ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 我は宣戦を布告するように、高らかな咆哮をあげた。
 大滝の音を掻き消して反響する雄叫びが、ドランド王国の全ての民に獣の種を植え付ける。光線を浴びせれば瞬く間に獣と化すが、獣にする手段は光線だけではない。命を奪い続ける外道と呼ばれる所業も、他者を蹴落とし蔑む行為も、恐怖に震えるだけの一見害のない存在でさえ、獣に堕ちる可能性となって潜んでいる。
 我が獣とする光線は、ちょっと足を踏み外させる程度の干渉でしかない。だが足を踏み外したら最後、這い上がる取っ掛かりすら存在せぬ、掴みどころのない広大な闇の中に放り出されよう。
 その闇の中どう生きるか。
 我は舌舐めずりをした。下準備はとうに終わり、後は出来上がった美味い食事を頬張るのみ。絶品と分かる食事が供されるのを待つ時間も、美味を深くする香辛料だ。
 角笛の音が大空洞を反響した。
 宿敵オルセコ王国の侵攻があった際に避難を促す警笛に耳を傾けながら、我は顔を上げる。大滝の最も高い場所に、このドランド王国を一望できる突き出した岩がある。岩にはドランド王国の紋章が織り込まれた布が垂れ下がっていて、玉座があるのだろうと思わせた。
 あそこにしよう。我は、にまりと笑みを深めた。
 景色の良い場所で食べる美味い飯は格別だ。
 翼を広げ大空洞へ飛び出した我に、矢を射掛ける兵士の姿がある。しかし、我に矢を射掛ける余裕は瞬く間に消えていくだろう。我の光を受け入れた年若い兵士が、逃げ惑う民を掴んでは壁に叩きつけて大きなシミにする。同胞だった者に槍を突き出すことに躊躇った兵士は浅い一撃しか入れられず、反撃によって殴り飛ばされ手足が変な方向へ折れて滝壺へ落ちていく。
 襲いくる者は前からとは限らない。我が咆哮に恐れ慄き、獣に変じた者が背後から襲い掛かる。矢を構えていた兵士は獣に斧を振り落とされ、脳天を破られて脳髄をぶちまけた。
 獣達は刻々を数を増やし、正気を辛うじて保つ者は急流に揉まれる哀れな虫のような有様。
 愛した者に殺される絶望に塗れた断末魔。殺してくれと懇願する悲痛な叫び。お腹の中の赤子を守ろうと健気に身を丸めても、暴力の前に生きながら腹を割かれる妊婦。逃げ惑う背中に振り落とされる無慈悲な一撃。血飛沫が滝壺を赤く染めていく。
 前へ! 前へ!
 我に愚かなるオーガ共が殺し合う様を見せよ!
 ゾクゾクと快感が翼の先まで行き渡る。いつの間にか、我は腹が捩んばかりに笑っていた。
「狂え! 狂え! 我が掌の上で踊り狂うのだ!」
 大滝の水飛沫を真っ向に浴びながら舞い上がると、稲妻が我目掛けて落ちてくる。咄嗟に避けようとした身に、掴みかかってきたのは『轟雷王』などという大層な二つ名を持つドランド王だ。視線で射殺さんばかりに血走った目が、我の眼前に突きつけられた。
 こんなところに、メインディッシュがいたか。
「悪鬼ゾンガロン! この狼藉の責、貴様の死で贖ってもらう!」


元々の戦闘での性能の通り光線は強制モシャス程度の力しかなくて、本格的な転落は本人の錯乱によるものが大きいのかなと。ドランド王国に残された手記では、獣になるまでのタイムラグが存在していたし、奥に逃げ込んだ者に光線を浴びせ回るのは現実的ではない。そういう意味で、咆哮の演出を出しました。咆哮を聞いた事で獣になるかもしれない恐怖を増長させ、獣に転落させるきっかけを生み出すのかな、と。

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