ハコの厚みはここ次第!
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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炎が燃えている。この脆弱な体を燃やして、腕が、足が、体が軽くなるのが分かる。
僕は燃える手で胸を貫いたゾンガロンの腕を握ると、細い指が分厚い筋肉の束にめり込んだ。力を込めれば腕は胸からずるりと擦れる感覚を残しながら、悪鬼の腕が抜けた。
体の奥から血生臭い液体が込み上げたが、軽く咳き込むと赤い粉が出ただけだった。
「悪鬼が唆す前から、僕らは同族同士で殺し合っていた」
戦い、殺し合い、奪い合う。
オーガ族にとって相手となる国を滅ぼし、大きくなる国は最強の象徴だった。強者の言葉は絶対で、父はまさにオーグリードに君臨する王だったろう。
しかし、最強の王と自惚れても、食卓に乗る豪勢な食事は王が作った者ではない。王よりも弱いオーガ族が丹精込めて育てた野菜や、一流の狩人が仕留めた肉が献上され、料理の腕の良い者が多彩な調味料や絶妙な火加減で料理を作り上げる。僕らが雨風を凌ぐこの建物は、遥か過去に大勢の弱者によって作られ、今も修繕を欠かせば快適な生活など簡単に瓦解する。
多くの弱者に支えられ、強者と胸を張る父。
その存在を否定することはしない。幼い僕にもドランドと対立して敗北すれば、オルセコの民が皆殺しになる事は十分に承知していた。父はいざという時、オルセコを背負い民を守る責務がある。
それでも、ずっと考えていた。
どうして、オーガ族は殺し合い続けているのか?
ギルガラン。僕はその問いを、背後に立っているだろう兄弟へ投げかける。
「この共闘は、悪鬼という共通の敵が存在するから出来るんだ。ゾンガロンが討たれれば、再びオーガ族同士の戦いが始まる」
ゾンガロンを討つ為に集まった、有志達による討伐隊。
宿敵として互いに睨み合っていた国、滅ぼした国と滅ぼされた国、滅ぼそうと画策していた国と返り討ちにしてやろうと身構えていた国、互いに殺し合っていた国々の垣根を超え一つになったオーガ達。それは、いままでの歴史を思えば奇跡だった。
しかし、その理由はただ一つ。
脅威ゾンガロンへの復讐。
彼らは今まで同族へ向けていた殺意を、ただゾンガロンへ向けているだけなのだ。
ゾンガロンが討たれれば、復興の合間は短い平和がオーグリードに齎されるだろう。ここに集った戦士達はそれぞれに故郷へ帰り、生き残った者達で寄り添い、小さな集落から始まって、子供が産まれて規模が大きくなっていく。復興し軌道に乗るまでの間は、ただ生きていく事で全てが忙殺されていくに違いない。
近隣の集落同士で小さな諍いが起こるだろう。その時、彼らは話し合いで落とし所を見つけ、諍いを鎮める事が出来るのか?
否。僕はそこまで楽観的に未来を信じられない。
戦って勝った者が正しいという今までのオーガ族のやり方が、調和の芽を飲み込んでいく。殺されぬ為に、守る為に、互いに武器を取り殺し合うだろう。
轟々と音が溢れて止まらない。僕の言葉はギルガランにちゃんと届いているだろうか?
「僕達オーガ族が互いに手を取り合い、共に歩いていく為には、長い、気の遠くなる年月が必要なんだ」
僕は拳を振り上げ、ゾンガロンの顔へ打ち下ろした。
炎の拳はゾンガロンの顔にめり込み、数多のオーガを殺害した悪鬼が呆気なく大地に打ち付けられる。目玉が飛び出しそうなほどに見開いた悪鬼の驚きの顔を、僕は静かに見下ろした。
「我が父ゾルトグリン。数多の命を屠った罪を感じるならば、オーガ族の脅威として君臨し続けるんだ。貴方は誰からも尊敬されず、誰からも愛されない。恐ろしい化け物であり続け、オーガの憎悪を一身に引き受け続ける事が貴方の贖罪となる!」
ひゅーーーー!!!!
ある意味、炎の民オーガの最終形態というか、メガンテの自己強化版かってくらいの説得力がある。最終的に種族ごとに必殺技とかくるのかなー? 来て良いと思うなー。
