ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 クオードが銀の箱を屋敷の外に持ち出していないのに、部屋にはない。じゃあ、メレアーデ様の部屋から持ち出した銀の箱は、どこに行ってしまったんだろう? 首を傾げる僕の目の前で、メレアーデ様は執事さんに問う。
「クオードが出かけた後、部屋の清掃はしたのかしら?」
 執事さんが掃除の担当者を聞き出すと、メレアーデ様は颯爽と歩き出す。
 なんだか大事になってきたなぁ。見つかっても見つからなくても、この後、きちんとお礼を言わなきゃ。僕はメレアーデ様の後ろを追いかける。
 侍女達が控える部屋を開け放ったメレアーデ様に、部屋の中にいた侍女達が一斉に立ち上がり頭を下げる。メレアーデ様が『頭を上げてちょうだい』と言っている間に、一番年嵩の侍女長らしき女性が歩み寄って来た。
「メレアーデ様、どうされました?」
「クオードの部屋を最後に掃除した者に、部屋に銀色の小箱が無かったか確認したいの。ジェリナンから担当がポーラだと聞いているわ」
 左様でございますか。そうゆったりと答えた女性は、背後に控える女性達の中から『ポーラ。前へいらっしゃい』と呼び掛ける。艶やかな黒髪を肩口で切り揃え、黒縁の眼鏡を掛けた若い女性だ。颯爽と前へ進み出て会釈をする様子が、生真面目な性格さを窺わせる。
「ポーラ。クオード様の部屋に銀の小箱がありましたか?」
「いいえ。ありませんでした」
 年嵩の侍女の問いに返された即答を聞きながら、僕は落胆を隠せなかった。
 もう元の場所に戻ることは横に置いて、兄さんを治そう。テンレス兄さんには悪いけど、銀の小箱はなくしちゃいましたって謝れば良い。そう考えながら落とした視界に、メレアーデ様のドレスのスカートがフワリと前へ進む。
「ポーラ」
 顔を上げると、メレアーデ様が黒髪の侍女の前に立っていた。あんなに無邪気な子供のようにはしゃいだ声からは想像できない、毅然とした声で静かに呼びかける。
「正直に答えてちょうだい」
「私は嘘など申しません」
 ポーラと呼ばれた侍女は年下の主人に目礼するように目を伏せ、はっきりとした声で断言する。分厚い眼鏡のレンズの向こうにある瞳を覗き込むように、メレアーデ様は少しだけ屈んだ。
 本当に? そう囁いた声が眉毛に被さるように切り揃えた前髪を、そっと揺らす。
「さっきと同じ答えを、私の目を見て言えるのね?」
 息を詰まらして強張った体は、さらりとした黒髪を大きく震わせた。眼鏡越しの視線は床を舐めるように彷徨い、嘘を言わないと宣言した口が『それは…』『その…』と呻く。
 己が犯人だと認めたも同然の反応だった。
 でも、メレアーデ様は『貴女が盗みを働いたのね』と糾弾しない。主人である彼女が黙っているので、その場に居合わせた侍女達がひそひそと言葉を交わすこともない。ポーラさんが罪を認め謝罪するのを待っている微温い沈黙の中で、黒いスカートと白いエプロンが翻る。ポーラさんは自分の荷物をしまう棚から小さい布袋を取り出して戻ってくると、『申し訳ありません』と黒髪が深々と下げられた。
 ポーラさんが布が取り払うと、テンレス兄さんから託された銀の小箱が息を大きく吸い込むように輝いた。

切りどころが難しいし、稲野の書く小説にしては一話が長すぎる。
しかし、メレアーデという今回のヒロインの性格が如実に語られたエピソードなので削るところがない。

拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
いっぱい叩いてくださった方もありがとうございます!

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