ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 エテーネ村が滅ぶ。
 そう、彼女は言った。玄関の戸を開けたワシに『おや、今日は何を摘み食いしてきたんだい?』と、お帰りなさいの代わりに腹を突く日常と変わらぬ声で。
 女である前に、縁談が上がる前から、言葉を覚えるより早くから、先見の巫女であった。彼女にとって、視えた未来を告げる事は息をするのと同じこと。どんなに残酷な未来が今の幸せを打ち砕こうと分かっても、誰かの心を守る為に偽る事など考えたこともないじゃろう。
 じゃが、些細なことだ。
 あの強くて自信に溢れた彼女が、あの日ワシに打ち明けてくれたことの方が大事だった。
 何時のこと? 空気の通り道すら塞いでしまうほどに乾いた喉が酷く痛む。言葉なったか定かではない問いに、彼女は小さく頭振った。将来のお嫁さんの髪を結える良い夫になる修行って、今朝結った髪がドレスの裾のようにふわりと揺れる。
 ずっと。胸に押し付けた彼女の額に浮かんだ汗が、じっとりと服に染み込んだ。
「ずっと未来のことだろう。遥か遠くに村が燃える炎と、鼻がひん曲がりそうな焼ける臭いがするんだ」
 小刻みに震える体を抱き締めると、彼女はゆっくりと力を抜いて体を預けてくれる。残酷な未来を一人抱えて闇の中で震える彼女を抱きしめることができるなら、ワシはどんな絶望も救いのない未来も知りたかった。そう、求婚の言葉を連ねる日々の中で言ったこともあったわい。
 冷え切った体に熱が馴染む頃、ワシは彼女の名前を呼んだ。いつもなら睨み上げるような不遜な顔は、不安に揺れていた。
「滅びの未来を回避する方法がないか探してくる」
 遥か昔から時折生まれる先見の巫女達の予言は、絶対ではなかった。未来は変える事が出来る。その可能性に手を伸ばそうとした若き日の自分を、将来妻したいと願って止まない彼女が見上げている。その目に真面目な顔のワシが写り込んでおったが、彼女はワシを見てはおらんかった。ワシを通してワシの未来を見ている瞳は、今思い返してもこれ以上はないという美しさじゃった。潤んだ瞳が一つ瞬きすると、瞳の上に瞬いていた輝きが拭われていた。
「大変な旅になる。誰も歩いた事のない道を歩き、すれ違う者も同じ未来を知る者も誰一人お前と肩を並べて歩いてはくれぬ。たった一人広大なアストルティアを放浪することになるぞ」
「良いんだ」
 ワシはキッパリと言って、彼女を折れんばかりに強く抱きしめた。肩に押し付けた鼻先に、彼女の好物のハツラツ豆を炒った香ばしい匂いが触れる。
「アバちゃんが『ホーローが未来を変えてくれるかもしれない』って期待してくれるなら、どんな困難も孤独も苦にならないよ」
 それが、放浪の賢者と呼ばれるワシの第一歩。ブロッケンには子守唄で、エイドスには『胸焼けするわい』と二度は話した事はなく、ルシェンダ様には時折聞かせて欲しいとせがまれる、妻とワシの物語である。

ver4開幕でっせ!
最初はヤクウさん視点で行こうと思ったんですが、重複したのとちょっと筆が乗らなかったのでホーローさん視点で上手くいきそう! 村を出たのがいつだか分からなかったので、時期はできる限り濁した。
ホーローさんはこんな形でアバ様に寄り添ってたんだろうなぁ!!!って思ってよ!!!惚気んじゃねぇ胸焼けするわってエイドスさんが言いそう(言わせた)

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