ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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再び要の石を有るべき場所に嵌め込めば、秘術の宝玉が護堂の床の上に転がっていました。宝玉を拾い上げたわたくしは、膝を折り額付く盟友を見下ろしていました。
「ヴィスタリア様。私めを殺すのを、待ってはいただけないでしょうか?」
「やはり、秘術を使って死ぬつもりなのですね?」
邪魂の鎖は術者の魂から生成されると、秘術の守護者は言った。
魔法使いが強力な呪文を唱えれば相応に多くの魔力が必要であるように、同じ魔法陣でも大きければ大きいほど効果が強いように、巨大な力であればある程に対価は大きくなる。現在は禁術に指定されているけれど、使い手の命や魂を対価に求める魔法も存在しているのです。
この世界のありとあらゆる力。魔王が持つ不死の力をも含めて封じる事ができる秘術が、使い手の魂を奪う禁術であっても不思議ではありません。
顔を上げたカミルは静かに肯定しました。
「不死の力さえ封じる事ができれば、絶対にアルヴァンは魔王に勝てるのです! 姫が望むならこの腕の一本や二本、目玉であろうと捧げましょう。どうか、命だけは…!」
ぱんっ! 景気の良い音を立てて、わたくしの平手がカミルの頬を打った。
はっと息が抜けるような声を漏らし、張られた頬に手を当てたカミルが わたくしを見上げています。わたくしはじんじんと痛む手のひらで秘術の宝玉を握りしめて、呆然と見上げる顔を睨め付ける。
「カミル。わたくしは謝らないわ」
わたくしは何も悪くない。この腑が煮え繰り返るような怒りも、グランゼドーラで道化を演じるような屈辱も、婚約者の妹が向けてくる明らかな敵意も、全て目の前の女が悪いせいなのだ。
この女が兄を殺さなければ、わたくしは兄様を失う事はなかっただろう。乱暴なところもあったけれど、わたくしにはとても優しい兄様だった。二人きりの兄妹で、死んだ事はとても悲しかった。この女がアルヴァン様に取り立てられなければ命を助ける代わりに、わたくしをアルヴァン様の婚約者にするという交渉は通らなかったろう。わたくしには好きな子がいたと言うのに、突然勇者と婚約するだなんて悲しい気持ちにさせられたわ。
この女がもっと嫌な女なら、素直に憎めただろう。
完璧な盟友たらんと修練に打ち込む姿を、深夜遅くまで刺繍をしていた わたくしが知らないわけがない。口さがない異邦人への悪態を聞き流す切なさを、わたくしだって痛いくらいに理解している。
「貴方の事が大嫌いよ。わたくしに命乞いをする理由が国でも世界でもなく、アルヴァン様だと口走るくらい分かっているくせに…」
ぽっかりと開いた口が、すっと息を吸った瞬間をわたくしは見逃さなかった。
「口を閉ざしなさい! 盟友としての悲願とか、勇者と共に不死の魔王を倒す使命とか、私情なんか一切ありませんなんて御託はね、うんざりするほど聞いてるのよっ!」
何が勇者と盟友よ! 貴女がアルヴァン様に寄せる感情なんか、誰が見たって恋慕でしかないわ! 好きな男の為に死んだ目に生気が灯るのは美しいけれど、それを平和の為だ魔王討伐だと言い訳されて面白くないに決まってるでしょう!
極め付けが、アルヴァン様の隣に立つ人物に、わたくしが相応しいと心の底から思っている事よ! 結婚しても心の底から喜んで仕える姿がありありと目に浮かんで、怒りが湧いて湧いて止まるところがないわ!
「本当に腹立たしいわ! いい加減、アルヴァン様を愛してるって自覚なさい!」
わたくしが言葉を突きつけるも、驚きに凍りついた碧が見開かれたままだ。
ふ。一つ息を吐いた次の瞬間、肩を震わせカミルが笑い出す。笑う。アルヴァン様やフェリナ様相手に微笑む顔は何度も見かけた事はあるけれど、笑い声を聞いた事は一度もない。口元に当てた手からはみ出る笑みの形に開いた口と、溢れる華やかな弾む声。細められた瞳に赤み注す頬は、わたくしが知る中で一番生き生きとした可愛らしい盟友の顔でした。
「…ヴィスタリア様もご冗談を言うのですね」
かっと感情が迫り上がった瞬間には、淑女ならぬ声が迸る。
「冗談じゃないわ! 貴女はアルヴァン様を男としてお慕いしているのでしょう?」「勿論、アルヴァンは勇者として以上に男性として大変魅力的です」「勇者と盟友の関係に身分も何もないでしょう! 『汝、告るが良い』と女神ルティアナ様も申しているでしょうよ!」「アルヴァンは身分も性別も関係なく、私を盟友だと頼りにしてくれる以上の回答がありましょうか?」
永遠と続く押し問答。わたくし達を探しに来てくれたアルヴァン様は、拍子抜けした顔で言うのです。僕の盟友と許嫁殿は、いつのまにこんなに仲良くなってしまったんだい?ってね。
二人揃って鈍感では、先が思いやられますわ!
最後は猫がとれちゃった!
前編終了でっす!
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