ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 勝利への光が見えた宴が、潮騒と混ざり合って聞こえてくる。
 グランゼドーラ城で最も奥まった場所にある私室は、この国で国王よりも大事な人物に当てられる。かつては妹のフェリナの部屋だったそこは、現在、僕の許嫁であるヴィスタリア姫が使用している。彼女が好む白と桃色を中心に整えたカーテンやリネンはドレスに仕立てるような一級品、花嫁道具である裁縫箱は外見は質素な白木のチェストだが、扉を開ければ螺鈿細工で飾り立てた宝石箱だ。この戦時下において、豪華過ぎず、ファルエンデ王国として恥じないよう心配られた品々。
 それに囲まれた許嫁殿は、とても美しいお方だ。
 肌は透き通った陶磁のように白く滑らかで、小ぶりな唇は健康的な薔薇の色。榛色の髪は丹念に手入れされて瑞々しく潤っており、巻いている髪を覆う艶は夕焼けを溶かし込んだような美しさがある。針を握る手は摘んだだけで折れてしまいそうなくらい細い。冬の空を彷彿とさせる青みがかった灰色の瞳が、真っ直ぐ僕を見据えていた。
「明朝には出立されるというのは、本当ですの?」
 先日、不死の魔王から受けた傷を心配しているのか、許嫁殿の真剣な瞳が腹部に注がれる。そんな彼女の不安を拭うように、僕は殊更元気に笑ってみせた。
「賢者セレディーネ様に治療していただき、傷は跡すら残っていませんよ。回復呪文の副作用である疲労も、休息をしっかりしたお陰で残っていません」
 許嫁殿が溢した安堵の息が胸を満たしていくのを感じながら、僕は笑みを柔らかくする。
「不死の力を封じる秘術を、カミルと許嫁殿が力を合わせ探し出してくれた。今、天は魔王と討伐すべしと全ての気運が高まっているのです」
 カミルに討伐されたジャミラスが復活するまでの間は、魔王軍は勇者が秘術を手にした事を知らずにいる。それを証明するように不死の魔王はグランゼドーラに向けて総攻撃を仕掛けるようだと賢者シュトルケ殿から報告があり、手薄になるだろう魔王城に乗り込み魔王を討つ絶好の機会ともいえる。
 勇者と盟友が魔王城に乗り込む事でグランゼドーラの守りは薄くなるが、各地の防衛拠点からできる限りの人員を集結させる事で耐え凌ぐつもりだ。不死の魔王が倒されれば、不死の魔王の力で蘇生されている魔軍十二将も瓦解するに違いない。
「許嫁殿。平和な時まで今暫くご辛抱ください」
 不死の魔王を倒し、世界に平和をもたらすまで後少し。勇者の本能なのか心が浮き立ち、声が弾むのが抑えられなかった。
 人々の恐怖に硬った表情をほぐしてきた笑顔だが、許嫁殿の顔は硬いままだ。
 なんだろう。
 言い様のない不安が、彼女の開いた真っ暗な口腔から不気味な手となって這い出してくる。
「アルヴァン様はカミルから秘術の事をどこまで聞きましたか?」
「不死の力を含め、ありとあらゆる力を封じる事ができると、聞き及んでいます」
 人払いがされた部屋で、『そう』とため息のように声が漏れた。小さい花弁の唇が閉ざされて、純白のロングスカートのように広がった沈黙は、いつもなら聞こえる筈の波の声すら退けたようだ。互いの呼吸音、僕の心臓の音、そして彼女がそっと置いて擦れた陶器の茶器。
 アルヴァン様。許嫁殿が僕の名を呼んだ。
「わたくしと初めて会った時の事を、覚えておいでですか?」

勇者アルヴァン様視点早すぎると思うんだが、ヴィスタリア様もうやっちゃったから彼しかいないんだー。せつねー。
ちなみに2テイク目。最初は婚約破棄をぶつけるヴィスタリア姫から始まってキレキレだったが、その後に秘術の話題に流れるの悪過ぎて前後させました。

拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!

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