ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 アーヴさんが『お待たせ』と言いながら歩み寄ってきた。
「ここが父の言っていたバルザックの研究所のようだ」
 目的地だった安堵はなく、気分が悪いのを隠さない険しい顔だ。
 バルザック。四つ目の神話に登場する錬金術師は、死に至るまで悪逆非道の限りを尽くした。
 石を黄金に変えることから始まった錬金術はその解釈を広げ、不老不死や不治の病の根絶など人の想像するあらゆる欲望を具現化する術となった。バルザックは研究の過程に無辜の民の生命を浪費して、人の道を踏み外した。
 錬金術師は難解で、不可能に立ち向かう研究だ。運良く大きな成果や新しい発見がある場合もあるけれど、報われない事は普通にある。出口のない迷宮を彷徨うような、川の流れに逆らって泳ぐような研究者達は、誰もが一度は考えただろう。
 バルザックのように人の道を踏み外したら、成功するのでは、と。
 人の命は、魂は、巨大な結果を簡単に得られる素材だ。
 そんな誘惑に溺れた者の一人が、アーヴさんのお祖父様だった訳だ。禁忌の誘惑は神話を経て名前と人格を得てしまって、今では珍しい事じゃなくなっていた。
「同じ錬金術とは思えない、規模の大きな実験が繰り返されている。残留物も発生していて、地下に遺棄しているようだ」
 アーヴさんは険しい表情のまま、あたし達を見た。
「こんな恐ろしい実験をしたバルザックが、死んでいるとは考えにくい。気をつけて進もう」
 はい。緊張した面持ちで返事をしたルアム君の隣で、あたしも頷いた。
 研究所の奥へ進む程に、毒ガスのような刺激臭が強くなっていく。バギを制御して換気するけど、清浄な空気を取り込む侵入口が遠くなる程に時間が掛かるようになってきた。レミーラを消してバギの制御に集中する。どこをどう歩いて、どんな物があったか全然認識できない。時々、ルアム君が、手を引いてくれるのに従いながら先を進んだ。
「止まって」
 扉の前でルアム君が振り返った。カンテラを扉の横に置いて、張り付くように内部を探る。
「何かがいる気配がする」
 アーヴさんが両手杖を握り魔力を高め、ルアム君が矢を軽く手の甲に触れさせて弓聖の守り星の加護を掛け直す。魔物が出てきた場合は、ルアム君が前衛、アーヴさんが後方で攻撃呪文で援護。あたしは状況に応じて下がるように言われているけれど、二人が戦えるように照明と換気を続ける事になるだろう。
「目を閉じて口を覆ってて」
 言いながらあたしが扉の前に進み出ると、両脇に付いたルアム君とアーヴさんが腕を口に押し当てて身構える。二人が扉を開け放った瞬間、あたしは高らかに呪文を唱えた。
「バギマ!」
 部屋に堆積した塵にも有毒物質があるだろうから巻き上げたくはないんだけど、換気の時間を短縮する為には仕方がない。
 部屋の全ての塵や埃が掻き混ぜられて吸い出され、扉に立つあたし達に強い向かい風となって当たる。砂混じりの強風を真っ向から受けたと思えば、次の瞬間には追い風に押される。まるで竜巻の中にいるような風の流れ。あたしは風の制御を弱めると、両手を振り下ろして部屋全体にズッシードを施し舞い上がる埃や塵を地面に叩き落とした。
 最後の仕上げとレミーラを唱えれば、温かみのない白い光が空間を照らし出す。
『随分ト、生キノ良イ素材ダナ…』
 部屋の中にいた巨大な影が、ゆっくりとこちらを向いた。


親世代の探索で絶対立ち入らせない状況にしたから、ガス溜まり対策頑張ってます。

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