ハコの厚みはここ次第!
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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ざあざあと降り注ぐ豪雨の音が響く薄暗い城内を、燭台や松明の灯りが照らしている。
特に勇者アルヴァンと盟友カミルの像が建つ場所は天井が高い為に光が届かず、不死の魔王と戦った英雄達の顔は闇に溶け込んでいた。そんな二人の尊顔が見える場所に膝をつき、娘は一人祈りを捧げていた。
「先代勇者アルヴァン様。どうか私の大切な友人達を、お守り下さい…」
娘の切なる願いが叶うよう、わしも先代勇者様であり、ご先祖様であるフェリナ様の兄上に祈る。そして、先代の勇者様の悲痛な想いを噛み締めていた。
高貴なる御方と呼ばれし勇者アルヴァンの妻ヴィスタリア様が伝えた伝承と、王家の迷宮を踏破した娘達の言葉から闇に葬られた千年前の状況が明らかになった。その上で、わしは勇者アルヴァン様は己の死後を予想できていたのかもしれないと思ったのだ。
娘のアンルシアと同じく勇者として大魔王を討伐した後は、グランゼドーラの王となり為政者となる道があった先代。そんなアルヴァン様ならば、為政者としての判断に理解があったはずだ。
秘術を使い化け物と成り果てた勇者の死は、不死の魔王との名誉ある相打ちと書き換えられる。盟友カミルは勇者の死の責任を負わされて、よければ追放、最悪処刑の未来。当時のグランゼドーラ王であるジュテ王の完璧な勇者の国でありたい願望は、わしの中にも存在する。
そんな最悪の死後の世界に盟友を置き去りにする事が、どんなに残酷なことか、アルヴァン様は理解していただろう。互いの想いが通じ合っていれば、共に死ぬ事が最も幸せな道だと察していたかもしれない。
それでも盟友を死なすなんて、できなかったのだろう。
娘が盟友の死を拒んだ時の悲痛な声は、まるで生きながらに身を引き裂かれるような悲鳴だった。トーマの死に勝るだろう声が、娘と盟友の魂が結びつく程の絆を示している。盟友とは勇者にとって己の半身であり、命よりも大切なものであり、必要不可欠で、決して失いたくない存在なのだ。
娘が過去から持ち帰った秘術を使い、化け物になってでも不死の魔物を討ち、穢れた魂を王家の迷宮に封印する。勇者の使命を果たし盟友を生かしたアルヴァン様の選択を、娘がなぞる覚悟を決めていたのを知っている。
目の前で跪く娘の細い背中を見下ろす。
大魔王を倒し平和になった世界で、娘は幸せに生きていくはずだった。良き婿を迎え、わしが整えたグランゼドーラ王国を治世で穏やかな日々を過ごし、子や孫に看取られて寿命を迎える。ナドラガンドから救出されて、ようやく幸せな未来が娘に与えられるはずだった。
なぜ、神はこんな過酷な運命を我が娘に課すのか?
ぐっと拳を握っていると、人々の足音が城中から集まり闇をくすぐる。手を解いて振り返れば、娘が信頼する仲間達が準備万端で立っていた。盟友は防水のフード付き外套を羽織って、たくさんポケットがついた道具鞄を抱えるように装備しているし、そんな盟友をフードに収め要塞みたいな大盾と重厚な鎧を纏う保護者が立っている。宿屋協会の警備部長と、過去に旅立って見事禁術を入手してきた若者達も並んだ。彼らの背後にはノガート兵士長と大臣のコルシュが控えている。
そんな錚々たる面々から一歩踏み出したのは、アンルシアと変わらぬ歳に見える娘だ。光すら吸い込むような黒曜石のような剛毛は自由奔放に跳ね回り、福与かな体格が旅人が好む厚手で頑丈な服を着ていても冒険者に結びつかない。にこにこ無邪気で、どこぞの村の出身と言われたら信じてしまう素朴な娘。
そんな娘が禁術の宝玉を乗せた布を大事に捧げ持ち、頬にくっきりと笑窪を刻んで言った。
「アリオス王様とアンルシア姫様に、ご報告します!」
アリオス王視点です! いやさぁ、色々娘の幸せに関して葛藤してほしいと思ってる。
というか、公式状況的にゲームの主人公のポジションの子が男性だった場合は結ばれそうなアンルシアちゃんな訳で、婿である男性の経歴がアレすぎて思わないわけがない。色々葛藤してほしい。
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
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