ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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それは四つ目の神話に登場する、悪い錬金術師の名前だった。
勇者と共に世界を救うべく導かれし者達の中に、美麗な双子の姉妹がいた。太陽の眩さと苛烈さを宿した姉と、月の慎ましやかさと神秘さを宿した妹。そんな姉妹の育ての父が弟子の一人に殺害されてしまい、姉妹は復讐の旅に出る。四つ目の神話の姉妹の章の冒頭部分だ。
姉妹の仇をバルザックという。
バルザックは野心の強い男で、師匠である姉妹の父から研究結果を奪ったとも、錬金術を悪き目的で使おうとしたのを止めようとした師を殺害したとも、師の才能を妬んで殺したとも言われている。どんな諸説があろうとも、バルザックは姉妹の育ての親を殺し、悪の道に走り、最終的に異形の魔物の姿となって姉妹に討ち取られるのである。
『アーヴ。お前の祖父はバルザックという名前なんだ』
今も懐疑的な父の秘密だった。正直、今だって冗談だと思っている。
四つ目の神話の存在から『バルザック』という名前を我が子につける親などいない。私の祖父は四つ目の神話のバルザック本人か、神話の悪人の名前を好き好んで名乗ったのだろう。
『バルザックは狂っていたよ』
断言した瞳は酷い恐怖に揺れていた。
そこは最早、生き物が生活する空間ではなかった。『究極の錬金術』というあやふやな概念に取り憑かれ、見上げる背中は人の形を失っていた。魔力と生命力を食い尽くされた死体は、骨と皮に成り果てて、人成らざる生き物が身動ぐ振動だけで崩れていく。とても悪い空気で、少しの物音をも響かせぬ為に水瓶に頭を突っ込んで咳をした。このままでは、自分も地面に転がるものと同じになる。父は過呼吸になりながら私に言う。
『逃げた。逃げて逃げて、この村に辿り着いた』
アーヴ。肩を掴んだ手がぎりぎりと食い込んで酷く痛んだが、父の血走った目が、口の端からこぼれ落ちる泡だった涎が恐ろしかった。はぁはぁと吹き付ける息から、血の香りがする。
『研究所には近づくな』
頷くまで手は緩まなかった。『分かった。近づかない』そう言うと、父は何事もなかった様子で笑って『さぁ、晩御飯の支度をしよう』と立ち上がったものだ。
父はその後、死ぬまでバルザックの話をすることはなかった。夢でも見たのかと思う程に、父は普段通りだった。確かに父はエテーネ村の外から来た余所者だったが、エテーネ村には十年に一度程度は迷い人がくるので珍しくはない。街へ嫁いだ者も、街から戻ってくる者もいる。悪さをしなければ問題視されないし、母と結婚し私という子を成して平凡な家庭を築いた。私が妻を迎え子供に恵まれても、父が語った神話の悪人の影は無かった。
ただ、父は錬金術の才能があった。
私も、息子のテンレスにも引き継がれている。
その才能がバルザックに因るものなら?
私は頭から音を立てて血が落ちていくのを感じていた。頭の中に氷が詰められたように冷え切り、心臓が弾けそうな程にがなりたてる。暗転した視界の中で、アバ様のぽっちゃりとした手が浮かんで私を指差した。
『お前達の息子は、いずれ恐ろしきものに成り果てる』
私達の旅の始まりのお言葉が、闇の中に反響した。
うおおお!書き上がった!!!!!
読んだ通り、私は割とこの話に出てくるバルザックが本人かと言うと、どうかなー?ってクチです。DQ10では過去作のボスクラスの魔物達が出てきて、それらは本物扱いです。しかしそれら本物は魔法の迷宮やイベントの特殊空間という、非常に限られた特殊な空間のみ存在しています。
しかし、このバルザックに限っては、アストルティアという通常空間に存在しています。ゆえに本人と扱うのが軽々しく判断できないのです。幻影か、バルザックを騙った狂人か、悩ましいところですね。
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