましょう」
 ちらりと背後に控える従者を睨みつければ、優男の顔が狼狽でみっともなく崩れました。
 グランゼドーラの南の玄関口である三門の砦を西に抜けた海岸には、他種族が暮らす五大陸とを往復する船が満月の夜にやってきます。ヤスラムがカミルに愛の告白をしたことは、すでに城下町で噂となっていました。満月が近づく頃に城を離れれば、駆け落ちの疑いも増す事でしょう。
 わたくしの従者と盟友が不死の魔王を目の前に駆け落ちなど、主人である わたくしこそが許してはならないのです。グランゼドーラとファルエンデの不和によって戦線が崩壊し、不死の魔王の軍勢が雪崩混んでくるなどあってはならない。
「しかし、わたくしはヤスラムの主人として、勇者アルヴァンの婚約者として、貴女が秘術を見つけたという朗報をもたらすまで見届ける義務があります」
 不死の魔王を討伐できなければ、この世界は滅びてしまうのです。不死の力を封じる秘術を手にする事は、勇者を筆頭に全ての人々の悲願でもあります。
 わたくしは膝を折るカミルの脇を通り抜けて、先に進む。
「時間が惜しいですわ。先へ参りましょう」

まぁ、使用人の不手際は主人の不手際なので、カミルの根回しあってもヴィスタリアちゃん良く攻撃されなかったなって思ってます。それだけ、カミルに信仰めいた期待というか身の清さを望んでいたのかもしれないなぁと思ったりなんたり。

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