ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 最初の頃は村の周辺で数日には帰ってこれた旅路だが、島を出て遠方に向かう程に村に帰る日は遠退いて行った。一年に一度帰る程度になれば、もう、親などと名乗れる者ではなかろう。
 理由は何であれ子供達は私達に恨み言一つ言って良い筈なのに、真っ直ぐに育ってくれた。私を父と呼び笑って出迎えてくれる様を見ると、村人達に私達は感謝し尽くせぬ想いだった。下げた頭がいつまでも上がらぬので、ルアムが心配して顔を覗き込んだことが何度あったか。
 随分と遠くにやってきた時、私達の旅路に大きな転機が訪れた。
 転機は無造作に伸ばした毛髪に細かな刺繍が擦り切れた古いローブを着た、世捨ての老賢者を絵に描いたような御人の姿をしていた。金属の棍を杖代わりにして体重を預け、白髪は銀細工のように世界の色を映し込み、肌は艶やかな赤金に照っている。黄金の瞳を優しげに細めた老人が私達を誘ったのだ。
「どうかね、若いの。私達と共に行かぬか?」
 それは不思議な集団だった。年齢も種族も、職業も、てんでバラバラ。親子で参加している家族もあれば、仲の良い友人同士、当然一人で加わっている者もいる。目的も誰一人同じではなかったが、ほぼ全員に共通点があった。それが、私達の目的と重なっていたのだ。
「たった二人で達せられる目的ではなかろう。なぁに、参加も離脱も自由じゃ。其方達の目的を私が引き継いでも良い」
 私達はその一団を率いる長老オバリス様のお言葉を、二つ返事で了承した。
 たった二人、途方もない道を歩いてきた旅路が一変した。苦労した情報収集は誰かが聞いてきた内容を精査し、更に自分達が求めるものを聞き込みに行ける。毎日行う食事や洗濯、宿の手配を持ち回りで行うので、自由な時間が増えた。何より魔物や盗賊といった外敵から、集団故に身を守って貰える事に助けられた。そして所属する人員は入れ替わりが激しく、一度抜けて再び合流する者も、定期的に出たり入ったりを繰り返す者もいて、まるで小さな大地の箱舟のような集団だった。
 そして何より嬉しかったのは、故郷に残した我が子達に会いに行けるようになった事だ。
 大きな町に着けば、一団は補給を兼ねて数日間滞在する。その間、故郷に戻り子供達と過ごすよう、長老様が招きの翼を渡して送り出してくれたのだ。お陰で子供達に会いに行く間隔は、一月から半年に一度になった。あまりにも短い間隔で気兼ねする時や、重要な情報が得られそうな時は、妻だけ故郷に帰ってもらった。多くの土産を持たされて、私達は子供達に会いに行く。
 やんちゃ盛りのテンレスと、しっかり者のルアム。二人の子供達の温もりに触れると、必ずや目的を達して帰らねばならないと思う。それでも子供達の成長を見守れる幸せを、私達は噛み締めていた。
 旅は順調に運び、未来を変えられる、子供達の元に帰れると希望が灯った頃だった。
 私達がいつものように村に戻ると、あったはずの村が焼き払われていたのだ。あの家は祖父母から妻の兄夫婦に譲られた家、旅に出る直前に子供を授かった夫婦が笑っていた家、一つ一つに大切な記憶が宿る故郷が瓦礫の山に成り果てている。駆け込んだ我が家は潰れていて、爪を剥がしながら梁を退けて子供達を探したが誰の遺体もなかった。豊作の時は見渡す限り青々と茂ったハツラツ豆の畑は、酷く汚染され腐った水に瘴気が溶け込み毒の沼地となっていた。亡骸は全て焼き尽くされたか獣に食われたか、弔うべき遺体一つ見つからなかったのだ。
 滅んだ故郷を見た日は、酷く混乱していて記憶が曖昧だった。
 ただ、後悔と妻の悲鳴が頭の中に反響して、目がちかちかと霞んでいた。
 私達の旅に子供達も連れて来れば、死なずに済んだのではないか。守るべき子供達が死んでしまうだなんて、私達の旅は何だったのか! 村が滅ぶことをアバ様が知らない訳がない。どうして、私達を頼ってくれなかったのか!
 このまま子供達の後を追おう。
 強い死への願望に突き動かされる私達の背に、ぽっと温もりが灯った。いっておいで。長老様の柔らかい声が聞こえる。楽しんできなよ。そう、快活に言い放つ仲間達の笑い声。家族がいるっていいもんだ。しみじみと噛み締める呟き。
 恐ろしい時間を掛けて開いた手から、刃物がこぼれ落ちて地面に刺さった。強く握りすぎて手も腕も震えていた。
「…もどろう。このまま死んでは、長老様達が探しに来てしまう」
 私の言葉に妻もゆっくりと頷いた。


うちの主人公の兄弟姉妹の親は、結構まめに帰ってきてくれた設定です。
DQ3完全版か精霊ルビス伝説を持ってる人ならニヤリとするオバリスです。あ、でも精霊ルビス伝説は上製本に載ってるかな?文庫版なら載ってます。
アーヴとエムリヤ夫妻は、このオバリスが牽引する一団と共に行動しています。その為に、まめにエテーネ村に戻ってきて子供達と過ごしています。流石にゲーム上のクエストが村を出て以来の再会だと、主人公が弟や妹であった場合に絶対覚えていない。両親だって主人公の顔が変わって覚えていられるか?って感じです。その対策としてマメに戻れる夫妻の協力者を付けました。DQ3完全版を読んでる人なら、オバリスの目的もご存じでしょう。

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