ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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いやったぁあああああ!書けた!!!!!!
実はこの話、想像以上に難産だったので、DQ9小説執筆に走った経緯があります。DQ9小説紙媒体用の加筆修正完走したら、さらりと書き終えてしまってなんで筆が進まなかったのか全く理解できません(お前はいつもそうだな)
多分、タイトル意識してダメだったんだな。そうだと思う。
バルザック戦と、レナートくんと共に今バージョンに参加するロト嬢の登場です。
攻撃以外は何でもできる。ハコの開きのドラ●もん的存在で、幅が広がりそうで嬉しいです!実際に勇者の称号持ちなわけで、チート的扱いでも良さそうなのも楽しいです。
今回のバージョンで、稲野と公式の解釈をばちばちにぶつけるんですよ。

 それは二階建ての一軒家に相当する、見上げる程に大きな魔物だ。にたりと笑った口からこぼれ落ちた舌は、毒々しい紫の斑模様になって爛れている。体を覆う紫色の鱗は所々に剥がれ落ち、真っ黒いぶよぶよとした肉を覗かせていた。尾は途中で腐って落ち、巨体を持ち上げるには小さすぎる翼は根本から折れて垂れ下がっている。そしてでっぷりとした青白い腹には大きな穴が空いていて、腐った内臓がこぼれ落ちていた。
 生命活動がとっくに停止している肉体に、何らかの方法で魂を縛り付けているんだろう。
『貴様ラヲ喰ライ、我ガ糧ニシテクレル!』
 大木のような腕が掴んだのは折れた柱。大きく振りかぶるのを見て、アーヴさんがあたしの腕を引いて駆け出した。緩慢な動きは誰もいない場所に攻撃を振り下ろし、柱が砕けて扉を塞いでしまう。
 アーヴさんが自分にバイキルトを掛けて、魔力を杖に込める。
「ルアム! 私が前に出る! 援護を頼むぞ!」
 ルアム君の返事が舞い上がる土埃の向こうから聞こえる。
 アーヴさんは一気に駆け出すと、バルザックの肘に杖を叩き込んだ! 不自然な方向に折れ曲がった腕から、折れた骨が突き出る。本来なら絶叫する痛みのはずの一撃でも、バルザックは平然としている。痛覚を遮断しているか、感じる機能が腐ってしまっているんだろう。
 アーヴさんを薙ぎ払おうとした尾に、爆薬を仕込んだ矢が射掛けられて根本から吹っ飛び空振りに終わる。惰性で迫った尾を、アーヴさんは受け流した。
 錬金術師という後方の魔法使い系の職業のアーヴさんだが、戦士と変わらない戦い方ができる。自らにバイキルトを施し、魔力を攻撃力に変換させる理力の杖で殴打する。攻撃力は片手剣を使う戦士に負けないくらいあるらしい。オバリスのおじいちゃんに出会う前、エムリヤさんを守る為にこの戦い方になったそうだ。
 短剣と弓という大型の敵には不向きなルアム君に代わって、どんどんバルザックを打っていく。体が腐っている為に、アーヴさんの一撃でどんどん体が壊れていく。
 己の体が不自由になるのを実感したらしく、バルザックが憎々しげに吠えた。
 急激に部屋の温度が下がり、空気が凍りついて輝き出す。バルザックの腐った体も凍り出して、アーヴさんの一撃も、ルアム君の矢も通らなくなる。その様子を愉快そうに眺めていたバルザックは、体を仰け反らせ空間に反響する大声で呪文を唱えた。
『マヒャデドス!』
 勝利を確信した誇らしげな声が、輝く空気に吸い込まれる。
 吸い込まれて、それっきり。
 空気の水分が巨大な氷を形成し、目障りなアーヴさんやルアム君を押しつぶす事はない。その状況に愕然したのか、信じられないと言わんばかりにバルザックが叫んだ。
『ナゼ呪文ガ発動シナイ!』
 呪文が唱えられるのに、魔法が発動しない事に驚いてるのね。
 マホトーンは相手の声を奪う呪文だ。
 でも、実は声を奪われた程度では、魔法が使えない状態にはならない。術者が呪文を声に出して唱える事で魔法が発動するから、声を奪う方法が魔法を封じ込めるという結果になるだけなの。そもそも、呪文で起因する結果が大きいから、魔法が呪文によって発動する力と勘違いしているところから破綻してる。魔法が発動する道具の存在を知らないのかな?
 実は魔法は世界の理そのもの。世界を吹き渡る風も、満たされた海も、心臓が脈打ち血が全身を巡る事すら全てが魔法と言って良い。
 あたしは世界の理に干渉して、魔法の発動を阻害しただけだ。
 理の干渉と言っても、呪文を唱える事と大差はない。
 メラを唱えても火の玉は生み出せず、火打ち石をいくら打ち付けても火花一つ出ない。魔法を封じ込めるとは、本来はこういう事を言うんだ。
「魔法が発動する原理も分からずに、バルザックなんか名乗らない方が良いよ」
 まぁ、頭が腐って忘れちゃったのかもしれないけどね。
 あたしの言葉が相当癇に障ったらしい。バルザックは憎しみに真っ赤に燃えた目で、あたしを睨んだ。折れていない手をグッと伸ばしてくる。
『貴様ハ誰ダ!』
 あたし? そう小首を傾げて笑う。
 握り潰そうと姿勢を低くしたバルザックの頭に、アーヴさんの会心の一撃が突き刺さった。頭に王冠のように生えた角を粉々に割り、杖が叩きつけられた頭が陥没して口腔に抜ける。あたしを守る為に駆け寄ってきてくれたルアム君が、腹の空洞にカンテラを放り込み火薬仕込みの矢を射掛ける。爆発と共に腑が勢いよく燃え出した。
 炎は全身にまわり、バルザックの体が崩れていく。バルザックは『嘘ダ!』とか『コノワタシガ!』と叫んでいたが、そのうち叫び声は聞こえなくなり灰の山になってしまった。
 警戒を解いて武器を下ろした二人を横目に、肺の山に歩み寄った。
 流石に魂を留める器としては機能しないだろう。
 後は地下に廃棄された残留物を精製して、『エテーネルキューブ』をお腹いっぱいにするんだよね。それはアーヴさんがやってくれるし、後は帰るだけかな。
 …あぁ、そうだ。
 漂う魂に聞こえるように、あたしは名乗った。
「あたしはロトよ」


はーーーーーい!ロトちゃん、いらっしゃいませーーーー!!!!
ガライさん来たんでロトちゃんも来るよねー、っていうかカンダタ月クエストの時には登場確定でしたからねー!前回のプクランドで、で気がついた人はいたかな?

 アーヴさんが『お待たせ』と言いながら歩み寄ってきた。
「ここが父の言っていたバルザックの研究所のようだ」
 目的地だった安堵はなく、気分が悪いのを隠さない険しい顔だ。
 バルザック。四つ目の神話に登場する錬金術師は、死に至るまで悪逆非道の限りを尽くした。
 石を黄金に変えることから始まった錬金術はその解釈を広げ、不老不死や不治の病の根絶など人の想像するあらゆる欲望を具現化する術となった。バルザックは研究の過程に無辜の民の生命を浪費して、人の道を踏み外した。
 錬金術師は難解で、不可能に立ち向かう研究だ。運良く大きな成果や新しい発見がある場合もあるけれど、報われない事は普通にある。出口のない迷宮を彷徨うような、川の流れに逆らって泳ぐような研究者達は、誰もが一度は考えただろう。
 バルザックのように人の道を踏み外したら、成功するのでは、と。
 人の命は、魂は、巨大な結果を簡単に得られる素材だ。
 そんな誘惑に溺れた者の一人が、アーヴさんのお祖父様だった訳だ。禁忌の誘惑は神話を経て名前と人格を得てしまって、今では珍しい事じゃなくなっていた。
「同じ錬金術とは思えない、規模の大きな実験が繰り返されている。残留物も発生していて、地下に遺棄しているようだ」
 アーヴさんは険しい表情のまま、あたし達を見た。
「こんな恐ろしい実験をしたバルザックが、死んでいるとは考えにくい。気をつけて進もう」
 はい。緊張した面持ちで返事をしたルアム君の隣で、あたしも頷いた。
 研究所の奥へ進む程に、毒ガスのような刺激臭が強くなっていく。バギを制御して換気するけど、清浄な空気を取り込む侵入口が遠くなる程に時間が掛かるようになってきた。レミーラを消してバギの制御に集中する。どこをどう歩いて、どんな物があったか全然認識できない。時々、ルアム君が、手を引いてくれるのに従いながら先を進んだ。
「止まって」
 扉の前でルアム君が振り返った。カンテラを扉の横に置いて、張り付くように内部を探る。
「何かがいる気配がする」
 アーヴさんが両手杖を握り魔力を高め、ルアム君が矢を軽く手の甲に触れさせて弓聖の守り星の加護を掛け直す。魔物が出てきた場合は、ルアム君が前衛、アーヴさんが後方で攻撃呪文で援護。あたしは状況に応じて下がるように言われているけれど、二人が戦えるように照明と換気を続ける事になるだろう。
「目を閉じて口を覆ってて」
 言いながらあたしが扉の前に進み出ると、両脇に付いたルアム君とアーヴさんが腕を口に押し当てて身構える。二人が扉を開け放った瞬間、あたしは高らかに呪文を唱えた。
「バギマ!」
 部屋に堆積した塵にも有毒物質があるだろうから巻き上げたくはないんだけど、換気の時間を短縮する為には仕方がない。
 部屋の全ての塵や埃が掻き混ぜられて吸い出され、扉に立つあたし達に強い向かい風となって当たる。砂混じりの強風を真っ向から受けたと思えば、次の瞬間には追い風に押される。まるで竜巻の中にいるような風の流れ。あたしは風の制御を弱めると、両手を振り下ろして部屋全体にズッシードを施し舞い上がる埃や塵を地面に叩き落とした。
 最後の仕上げとレミーラを唱えれば、温かみのない白い光が空間を照らし出す。
『随分ト、生キノ良イ素材ダナ…』
 部屋の中にいた巨大な影が、ゆっくりとこちらを向いた。


親世代の探索で絶対立ち入らせない状況にしたから、ガス溜まり対策頑張ってます。

「『エテーネルキューブ』に構築された術式はとっても複雑で、ちょちょいと弄ってプクリポのお兄ちゃんを巻き込まないようにするのは難しいんだ」
 時間に関わる魔法は非常に不安定で、道具として安定して干渉できる存在はとても珍しい。そんな中で『エテーネルキューブ』は芸術的と言って良い、複雑な術式が組み込まれている。さらにキュルルって妖精が術式の重要部分に組み込まれている上に、エネルギーが枯渇して全ての構築式が見えない。
 危ない時間や場所に飛ばされる可能性を考えれば、迂闊に触らない方が良いだろう。
 それ以上に、プクリポのお兄ちゃんがルアム君の時間転移に巻き込まれたの理由が厄介だ。ルアム君とプクリポのお兄ちゃんは、同じ名前だからだけではない強固な魂の繋がりがある。目の前のルアム君にさっきのメラで火傷を負わせたら、村で療養しているプクリポのお兄ちゃんも火傷を負うくらい強い。距離を置いた程度では、ルアム君の時間転移に引っ張られないとは言い切れないんだ。
 この理由を排除する為には魂の繋がりを切断する必要があるんだけど、他人の冒険の書の損壊は大罪だ。絶対にできない。
「そうなると、自衛するしかない」
「自衛、ですか?」
 プクリポのお兄ちゃんの命が掛かっているからか、ルアム君が前のめりになって訊いてくる。
 幼い頃に写本した始まりの大賢者シフィル様の書を収めた鞄。その横に吊るした白い巾着袋は、お世辞でも綺麗ではない魔法陣が金の糸で刺繍してある。口を絞る為の紐には、魔法の効果を高める水晶の玉を通してる。巾着袋を逆さに振って、中身を手のひらに落とし込んだ。
 覗き込んだルアム君が、首を傾げる。
「命の石?」
 子供の掌くらいの大きさの、青み掛かった透明な石。美しくカッティングして宝飾品にしたり、恋人や夫婦が一つの宝石を二つに割って共有する場合もあるけど、これは何の加工もしていない原石だ。大きい二つの結晶が下方で一つになっている形が、まるでハートみたい。
「本当は命の石じゃないんだけど、効果は命の石と一緒だよ」
 命の石には、持ち主に降りかかる厄災を引き受ける効果がある。
 横転した馬車に巻き込まれた者が、奇跡的に無傷で助かった。火災に巻き込まれ死を覚悟した者が、軽い火傷を負った程度で脱出できた。そんな運の良い人は、自分の持っていた命の石が真っ二つに割れているのを見るだろう。命の石が厄災を引き受け、持ち主を守る。この効果は生命を奪う呪文ザギにすら効果があって、誰もが一個は持っているお守りだ。
 時間とは全ての存在に平等に流れるものだけど、おそらく時間転移の際に本来なら有り得ない歪みに晒されて魂が傷ついて昏睡した。これは時間転移の際にプクリポのお兄ちゃんに降りかかる、時空の歪みを引き受ける為だけに作った石だ。
「『エテーネルキューブ』がお腹いっぱいになったら、仕上げるつもりなんだ」
 エネルギーが充填されれば、全ての構築式が見れるはずだ。きちんと『エテーネルキューブ』の時間転移に限定させないと、日常の小さい歪みで割れて、あっという間に砂になっちゃうからね。
 食い入るように石を見ていたルアム君が、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 ルアム君の肩に手を置いて、顔を上げさせる。
 あたしよりも年下で、可愛い男の子だ。あどけなく丸いほっぺたに、しっかり者の凛とした光を帯びた青紫の瞳。眉毛が男の子らしく濃くて、青紫の毛髪は柔らかくて量が多い。ちょっと燻んだ緑に染めた毛皮のコートを着て、弓と短剣を装備した立派な狩人。
「言っても無駄かもしれないけど、言うね」
 プクリポのお兄ちゃんが大好きだし、相手もルアム君を大切に想ってるだろう。幸せな関係が足枷になる未来が想像できて、なんだか悲しくなってくる。
「『エテーネルキューブ』を使わないで済むなら、それが一番良いんだからね?」
 ルアム君は目を伏せて、小さく頷いた。

うっちの3賢者はシフィル様ですよー!
いのまた先生の美麗なシフィル様は本当にマジで3賢者!!あぁー!絶対地上に降りてから悟りの書とか書いてるよって思ってるから、ここでは最初の賢者なんです!厳密に最初だとニクスの兄貴とかになりそうですけどね!
あぁーー!いのまた先生がお亡くなりになったとか嘘だーーーー!ドラクエにテイルズに、稲野の青春を彩った方なのに!!!!!うわーーーん!!!!!

あわわ!久々に拍手いただきました!ありがとうございます!
DQ9小説のために篭ってたので、とても久々の拍手が沁みます!

 あたしは頬を指で押しながら、うーんと唸った。
 ルアム君は世界中を冒険して色んな経験をしたから、普通の人よりも想像力も理解もある。きっと、プクリポのお兄ちゃんが意識不明になった原因が、『エテーネルキューブ』を作動させた自分にあるんだろうって思ってるんだろう。その予想は正しくて、どう説明すれば正しく傷つけずに伝えられるか言葉を選ぶ。
 指先にほっぺたの弾力を感じながら、目をくるりと回して部屋の中を眺める。
「防御力が無かったって感じかな?」
 ぼうぎょりょく?
 よっぽど予想外の事だったみたいで、ルアム君が目を白黒させて呟いた。
 ほーら。こんな顔させちゃうの、分かってたんだよ。みーんな、あたしの説明聞くと微妙な顔するんだよね。あたし、説明下手っぴなの。ガライさんがいてくれれば、もっと上手に伝えられるのになー。
 あたしは一本立てた人差し指の先に、蝋燭の火程度のメラを灯して見せた。
「このメラはとっても弱いけれど、触れば誰もが火傷しちゃうね」
 意味不明な防御力について説明していると分かっているからか、ルアム君は黙って頷いた。
 ふいっと指先のメラを消して、頭上に照らしたレミーラを指差した。あたしのレミーラは、真っ暗い部屋を日差しが燦々と差し込む空間に変えている。地面にはくっきりと黒い影が落ちていた。
「もしこの光が太陽の光なら、肌の弱い人は日焼けしちゃう。日焼けも火傷の一種なんだよ」
 このアストルティアは人間以外の多様な種族がいる。
 その多種多様な種族でも、呪文などの強い力に晒されれば怪我をする。
 しかし怪我に至らなくとも、人によっては厳しい環境は存在する。
 砂漠が広がる大地に暮らすドワーフという種族は、強い日差しをものともしない。逆に海が広がる島国に暮らすウェディや、大森林に抱かれて暮らすエルフには、大砂漠の日差しは命を奪う脅威だ。
「世界は穏やかそうに見えて、色んな魔力が渦巻いておっかないんだよ。おっかないのを感じない程度の防御力を持って生まれるから、皆は普通に暮らせるの。でも防御力は種族や出身で、どうしても個人差が出ちゃうんだ」
 ここら辺はちょっと難しいかも。
 いくつかの世界を渡るモンスターマスター達には常識なんだけれど、冒険の経験からかルアム君の瞳に理解の光が灯った。納得したように深々と頷く。
「つまり、僕が無事で兄さんが昏睡した違いは、耐性の個人差によるものなのですね」
「その通り! ルアム君は賢いね!」
 ぱちぱちと拍手をすると、頬を染めて照れる。かわいいね!
 しかし、次の瞬間には照れた笑みを拭うように消した。
「ということは、また『エテーネルキューブ』の転送に巻き込まれれば、兄さんは再び意識を失ってしまうんですね?」
 真剣な問いかけに、あたしは正直に頷くしかなかった。


彼女は誰だろうねー(棒)
まぁ、レナート君が誰だかわかって、彼女も誰だかわかる人は、不穏な予感がするね。大丈夫、その予感は正しい。

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