ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 ぴくりと、鰭のような耳が大きく動いた。風下に目を向けた時には、それは頭上を滑空する。
 黒々と頭上でとぐろを巻く分厚い雲の下を、真っ白い巨体が発光しながら横切っていく。
 ハヌマーン。奇襲を得意とする魔軍十二将の一人だ。
 竜の腹を見上げて半狂乱になる兵士達を、鋭い爪が振り下ろされて真綿を引き裂くように肉塊に変える。尾を振るえば幾人もの兵士達の上半身がかき消え、残された下半身から噴水のように血が迸る。それらを悠然と見下ろす獣の白金の毛皮には、一滴の返り血すらつかなかった。
 竜の翼を大きく広げ、獅子の顔が極限まで顎を開ける。
「耳を塞げ! 意識をしっかり持つんだ!」
 超音波と共に放たれたメダパニーマに、天も地も失われ視界が不快に歪む。意識が混濁して、込み上げる制御できない感情が剣を握ろうと手を動かそうとする。殺せ。殺せ。邪悪な囁きが己を追い詰めようと囁いてくるのを、俺は握りしめた短剣を手の甲に突き刺す事で掻き消した。
「ぐぅっ!」
 痛みが頭のてっぺんに突き抜けたが、その痛みが煩わしい声を吹き払った。
 超音波で脳髄を揺さぶられて込み上げたものを吐き出し、俺はさっと視線を走らせる。耳の良いウェディ族であるからか、昏倒し頭から倒れた友を横に見る。筋肉隆々の腕が斧を振り上げるのを見て、俺はオーガ族の足元にタックルして転倒させる。
「俺は敵ではない! しっかりしろ!」
 頭を打ち付けたのが幸いしたのか、うめき声を上げて殺意が消える。俺は軽いウェディ族の体をオーガ族の上に放り投げて、剣と大盾を構えて立ち上がった。
 地獄の釜の底の光景がそこにあった。
 混乱して刃を振り回す兵士に、成す術なく斬り殺され飛び散る血飛沫。混乱した兵士を取り押さえようと必死に呼ぶ叫びの横で、既に形を失った胸に何度も何度も槍を突き刺す苦しげな悲鳴。混乱から運良く逃れ、隊列から逃げ延びた者に待ち受けていたのはハヌマーンが敷いた伏兵だ。連携が取れず混乱から立ち直った人間は、自ら頭を魔物の口に差し入れるように首を噛みちぎられ喰われていく。
 統制は完全に崩壊し、混乱が支配する世界。
 最も強い音波が放たれたのは、隊長格の兵士がいた辺りか。入り乱れる黒い影の向こうは、混乱に赤く烟ってすら見える。
 このままでは、全滅しかねん…!
 俺は王より賜った剣を高々と振り上げた。双頭の鷲の紋章を鍔に刻みし、黒鉄の剣が雷光にぎらりと光る。
「正気を取り戻した者は、我が元へ集え!」

うおーー!グレイグさんふぁいとーーー!
結構、過去に触れた十二将もなかなかに陰惨っぷりを振り撒いているんですが、その中で残虐さが際立っているだろうハヌマーンさんチョイスです。奇襲で多くの数の兵士達を殺めた結果、グランゼドーラの戦力が削れたらしいんで死者の数がやばそうです。

拍手に感謝!夜勤独り立ちとなって、ひいこら言ってるので身に染みます!ありがとうござます!

 兵士達の重い足取りが、グランゼドーラ王国の疲弊を物語っていた。
 鎧は埃と泥に塗れ、赤黒い血の跡が拭われず、陥没がそのままの兜を被っている者も見受けられる。流石に割れたままの鎧兜を装着している者はいなかったが、兵士達の顔にべっとりと絶望の色が張り付いて幽鬼の葬列か何かと思うだろう。
 兵士の隊列の重要部からやや外れた位置に、俺を含む義勇軍が疎に配置されている。とはいえ、レンダーシア全土に戦域を広げる魔王軍相手に義勇軍を出せる地域などなく、その多くがレンダーシアの外の5大陸からやってきた他種族の傭兵達だ。俺の隣では魚の鰭のような耳を生やした長身痩身のウェディ族の若者が、短い角を生やし赤岩のような肌質の強靭な体格のオーガ族の戦士と楽しげに語らっている。王国存亡の危機に直面している人族に比べれば他人事で楽観的ではあるが、この陰鬱とした戦場において彼らの明るさは松明の灯火のように尊い。
「話の途中ですまんが、風下に注意を払ってほしい」
 ウェディ族は人族にはない青や緑掛かった肌色だが、顔の造形は良く整っている。ホメロスに似た目元を細め、親指と人差し指をくっつけて丸を作り『オッケー』と美しい声色が応える。
 聴覚が優れたウェディ族が、吹き荒ぶ潮風の合間の敵の音を拾おうと耳を澄ます。
「グレイグ殿。そろそろだと思うか?」
 人の良さそうな顔を引き締めたオーガ族に、俺は頷いてみせる。
 グランゼドーラ王国は、不死の魔王が率いる魔王軍と熾烈を極める戦いを繰り広げている。王国の南東海上に突如現れた魔王軍は宣戦を布告し戦争を仕掛け、勇者であるグランゼドーラ王国のアルヴァン王子を大将に徹底抗戦していた。勇者が大魔王を撃退した事は幾度かあり、人々は今回も勇者アルヴァンが不死の魔王を倒してくれるだろうと消えぬ希望を胸に抱いている。
 だが、目の前で魔王の軍勢と戦う者達にとっては、蝋燭の火よりも頼りないだろう。
 不死の魔王が率いる十二の将は、それぞれに魔王から不死の力を与えられているという。
 先の戦場で討伐した将が、次の戦場で復活して猛威を振るう。同じ種族の似たような個体かと思えば、先の戦場での記憶がしっかりと残っているらしい。念入りに死体を燃やし、海に灰を撒き、封印を施す等、考えられる手立てを講じたが不死身の軍団を崩す一手にはなり得なかった。
 倒れぬ敵に挑み続ければ、疲弊するのは人間側だ。
 これに追い討ちを掛けるのは、魔王軍の士気の高さだ。不死の魔王の威光が十二の将を従わせ、戦慣れした一騎当千の将の下で魔物達は力を存分に発揮する。
 将を退けられる勇者アルヴァンや盟友カミルといった戦士達が駆けつけらるまで、防戦どころか押し切られかねない人間は崖っぷちに立たされていると言って良い。死地に向かわされる兵士達の表情は、死の恐怖と生き残っても次の戦場に向かわされる絶望で真っ暗だった。
 俺が指揮する軍では、こうならないようにしよう。
 胸の中に渦巻く疎外感と無力感を、唾と共に胃に流し込んだ。

過去のグランゼドーラ編開始です!
今回の視点はどこぞの王国で指揮するような、お偉い立場だったグレイグさんですよー!
まぁ、グレイグさんはさておいて、こう情勢を全く知らない人が把握する戦況だと新鮮味があって良いですね。今まででも先代勇者の話の折に触れられて、もう煮出し尽くされただろうって内容ですが、だからこそ変わった切り口でぶっこんでいくんですよぉ!!!!!!
一応、ゲームでは外の大陸の傭兵って話はなかったんですが、勇者アルヴァンの時代にオルセコと交流もあった事だし物好きだったり正義感のあるやつが乗り込んでそうです。戦線がレンダーシア全土に及んでいるので、人員が枯渇してるのでこの手段はアリだと思ってます。

 お
「おみこし わっしょい?」
 目をまんまるくして凍りつく僕の袖を引いたのは、兄さんだった。生クリームをぺたぺたつけた頬をぺろりと舐めて、楽しげに笑う。
「エルトナのお祭りだよ。神様が地上に降りて過ごすちっちゃいお屋敷を、エルフ達が力を合わせて担いで練り歩いたの見ただろー? カミハルムイなんて物見櫓みたいな、でっかい神輿を引き回して迫力満点だぜ!」
 そういえば、見た。
 エンジュさんのお誘いで、皆でツスクルのお祭りに行ったんだよな。深い森の闇の中に、竹で組んで紙を張った筒状の物の中に蝋燭を入れて灯す提灯ってものが、たくさん吊り下げられて幻想的な空間。生まれたばかりの世界樹の精霊と、村で選ばれた幼子がヒメア様が祝福した世界樹の若木を持って座る。その空間は納屋くらいありそうな立派な社だ。柱も梁も瓦屋根まで、美しい木目で選ばれた一級品。職人が施した世界樹の枝葉を再現した細工は本物のようで、様々な花や果物で飾り立てられていた。大勢で声を合わせ汗を迸らせ、時々、沿道のご隠居に水をぶっかけられながらツスクルの村を練り歩いていたっけ。
 一人では不可能な事も、皆で力を合わせれば可能になる。だからお神輿なのか。
 …やっぱりロトさんの例え、難しくない?
「カンダタが集めてきた話だと、禁術を使った勇者様って即死しなかったんだよね。つまり魂を消費して禁術を発動させたんじゃなくて、魂を媒介に禁術の力を行使したんじゃないかなって思うの。最終的に禁術を媒介して、魂が修復不能なほど傷ついちゃうから『魂が対価になる』って話になってるんだと思う」
 言われてみればピぺちゃんが伝え継いだ内容では、勇者アルヴァンは当時聖域とされた王家の墓に自身を封印する余裕があった。死ぬタイミング一つでそこまでわかってしまうだなんて、詳しい人は目の付け所が違うんだな。
「みんなでわっしょいしたら、みんな痛くなっちゃうんじゃねーの?」
 兄さんが首を傾げると、ロトさんも一緒に首を傾げる。
「媒介する魂の数を増やして負担を分散させれば、それぞれの魂の自己回復力の範囲内で収められると思う。そうなれば、誰も死なずに済むと思うんだよねー」
 これはたった今、ロトさんが考えた確証のない想像なのはわかっていた。実際にその方法で不死の異形獣を倒せるかなんて分からないし、誰も死なないなんて断言できない。
 それでも、誰も死なない方法を考えているのは彼女だけだ。
 アンルシア姫も、ピぺちゃんも、ラチックさんも、王様や王妃様、兵士の皆も、僕達でさえ、誰かが死ななければ倒せないと思っている。その誰かに自分がなろうと思っても、心の恐怖で言葉にならず手も挙がらない。己の臆病に憤り、誰かが名乗り出ないかと周囲を伺う空気。誰かが名乗り上げたら感謝をしながらも、殺してしまったような罪悪感を抱いて生きていかなければならない。
 この光に手を伸ばさなければならないと、僕はロトさんの名前を呼んだ。
「アンルシア姫に会っていただけませんか?」
 青い目が何回かぱちぱちと瞬いた後、ぱぁっと顔が輝いた。憧れの勇者様一行にお会いできるって、感激しているんだな。今話した打開策を提案したら、世界の命運を背負わされるって言うのに、遊びに行くようにしか見えない。
「アストルティアの勇者様に? すごーい! うれしーい!」
 いやー。分かってるのかなぁー。
 カンダタさんに目配せすると、苦笑いを浮かべながら首を小さく竦めてみせた。
「じゃあ、ルアムくん!」
 満面の笑みを見ていると、この困難を乗り越えられると思えてくる。冷え切った僕の手を掴んだ手は、柔らかくて温かくて力強い。相棒。顔赤いぞって、兄さん余計なことは言わないでほしい。
「お神輿、ちゃんと用意してきてね!」
 僕と兄さんは顔を見合わせて、一つ噴き出したら笑うのが止まらない。
 禁術をお神輿なんて言う人は、世界広しといえど貴女くらいだと思いますよ。

固まりました対応策!
現代のグランゼドーラは、とりあえず一区切りです!

 ロトさんが左手を顎に添えると、手の甲にレナートさんと同じ紋章が見えた。白いぽっちゃりとした手にうっすらと赤く付いているのは、錨のようなつるはしのような不思議な紋章だ。何の意味がある紋章なんですか?ってロトさんに聞いたら、良く分からないって言ってたっけ。
 しげしげと見ている間、ロトさんは考えながら喋り出す。
「理屈上はそうなるね。蘇生を妨害するだけなら、ザオ系の生命流動を阻害すればいいから魂までの対価は要らなくなると思うよ」
 だがよ。口を挟んだカンダタさんは、珈琲のカップを置いて身を乗り出す。
「城で聞いた話じゃ、不死の理屈はザオ系じゃねぇらしいぞ。魂を命の石みたいに使ってるらしいぜ」
 厳戒態勢のグランゼドーラ城に、どうやって忍び込んだんだろう。
 でも、異形獣や繭の脅威に身構えてるんであって、人間に対しては警戒が緩んでいるのかもしれない。城下の人々は避難しているから、情報が漏れる心配もないと箝口令を敷いていないのかもしれない。
 命の石と聞いて、兄さんがお腹からエンゼルランプの硝子瓶を取り出した。エテーネ王国に行った時大きくひび割れたロトさんの作ってくれた石は、帰ってきた時に器の中で真っ二つになった。この石が砂になるまで兄さんを守ってくれるそうだけれど、時空転移をしなければ良い話だ。今回任される千年前の禁術の捜索も、回避できるならしたい。
「身代わりかぁ」
 ロトさんが天井を仰ぐ。
「相手が保管して身代わりにできる魂の数を上回れば、死ぬのかなぁ。それとも、保管してる魂を昇天させて手元から無くすか…」
「昇天はお勧めしません」
 ロトさんの後ろから、アインツがお茶のおかわりを持ってきた。コンシェルジュ達が着る服と同じ型の服を水色で染め、胸元のスカーフが柔らかいオレンジ色だ。湯気のたつ紅茶を注いでロトさんの前にカップを音も立てずに置くと、空いたお皿を小さな指先が掬い上げてお盆にひらりと乗せていく。小さく会釈した黒髪の向こうで、碧の瞳が瞬いた。
「魂は大変繊細ですので、無理をすれば壊れてしまいます」
 むずかしいなぁー。ロトさんの白い喉元から声が漏れる。
 賢者様達が封印しか選択できなかったのを思えば、こんな宿屋のお茶会で解決策が浮かぶ訳がないんだ。やっぱり、誰かが死ななきゃいけないのか…。そんな言葉が零れてしまう。
 まって。ロトさんの手が天井に伸ばされる。
「もうちょっと、考える」
 体を起こして、腰に吊るした使い込んだ本を取り出す。革張りの本の中に、隅が焼けたクリーム色の紙が分厚い頁を構築して、濃厚なインクの匂いに微かに潮の香りがした。全ての頁にはぎっしりと文字が書き込まれていて、印刷とは違う独特の癖に手で書き起こされたのだと分かる。
 見ていてどきどきする。
 プクレット村で初めて海を見た時を思い出した。森と平原と山に囲まれた村しか知らなかった僕に、シンイさんが歌うように教えてくれた塩っ辛いどこまでも続く水溜まり。ざざんざざんと寄せては返す波の彼方まで、まるで水鏡のように真っ平な水平線。星空と海が重なり合う場所から白が夜空に広がっていく。広がって広がって、赤い太陽が昇ってくる。
 村の皆が死んだのに、恐ろしい冥王に殺されそうになったのに、テンレス兄さんがどこかへ消えてしまったのに、僕はこれからどうすれば良いんだろうと途方にくれていたのに、僕を貫く朝焼けに全て掻き消されていた。
 綺麗で、大きくて、すごかった。そんな海の記憶が呼び起こされる。
 よし。ロトさんの声が、本を閉じるように記憶を遮る。
「みんなで、お神輿わっしょいしよう!」

ザオトーンな話。
そして皆さんご覧ください。これが伝説の勇者と同じ名前の人物のキャラクターですよ。どんな鬱展開もダイタ●ンクラッシュする勢いです。かつての自分はよくこんなキャラ作ったなって感心するレベルで、語彙が酷い。

 今、宿屋にいる宿泊客が全員集まったからか、アインツがひょっこり出てきてお茶を用意してくれた。気持ち大きくカットされたチーズケーキが並べられ、テーブルの中央には宝石のような大きな果物がゴロゴロ入ったジャムや、生クリームを盛った器が置かれていく。ここぞとばかりに全部乗せのロトさんと兄さんのお皿の上は、ケーキの上を覆った生クリームの上を食欲が失せる絶妙加減で色とりどりのジャムが這っている。
 スパイスは何に使うんだろうと思ったら、カンダタさんがスパイスを掛けてロトさんにメラで炙らせて香ばしい香りを放つ。
『こんな美味しいチョコレートムースを独り占めだなんて最高キュ! この時間を無限に味わう為に時間を歪曲させてループ状にしたいくらいキュ!』
「いいなー。自分より大きい甘いもの食べるって、全プクリポの夢なんだよなー」
 兄さんが羨ましそうに、ツヤツヤのチョコソースを掛けてナッツを乗せたチョコムースに目を向ける。『キュルー!』と喜びの声を上げているキュルルが、生クリームとブルーベリーソースでムースを飾っている。甘味お化けを見た後だと、とても美味しそうだ。
 で! ロトさんが紅茶をごくんと飲み込んで、声を上げた。
「人が死んじゃうってヤバくない? なんで死んじゃうの?」
 なんでと言われましても…。
 基本的に魔術は使用者の魔力を対価に支払って発動するものだそうだ。呪文を唱えた人が死ぬ事は、稀にある。ナドラガンドの嵐の領界でエンジュさんが魔力を使い込んだ時、イサークさんが適切な処置を行えなかったら命に関わったそうだ。魔力を対価に支払う場合は、発動を維持し続けられるよう力を制限したり、疲れたら休んだり、使用者本人の裁量で量が設定できる。
 しかし、魂を対価に用いる術は全く違う。
「どんな力も封印しちゃうからじゃないですか?」
 魂を対価に使ったら、もう、その魂は戻ってこない。薪を火に焚べる感じなのだろう。
 そして魂を対価に用いるほどの効果が、禁術によってもたらされる。今回は不死の力を含め、あらゆる力を封印するという効果を発動させる為に魂を対価にするのだ。
 ロトさんは大きな膨らみの上に腕を乗せるように組んで、ふっくりと頬を膨らませた。
「そんなざっくり広範囲の効果に設定しちゃうから、対価が大きくなっちゃうんだよ。お水飲みたいなーって思ったら、風呂桶いっぱいにお水要らないでしょ? コップ一杯で十分じゃん」
「確かに、風呂桶いっぱいは要らねーな」
 んん。ロトさんの説明で兄さんが納得してる。難しいなって思うの、僕だけなのかな。
 魂使えば簡単に強い術生み出せるからって、難しい構成すっ飛ばすなんて怠慢だよねー。ロトさんがソファーの上でゆらゆらと体を揺らすと、剛毛の黒髪がもさもさと動いた。
「きちんと対象を絞ってきっちり術式を組めば、簡単でお手軽なものに出来るんだよ。声を封じるマホトーンなんか、難しい呪文じゃないでしょ?」
 僕も獲物が仲間を呼ばないよう唱えるくらい、マホトーンはお手軽な呪文だ。そんな簡単な封印も対象になるなら、魂が対価なんて高すぎる。
 術を小さく。そんな概念が暗闇の中で灯る。
「つまり『不死の力を封印する』に限定したら、魂を使うまでもない術になるんですか?」

稲野は隙在らば飯テロを流し込みます。
ただなー、飾り付けのセンスはない人だから美味しさがなぁー。
ちなみに自分で自分の食べ物盛り付けセンスはイサーク(シェフとしてのプライド輝く仕上がり)>ピぺ(食べるのは好きではないが、盛り付けは好き)>エテーネルアム(料理上手なので盛り付けも上手)>>(ここから普通に盛り付けるだけのレベル)>>エンジュ(少食で大きい隙間が良く言って空間の美)>ガノ(あまり見た目は気にしないが、ドワーフの器用さのお陰で綺麗)・ラチック(ピぺにはご飯を食べてもらいたい)>(ここからは綺麗じゃない)>ルミラ・プクリポルアム(食べれりゃいいじゃん?)

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