ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 後悔に項垂れて帰ってきた私達を、仲間達が優しく迎えてくれた。誰もが大切な者を失っていたので、無言で抱きしめられ、目の前に温かい飲み物を差し出され、普段通りの空間に身を置かれた事は有り難かった。死に場所を求めて離脱の意思を告げる時、長老様は言った。
「やり遂げてから死んでも、遅くはないのではないかね? 全てが中途半端のまま天で再会しては、子供達が何の為に村に残ったのか報告一つできんじゃろう?」
 全くその通りだ。
 何一つ成し遂げられずに後を追えば、子供達に我慢を強いた全てが無駄になる。子供達が我慢したから誇れる結果が一つでも生まれたのだと、報告する義務が私達にはあるのだ。
 私達は黙々と目的を果たす為に、長老様の一団と共に行動していた。
 上の息子が成人する歳だ。下の息子は背が伸びる頃合いか。今の時期の村は種植えの為に、総出で畑を耕しているだろう。月が強く輝けば、村にも同じ光が降り注いで明るいことだろう。そんなことを考えながら過ごしていた。
 そんなある日、仲間が私達の前に駆け込んできた。
「アーヴ! エムリヤ! エテーネって村が、い、今、移住者を募ってるって…!」
 それは行商人の噂話だった。
 魔族に滅ぼされた村が復興したが、辺境の地ということで移住者に難儀しているとか。面白い売り物を探そうにも、まだまだ住んでいる人間が食うのに苦労するので先の事だろうとか。それでも、新しい村だ。面白い話のネタになるかもしれない、とか。
 長老様の一声で、一団はエテーネ村へやってきた。
 そうして目に入ったのは、復興というよりも発展を遂げた故郷だった。森の中にひっそりと存在した村の中を流れる小川はそのままに、多様な種族が移住し、家は新たに建て直され、魔物や獣除けの壁に囲まれ、ハツラツ豆の畑が豊かに実る。村の中央にある小高い丘には、青々と大木が緑の葉をつけ、大きく翼を広げた天翔けるペガサスのようだった。
「こんにちわ! ようこそ、エテーネ村へ」
 出迎えた子供に、私達は目を見開いた。
 ふわふわとした青紫の髪に、狩りが上手で日に焼けていた肌。幼さが残る丸い輪郭なのに、兄よりもしっかりした顔立ちの子供。着ている服は森の緑に馴染むようオリーブマリーで染め上げた、原始獣のコートセット。得意な弓矢や短剣が、彼が狩人だと物語る。
 子供は私達に視線を留めて、大きく息を吸い込むと、目をまんまるに見開いた。吐き出した息は信じられないという感情を、声にして紡いだ。
「お父さん…? お母さん…?」
 妻も私も喉が張り裂けそうになる大声で、ルアムの名前を叫んだ。駆け寄って傷がないか冒険者らしい筋肉を宿す腕をさすり、亡霊でないことを確かめるように柔らかい頬に触れる。溢れる涙に滲む世界の向こうで、息子もつぶらな瞳から涙が流れていた。私達三人は互いに体の隙間が無くなる程に、強く強く抱き合った。
「あぁ! ルアム! 良く、無事で! 神様、ありがとう! ありがとうございます!」
 妻が涙声と歓声を綯い交ぜにして叫び、折れんばかりにルアムを抱きしめた。胸に埋もれる顔がもぞりと動いて、妻の背に回した小さい手がそろそろと上下に動いた。私も日向の香りのする髪に手を沈め、形の良い後頭部を何度も何度も撫でた。少し背の伸びた息子から伝う温もりに、私は信じてもいなかった神という存在に心の底から感謝した。

ちょっと短めの再会の話。
仕切り直す前はここまで一話強で駆け抜けていたりします。初めての両親の話だし、父視点に戻したら描写が三倍くらに膨らんでふえるわかめか?とか素で思いました。

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