ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 すり鉢のようになだらかな斜面には、身を隠せるような植物や岩はない。所々に垂直に聳り立つ巨岩が点在しているが、ぐるっと回り込むだけで小一時間必要な大きさと、命綱無しで登るのは命知らずと揶揄される高さを誇る。その巨岩の中には風が生み出した小さい隙間や、地震による亀裂が生じており、そのうち一つがレギオンという目標の拠点であるらしい。
 滅多に雨の降らぬ乾燥した岩と砂だけのオルセコに、繭の影響で乱れた天候が霧雨を注ぐ。頬を伝った雨を拭うと砂がじゃりっとこびり付いた。視線を落とせば、亀裂に吸い込まれる轍や足跡は比較的新しいように見える。
「このままじゃ、俺達は殺されちまうよ!」
 洞窟の中から悲鳴に似た声が迸った。
 ちらりと背後を見遣り、ルミラが頷いたのを確認して奥へ進む。こんな辺鄙な場所には誰も来ないと、見張りも立たず声を憚る様子もない。揉める声色の数から複数の男が中に居るようだ。
 薄明るい外から中にするりと入り込めば、焚き火を絶やしていないのか煤の匂いと熱気が濡れた顔を撫でる。洞窟の端には木箱や食料が入った布袋が積み上げられ、魔物を解体して食らっているのか物陰に骨が見える。木箱には片手剣や斧が立て掛けられているが、お世辞にも手入れが行き届いたものではない盗品と分かる。
「ガートランドの精鋭を、二人も殺しちまったんだぞ! 騎士団は本気で俺達を殺そうとしてくる! 違うのは騎士団に殺されるか、レギオンさんに殺されるかだ…!」
 商人が強盗に見舞われ殺害された凶悪事件であっても、まずは冒険者などに依頼を出し対応するものだ。ガートランド騎士団が直接乗り込んでくるあたり、この連中は多くの罪を重ねているようだ。
 物陰から見る盗賊の数は三人。平均的な体格のオーガ族の男性で、この暗がりでは年齢までは読みきれない。旅人と言うには薄汚い布の服の上に、戦いの凹みや傷を直していない痛みの激しい鎧を着込んでいる。三人の顔はべったりと絶望に塗れていて、飛び降りれば助かるぞと唆せば崖を飛び降りそうなくらい追い詰められていた。
「第一、俺達が騎士を殺したんじゃないんだぞ!」
 絶叫した金切り声の男に、蚤が付いてそうなボサボサ頭が諦観した表情を向ける。
「レギオンさんが殺したって言って、騎士団が信じてくれると本気で思ってんのか?」
 三人で襲い掛かれば、ガートランドの精鋭たる騎士を一人は屠れそうだ。レギオンというのが殺害の実行者だとしても、騎士団は彼らの言葉を信用しないだろう。彼らとレギオンが仲間である限り、彼らも同罪だ。
 こんな大声で騒いでいるのだ。この場にはレギオンは居ないのだろう。
 しかし、この場から逃げ出さないところを見るに、隠れる場所のないオルセコの地ではレギオンに発見され殺されるのが彼らの中では確定事項らしい。騎士殺しを成し遂げたのがレギオンなら、最も警戒しなければならぬのはその男だ。
 とんとん。見張りに立っていたルミラが二の腕を軽く叩くと、囁く声が耳の裏をなぞる。
「誰かが向かってきている」
 噂をすればなんとやら、か。

戦士クエスト編をさらに掻い摘んでお送りしております。
三人組の名前は十年前でも使ってなかったので、最後まで明らかにならない不憫な連中です。

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