ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 叫んだのは若い旅人の女性だ。皮を鞣した丈の長いシャツの上からベルトを締め、防寒を兼ねた黄色いマフラーと、動きやすい黒いズボンとブーツという冒険者の定番の装い。皮の素材そのままの色味の服と、赤いリボンで結い上げた艶やかな淡い紫の髪という対比が見る者を振り返らせる強い印象を生み出す。
 誰だ。そう思えるという事は、剣は振り下ろされていない。
 自分は少年を片手に庇いながら、上半身を捻る。グレン上空にある発光する繭を背後に、脂汗を浮かべて震える男が立っている。剣を持っている手は切っ先をブレさせながら自分の頭上で静止し、もう片手は歪んだ顔を覆っている。
 好機! 自分は剣の握りを変え、隙だらけの男の鳩尾に柄を叩き込もうと突き出した。
 腕を伸ばしきっても、筋肉に柄が衝突する感触がやってこない。訝しむ間も無く、ぱっと視界が明るくなった。
 目の前にそそり立っていた黒い影も、頭上の繭も、どんな手品でも使ったのか元々存在しなかったように綺麗さっぱり消えている。ぽっかりと空いた青空を縁取る黒い雲から、雪が溶けて霧雨が降り注ぎ虹を描いた。
「メレアーデ様…?」
 彼女は少年ににっこりと笑顔を返し、すっと背筋をのばした。
 すっと自然に手が広がり、指先が何もない空間をそっと摘む。片足が曲がり自然ともう片足が後ろに下がる姿は、まるで舞踊の動作のように滑らかだった。霧雨が生み出す虹のドレスの裾を摘み、空間が高貴な空気に飲み込まれていく。紫のまつ毛に縁取られた碧の光が、猫のように瞬いた。
「皆様ごきげんよう。私はエテーネ王国国王ドミネウスの娘、メレアーデと申します」
 は、は。怪しい威厳に溢れた顔が、大きく息を吸って歪む。
 はっくしゅん!
 眩い光がひとつ煌めいたと思ったその後、メレアーデ嬢が居なくなっている。誰もが消えた貴婦人を探して視線を泳がせ、先ほどいた場所で驚いた表情になって目を留める。
 一匹の黒猫が、前足を揃えて座っている。少年のブーツに前足を揃えて乗せて、あざとい角度で伸び上がる濡羽色。大きな瞳は炎の光を吸って赤く色づき、毛艶の良さや首輪に付けられた星の飾りが飼い猫だとわかる。
「チャコル?」
 にゃーお。
 白い口周りが動いて、少年と猫の鼻先が触れ合った。

我らの女王様の帰還ぞえー!!!!
ファラスさんは記憶喪失中なので様付けはしないかなぁってことで、嬢付けです。

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