ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 好きか、嫌いか。二択で問うならば、嫌いと即答するだろう。
 ギルガランがいなければ。そう思った回数など星の数に匹敵するに違いない。父ゾルトグリンから受け継いだオーガでも類稀な肉体は、巨大な魔物に引けを取らぬ剛力と、風をも追い抜く俊足を持ち、全てを引き離す持久力を持っている。戦う才能はオルセコ最強であった父でさえ舌を巻き、幼くしてオルセコの未来は明るいと讃えられた。整った目鼻立ちは女性の美的感覚的に物足りなくはあったが、母譲りの顔立ちを父は愛していた。現代のオーガが求める全てを手に入れた、種族神に最も近い男だったろう。
 同じ両親から生まれれば、比べられない訳がない。
 血縁者でもない赤の他人が比べるなら、まだ我慢できただろう。だが、僕とギルガランを比べたのは他でもない父だった。幼くとも頑強で健康なギルガランが王に相応しいとは思っていたが、僕が遠い親戚に預けられると決まれば理解せざる得ない。母は僕と共にオルセコを離れると父に直訴したそうだが、母を溺愛する父はそれを許さなかった。
 母とギルガランは必要で、僕は要らない子供。
 父にそう突きつけられた時、僕の心にべったりと絶望と憎悪が塗りたくられた。
 母が死に、僕の知識と聡明さに利用価値を見出した父の都合でオルセコに戻った時、どれだけ腑が煮え繰り返った事だろう。ギルガランの弟は病弱でオーガの出来損ないと、オルセコの国民から揶揄われる日々。父は価値がなければ再び捨てるだけだろうと思えば、僕は石に齧り付いてでも耐え忍び価値を示さなくてはならなかった。
 我儘で自由なギルガランが、羨ましくてたまらなかった。
 健康で強いギルガランが、憎くてたまらなかった。
 同じ父、同じ母の元に産まれておきながら、この差は一体なんなんだろう? こんな惨めな想いをするのなら、産まれて間も無く死ねればよかったのにとガズバラン様を恨みもした。
 戦士達に囲まれ、己の弱さを突きつけられる日々。僕を見下ろし、嘲笑を浴びせる者達。全てを知っても表沙汰に出来ず、悔しげに目を伏せ顔を背ける者。価値しか求めぬ王。全てが恵まれ順風満帆な兄弟。
 憎かった。
 何も出来ない僕も含めて、全てが。
 そんな真っ暗な日々をギルガランが蹴散らした。
 僕を弱いと揶揄う戦士達を降参するまで殴り倒し、僕を笑う者を睨んで黙らせる。僕と相手の間に立ちはだかる、オルセコの紋章を縫い付けた真紅の外套から浮かび上がる肩甲骨の大きなこと!
「誰かを守る事を躊躇わぬギルガランに、僕は王の器を見ました」
 僕はオーガ族にとって必要のない者のはずだった。そんな僕に、ギルガランは言ったんだ。
『お前の思慮深さは俺にはないものだ』
 座り込んだ僕に差し出された手は、初めて出会った時とは比べようもなく大きくなっていた。
『俺にしか出来ない事があるように、お前にしか出来ないことがある』
 なんて、眩い言葉なんだろう。
 真っ黒い感情に、火を投げ込まれたようだった。
「僕はギルガランを、立派な王に育てると決めたのです」
 ふふっ。セーニャさんの笑い声が小さく漏れた。休憩が終わるのか立ち上がると、人間族のほっそりとした白い手が差し出された。
「そんな大変な事、好きじゃなきゃ出来ないですよ」
 手をとって立ち上がったとほぼ同時に、戦いが始まったとわかる衝撃が氷穴を揺らした。休憩を挟んだお陰で復活した足取りだったけれど、激しさを増す戦いの気配は、一秒が一年に感じるもどかしさを生んだ。
 あまりにも長い道。あまりにも遠いギルガランの背。
 僕は胸元に仕舞ったギルガランの手紙が、くしゃりと音を立てたのを感じていた。俺は王の器ではなかったなどと、殊勝な事を書いた手紙。あの粗暴さとは裏腹に美しい文字で、僕ならどれほど良い国が作れただろうとか書いてあるんだ。オルセコを任すだなんて、自信しか口から出ないからって手紙で書くなんて明日はもこもこ獣の猛吹雪だ。
 ギルガランの大馬鹿野郎! 僕は胸を掴んで手紙をぐしゃぐしゃにした。
 僕は、君を絶対に死なせたりしない!

なんなんだろう。滅茶苦茶濃密で滅茶苦茶足早なんだけど、大丈夫?
スピード違反で逮捕されねぇ?????

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