ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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空が白じむ頃、辺境警備隊詰所の被害が明らかになった。
ディークを含む五人の隊員が、黒い獣に襲われて意識不明に陥っている。脈も正常で命に別状はないが意識が戻らない状態で、馬車の手配が済み次第、王都へ移送される事になった。
本部二階の執務室に残された遺骸は、王都の軍部より鑑識を要請するとの事。軍部より返事が来るまで獣の遺骸はそのままの状態で置かれる為、ラゴウ隊長が顔を真っ赤にして癇癪を起こした。『軍は貴重なサンプルを重要視するでしょう』と副隊長が取り成すまで、子供のように駄々を捏ねていた。
ラゴウ隊長は無事だったサイドテーブルの上で報告書を認めながら、目の前に転がる遺骸を見下ろしていた。うーむ。随分と深刻そうな顔で顎を撫でる。
「エテーネ王国では見た事のない魔物だ。呼び名がなければ、報告書が書けぬな…」
手に持った角を矯めつ眇めつ眺める隊長を見遣りながら、僕はローベルさんに囁いた。
「なぜ、今回の襲撃が『時の指針書』に書かれていなかったのでしょう?」
『こんな事が起きるだなんて、指針書に書かれていない!』そんな声を襲撃の合間に何度も聞いた。戦闘を行い汚れる事もあると携帯していないローベルさんだが、隊員の多くがこの指針書を持ち歩いている。専用のブックポーチはいつでも指針書を取り出し読めるように工夫が凝らされた品で、隊員達は暇さえあれば指針書を読んでいた。
起こり得る未来が書かれた指針書。未来に備える利点が、どうして今回に限って発動しなかったのか。特に今回の襲撃で異常な状態に陥ったディーク達の指針書に、何も書かれていないのはおかしい。
わからん。ローベルさんのきつく結った頭髪が、左右に振れる。
「『時の指針書』は所有者が死亡する少し前から、更新が止まる。もしかしたら、今回の襲撃で負傷した者は全員死んでしまうのかもしれん」
悔しさに沈んだ声に、僕も歯噛みする。
正直、魔物の棲家と隣接する辺境警備隊詰所の体制は薄いと思っていた。確かに辺境を訪れるのは素材となる植物や鉱物を採取する商人達で、それらを護衛する役目なら人員を多く割く必要はないだろう。今回のような襲撃が『時の指針書』で先読みできるなら、必要な時だけ人員を増やす事ができる。未来が見えない僕からしたら傲慢な人事が、この国にはあった。
しかし、その根拠である『時の指針書』のお告げが意味を成さないなら、増員を王国に申し立てるべきだ。ただ『時の指針書』を盲信していると言って良いこの国の人間が、それを受け入れるのだろうか?
でも、それは部外者である僕が言うべき事ではない。
「しかし、なぜ、レナート殿は無事だったのだろう?」
顎に手を当てて考えている横顔から視線を足元に向けると、足に背中を預けて座っているクルッチが顔を上げた。僕の無言の問いかけに、クルッチはぴょこんと立ち上がった。
『あの魔物は時の力を奪おうとしたッチ』
すかさず問題提起するぞ!
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