ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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王都へ繋がる転移装置の入力事項は機密なので、僕らはそれを入れてもらう為に装置の前で待っていた。移動装置と玄関の間は見事な庭になっていて、まるで天上の楽園みたいな花々で彩られている。蝶が舞い、鳥の囀りが聞こえて、池で泳ぐ魚が煌めいている。
「君のお陰で、僕の疑いも随分と早く晴れてくれたよ」
レナートさんの言葉に、僕は首を傾げた。
翌日になっても兄さんは目覚めず、王都キィンベルへ降りて医師に診せることになった。身一つで放り出された僕が持っているのは、護身用の短剣に、腰のベルトに固定した銀の小箱や路銀を収納したポーチ。そして僕の原始獣のコートの裾を外して巻いた、意識がない兄さんだけだ。
僕と同じくレナートさんも王都へ降ろされる。確かに屋敷に迷い込んだが、問題を起こさなかったので無罪放免なんだって。冒険者らしく荷物は腰に下げた鞄一つで、腰には大量生産された鋼鉄の剣が下げられている。
確かに、あの一件から完全にお客様だ。それは僕のお陰だってレナートさんは言う。
「メレアーデ様は君を試したんだ」
銀の小箱を持ち出したポーラさんを裁く時、メレアーデ様は『ルアムが望む全ての要求を呑む』と宣言した。多くの執事や従業員が証人として宣言を聞いていて、王族の娘として正式な発言となった。レナートさんの説明が淡々と続く。
「悪い考えを持つ者なら、その宣言を利用しない手はない。国が一つ買えてしまう金額を望めば手に入り、王国の重役に取り立てろと言えば叶っただろう。メレアーデ様に命をもって償えと言えば、彼女は自害したに違いない」
僕は空いた口から『そんなこと、考えたこともなかった…』と声を漏らすのが精一杯だった。
君はそういう子なんだろうね。レナートさんが一つ笑い声を漏らして、兄さんを抱いていない方の手を取った。手の甲に浮かんだ、翼を広げた鳳のような不思議な痣が目を引いた。
「君は己が潔白であると証明したんだよ」
そして侍女が起こした屋敷にとって不名誉な出来事は、元々なかったことになった。ポーラさんは屋敷を解雇される理由はなくなり、ドミネウスは屋敷は従者をコントロールできないと能力の低さを侮られることはない。
メレアーデ様は早速、ポーラさんのお母様の薬を手配したそうだよ。そう言いながら、レナートさんはゆったりと言葉を紡いでいく。
「主人の命と財産、そして名誉。彼らが守りたい物事を君は守った。そんな君の気質を見抜いたメレアーデ様の目は確かだったようだ」
断言されて僕は顔から火が出そうだった。誰も見てなくて良かった。
「ねぇ、クロちゃん。もう少し、もうちょっとだけ待てない? ダメなの? ダメなのねー。もう、しょうがないんだから!」
閉じた玄関の向こうから、デレデレなメレアーデ様の声と黒猫の猫撫で声がハーモニーを奏でる。お見送りに玄関まで来たメレアーデ様だったが、黒猫の愛くるしいおねだりに魅了されてしまったのだろう。『二人とも、直ぐに戻るからね!』と元気な声を玄関先に置き去りにして、メレアーデ様は愛猫のおやつを求めて行ってしまう。
「レナートさんは、急ぐ旅じゃないんですか?」
物置部屋でのんびりしていたんだ。愛猫のおやつタイムくらい待てるだろう。思った通り『大丈夫、急がないよ』と、返事が返ってくる。
「僕も大切な人を助ける為に旅をしているんだ。ずっと。助けられるまで…」
背筋を悪寒が走った。空気が澱んで木々の騒めきが消え、蝶の羽ばたきが静止したように緩慢になっている。レナートさんは笑みを浮かべたまま、立ち尽くしていた。胸の中の兄さんは意識がないまま。僕は自然と助けを求めて玄関先に目を向けて、そこに一人の女性が立っていることに気がついた。
「メレアーデ様?」
そこに立っているのはメレアーデ様だった。美しい紫の髪は光の下で赤や青の煌めきに移ろい、赤いリボンで結んだ長い髪は背中へ流れる。碧の大きくぱっちりとした瞳も、整った目鼻立ちも、さっき会ったメレアーデ様と全く同じ。
服はドレスではなく冒険者風の装いだ。皮を鞣した動きやすい丈のワンピースをベルトで止め、首に巻いたマフラーが風を含む。靴も実用一辺倒で、使い慣れた様子で足を運ぶ。もしかして、お忍びで一緒に王都へ行くつもりなんだろうか?
しげしげと見れば見るほど、目の前のメレアーデ様は本当にメレアーデ様なのだろうか?と疑問が浮かぶ。メレアーデ様なのに、別人のような雰囲気なんだ。
「やっと会えた…」
そう僕を見据えて零したのは、感慨深さが滲み出る重い声だった。
「ルアム。貴方にこれを託します」
メレアーデ様が差し出したのは、握り拳くらいの赤い正八面体の結晶だ。透き通った結晶越しでも、メレアーデ様の手が手入れの行き届いたお嬢様の手ではなく冒険者の手だと分かる。思わず差し出された結晶を受け取ると、メレアーデ様は言葉を続ける。
「エテーネ王国の王都キィンベルへ。私の弟…クオードにこの記憶の赤結晶を渡してください」
それはメレアーデ様がした方が良いんじゃない?
兄さん共々一方的に縛り上げた敵意いっぱいの顔を思い出して、僕は表情が渋くなるのを堪えられなかった。僕の反応を黙殺したメレアーデ様が続ける。
「必ず、貴方とクオードが揃った状態で、赤結晶の中身を確認するのです」
何が記録されているんだろう?『二人とも仲良くしなさい』って内容じゃ、絶対ないだろうな。僕が赤い結晶を覗き込んでいると、メレアーデ様の手が顔の前に翳される。
「その前に……貴方は見なくてはならない」
甲高い音を一つ立てて、ポーチから銀の小箱が飛び出してきた!
「この世の、終末を…」
メレアーデ様が翳した掌の前で、銀の小箱が回転して強い光を放つ。その光はその場にいた全てを、蛍光色の光に塗り替えてしまう。立っていた地面が消えて落ちる感覚が襲った瞬間、確かに、メレアーデ様は言った。
「ルアム。貴方を信じているわ…」
祈るように、願うように、言葉は僕へ手向けられた。
おわっっっっった!!!!!
この後のことまで入れちゃうとボリューム満点すぎて逆流しそうなので、次にしたい!!!
「君のお陰で、僕の疑いも随分と早く晴れてくれたよ」
レナートさんの言葉に、僕は首を傾げた。
翌日になっても兄さんは目覚めず、王都キィンベルへ降りて医師に診せることになった。身一つで放り出された僕が持っているのは、護身用の短剣に、腰のベルトに固定した銀の小箱や路銀を収納したポーチ。そして僕の原始獣のコートの裾を外して巻いた、意識がない兄さんだけだ。
僕と同じくレナートさんも王都へ降ろされる。確かに屋敷に迷い込んだが、問題を起こさなかったので無罪放免なんだって。冒険者らしく荷物は腰に下げた鞄一つで、腰には大量生産された鋼鉄の剣が下げられている。
確かに、あの一件から完全にお客様だ。それは僕のお陰だってレナートさんは言う。
「メレアーデ様は君を試したんだ」
銀の小箱を持ち出したポーラさんを裁く時、メレアーデ様は『ルアムが望む全ての要求を呑む』と宣言した。多くの執事や従業員が証人として宣言を聞いていて、王族の娘として正式な発言となった。レナートさんの説明が淡々と続く。
「悪い考えを持つ者なら、その宣言を利用しない手はない。国が一つ買えてしまう金額を望めば手に入り、王国の重役に取り立てろと言えば叶っただろう。メレアーデ様に命をもって償えと言えば、彼女は自害したに違いない」
僕は空いた口から『そんなこと、考えたこともなかった…』と声を漏らすのが精一杯だった。
君はそういう子なんだろうね。レナートさんが一つ笑い声を漏らして、兄さんを抱いていない方の手を取った。手の甲に浮かんだ、翼を広げた鳳のような不思議な痣が目を引いた。
「君は己が潔白であると証明したんだよ」
そして侍女が起こした屋敷にとって不名誉な出来事は、元々なかったことになった。ポーラさんは屋敷を解雇される理由はなくなり、ドミネウスは屋敷は従者をコントロールできないと能力の低さを侮られることはない。
メレアーデ様は早速、ポーラさんのお母様の薬を手配したそうだよ。そう言いながら、レナートさんはゆったりと言葉を紡いでいく。
「主人の命と財産、そして名誉。彼らが守りたい物事を君は守った。そんな君の気質を見抜いたメレアーデ様の目は確かだったようだ」
断言されて僕は顔から火が出そうだった。誰も見てなくて良かった。
「ねぇ、クロちゃん。もう少し、もうちょっとだけ待てない? ダメなの? ダメなのねー。もう、しょうがないんだから!」
閉じた玄関の向こうから、デレデレなメレアーデ様の声と黒猫の猫撫で声がハーモニーを奏でる。お見送りに玄関まで来たメレアーデ様だったが、黒猫の愛くるしいおねだりに魅了されてしまったのだろう。『二人とも、直ぐに戻るからね!』と元気な声を玄関先に置き去りにして、メレアーデ様は愛猫のおやつを求めて行ってしまう。
「レナートさんは、急ぐ旅じゃないんですか?」
物置部屋でのんびりしていたんだ。愛猫のおやつタイムくらい待てるだろう。思った通り『大丈夫、急がないよ』と、返事が返ってくる。
「僕も大切な人を助ける為に旅をしているんだ。ずっと。助けられるまで…」
背筋を悪寒が走った。空気が澱んで木々の騒めきが消え、蝶の羽ばたきが静止したように緩慢になっている。レナートさんは笑みを浮かべたまま、立ち尽くしていた。胸の中の兄さんは意識がないまま。僕は自然と助けを求めて玄関先に目を向けて、そこに一人の女性が立っていることに気がついた。
「メレアーデ様?」
そこに立っているのはメレアーデ様だった。美しい紫の髪は光の下で赤や青の煌めきに移ろい、赤いリボンで結んだ長い髪は背中へ流れる。碧の大きくぱっちりとした瞳も、整った目鼻立ちも、さっき会ったメレアーデ様と全く同じ。
服はドレスではなく冒険者風の装いだ。皮を鞣した動きやすい丈のワンピースをベルトで止め、首に巻いたマフラーが風を含む。靴も実用一辺倒で、使い慣れた様子で足を運ぶ。もしかして、お忍びで一緒に王都へ行くつもりなんだろうか?
しげしげと見れば見るほど、目の前のメレアーデ様は本当にメレアーデ様なのだろうか?と疑問が浮かぶ。メレアーデ様なのに、別人のような雰囲気なんだ。
「やっと会えた…」
そう僕を見据えて零したのは、感慨深さが滲み出る重い声だった。
「ルアム。貴方にこれを託します」
メレアーデ様が差し出したのは、握り拳くらいの赤い正八面体の結晶だ。透き通った結晶越しでも、メレアーデ様の手が手入れの行き届いたお嬢様の手ではなく冒険者の手だと分かる。思わず差し出された結晶を受け取ると、メレアーデ様は言葉を続ける。
「エテーネ王国の王都キィンベルへ。私の弟…クオードにこの記憶の赤結晶を渡してください」
それはメレアーデ様がした方が良いんじゃない?
兄さん共々一方的に縛り上げた敵意いっぱいの顔を思い出して、僕は表情が渋くなるのを堪えられなかった。僕の反応を黙殺したメレアーデ様が続ける。
「必ず、貴方とクオードが揃った状態で、赤結晶の中身を確認するのです」
何が記録されているんだろう?『二人とも仲良くしなさい』って内容じゃ、絶対ないだろうな。僕が赤い結晶を覗き込んでいると、メレアーデ様の手が顔の前に翳される。
「その前に……貴方は見なくてはならない」
甲高い音を一つ立てて、ポーチから銀の小箱が飛び出してきた!
「この世の、終末を…」
メレアーデ様が翳した掌の前で、銀の小箱が回転して強い光を放つ。その光はその場にいた全てを、蛍光色の光に塗り替えてしまう。立っていた地面が消えて落ちる感覚が襲った瞬間、確かに、メレアーデ様は言った。
「ルアム。貴方を信じているわ…」
祈るように、願うように、言葉は僕へ手向けられた。
おわっっっっった!!!!!
この後のことまで入れちゃうとボリューム満点すぎて逆流しそうなので、次にしたい!!!
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