ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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嵐によって巻き上げられた潮と大粒の雨が混ざり合い、繭が仄かに振りまく灯りによって、勇者の橋は嵐の只中で烟っていた。濡羽色の石畳は強風に叩きつけられた雨粒が白い線を描いて駆け抜け、強風が表面を撫でて水を彼方へ押し流す。賢者様達が生み出した四重の空封の残滓が、あっという間に風に攫われていく。
不死の魔獣は四重の空封に封印された状態より、ひと回り巨大になっていた。
体を覆う硬い表皮は濃い紫色になって金属めいた光沢を帯び、角のような突起がより鎧の意味合いを高めていく。筋肉が脈打つ肌は晴天の下に広が海の色だったが、雨粒が触れると音を立てて蒸発し白い蒸気を纏わりつかせていた。最も顕著なのは尾で、赤い飾りのついた斧のような刃が付いている。手足についた爪は一回りも巨大になり鋭さを増し、逆に口元の牙は小さくなっている。
小さく開いた顎に赤い稲妻の亀裂が走る。
「弱き者共。滅びろ」
まるで金属を剣先で引っ掻いたような耳障りな声には、私達人間を滅ぼすという明確な意志が感じられた。そして、確実にそうできるという自信が、辿々しい口調だから際立つ。
「喋るだと? 進化しているとでもいうのか?」
おそらく、加勢の余力を残した上での封印解除であっただろうが、賢者様達は強い疲労を滲ませて不死の魔獣を取り囲んでいた。ルシェンダ様が驚きに腰を浮かす横で、エイドス様の帽子のツバから滝のように雨水が流れ落ちる。
「我々の世間話を何日も聞かされているとはいえ、なかなかの賢さを備えているようだな」
私は背負ったピぺの体温を感じながら、緩く首を振った。ポニーテールに結った髪が水を吸って重く揺れ、ピぺに張り付いた。唸ったピペは瞬く間に私の髪をお団子にしてしまったわ。
「いいえ。滅びるのは不死の魔獣、お前よ」
レイピアを突きつけた私に、魔獣の宝石を嵌めたような無機質な目が向けられる。
魔王マデサゴーラに匹敵する脅威を目の当たりにして、勇者の力が燃えるように私の中を駆け巡っていた。アストルティアを守るため。私の大切な人を守るため。今、ここで戦い、目の前の脅威を倒せと、私の細胞の一つ一つが、魂が、叫んでいる。
「我は不死。無限、蘇る」
何故なのだろう? 言い様もない不気味さが、怒りの中に困惑を混ぜ込む。その生き物には機械系や物質系の魔物に似た見た目も相まって、マデサゴーラに感じた生の厚みを感じなかった。
マデサゴーラは芸術家としてアストルティアを評価していたが、大魔王として滅ぼすことも厭わなかった。そう選択した魔族としての生き様が、大魔王の覇気として感じられたものだ。
不死の魔獣は何が原因で、アストルティアへの敵意を抱いているのだろう?
もしも、見た目の通り誰かに生み出された存在だとしたら、その敵意は刷り込まれたものである可能性が高い。目の前の不死の魔獣を討伐したとて、第二第三の魔獣が私達を襲うだろう。私達は目の前の魔獣の討伐で安堵してはならない。その背後にいる敵を、見定めなくてはならない。
油断なく眇めた視線の先で、緩く開いた魔獣の爪が雷光を鋭く反射した。
「そして、強くなる」
しかし、先ずは、目の前の不死の魔獣を討たねばならない…!
不死の魔獣はもっと拙い口調になってもらいました。
一人称が『我』なの、ネロドスさん成分の影響だろうけれど、オメーには似合わねぇよって稲野はキレております。
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
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