ハコの厚みはここ次第!
■ Calendar ■
04 2024/05 06
S M T W T F S
18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
□ search □

 短い時間だったけれど、人生観が変わった気がした。
 馬から降ろされると、砕けた腰が白い砂浜にべたりと落ちる。毛皮の縁取りに砂が入り込んで洗うのが大変だけど、構ってなんかいられない。ざざん、ざざんと打ち寄せる波の音と、海鳥の呑気な声が、がなりたてる心臓を宥めてくれた。青い海の向こうには、大災害で滅んだリンジャハルの影が浮かんでいる。強い日差しに温められると、恐怖に竦んだ体が解れて余裕が出てきた。
 レナートは少し離れた所で、膝を付き砂浜を見つめていた。あたしの視線に気がついて顔を上げると、砂浜に深く刻まれた轍を示す。そして、獣とは思えない不思議な形の足跡もくっきりと残っていた。
「指針監督官達が、魔法生物を閉じ込めた柵は鋼鉄製の頑丈な物でした。あの大きさと重量では、運び込める範囲は随分と絞られますからね」
 ゼフが店を開けて直ぐの事だった。店に指針監督官達が押し入り、強制執行と称してチュラリスとコポとジョニールを連れ去ったのだ。シャンテの部屋に踏み入り、隠れていたコポまで引き摺り出しやがった。指針監督官が魔法生物登録記録を参照して、この店の魔法生物を全て把握した上で踏み込んできやがったんだ。
 錬金術師に闘う力はない。阻止しようと立ちはだかった あたしは、突き飛ばされてカウンターに体を打ちつける。『打ち所が悪ければ死んでいましたよ』と、嗜めるゼフ達は成す術なく家族を奪われてしまったのだ。
 リンカさん。顔を上げたあたしの目を、レナートが真っ直ぐ見つめてきた。
「この先は異形獣と戦う事になるでしょう。大変危険です」
 あたしは轍の先を見る。
 白浜の端は断崖絶壁が迫り出していて、海に侵食されて出来た天然洞窟の入り口がぽっかりと口を開けていた。激しい白波を反響して増幅させては、残響を吐き出し続けている。侵食に複雑化した海流は落ちた何もかもを粉砕してしまう危険さから、人には見せられない錬金術の失敗作を捨てる場所としてまことしやかに囁かれている洞窟だ。
 真っ暗闇から漂った冷気に舐め上げられて窄んだ勢いを、奮い立たせる。
「バカ言ってんじゃないよ。家族の為なら、あたしの命なんざ惜しくないんだよ」
 ラウラリエの丘からの帰り道、家族を連行中の指針監督官達と遭遇したのだ。
 当然シャンテは猛抗議し、予想だにしなかった場所で遭遇した相手に指針監督官も戸惑った様子だった。しかし、ベルマが『家族とやらと最後の時間を過ごさせてやろう』と、檻の中に入れてしまったのだ。
 この時、檻を乗せた荷台を引いていたのは辺境警備隊詰所を襲った異形獣という魔物だった。直接戦ったことのあるレナートは護身用の剣では倒す事ができないし、直ぐに檻の中にいた皆が殺される事はないだろうと判断したらしい。
 危険な洞窟で起きた不幸な事故を装い、シャンテも始末する腹積りだったろう。だけど後日、軍団長と面談予定のレナートがいれば、そう無茶もできない。そう踏んで、せめてシャンテだけでも救い出そうとしてくれていた。
 でも、シャンテだけ助ければ良いだなんて、あたしは思えない。
 チュラリスも、コポも、ジョニールも、あたしの家族なんだ!

これまでの経緯とか。

拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
コメントもありがとうございます!!!

Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
pass

Copyright © ハコの裏側 All Rights Reserved.
Powered by Ninjya Blog