ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
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セーニャが両手杖を構えて、僕達の前に躍り出る。入り口を警備していた兵士を薙ぎ倒した黒い影に向かって、一息でひと抱えもある火球を生み出し熱風を撒き散らしながら解き放つ。
黒い影は火球を突き破りながら突撃して来たの影は、真っ黒い皮膚をしたオーガだ。焼け爛れた顔に爛々と双眸が光り、口からはだらしなく唾液が垂れ流されて顎を伝っている。筋肉は二回りほど膨れ上がり、筋肉隆々なオーガ族というよりも、シールドオーガのような屈強な魔物に近い姿に成り果てていた。
オーグリード大陸では正気を失い、獣のように凶暴化したオーガ族を鬼人と呼んでいた。
鬼人となるものは、昔から一定数存在はした。
しかし近年ではゾンガロンという危険な存在が、集落や王国を襲って多くのオーガ族を何らかの力で鬼人化させていた。鬼人化した集団は野火のように周辺諸国に侵略し、制圧した地域の民を老若男女問わず皆殺しにするという。
「いらっしゃい、鬼人ちゃん! アタシがアナタを受け止めてあげるわ!」
どこかに立てかけてあった大盾を失敬したシルビアが、突撃する鬼人に立ちはだかる。腰を低く落とし、足を前後に開き、大盾を鬼人に向ける。鬼人は大きく両手を振り上げ、大盾を掴むように突進した。がぁん! 大岩を破るような大きな衝突音が、オルセコを突き抜けた。
シルビアらしからぬ野太い声を漏らしながら、堪える足が大きく後ろへ押し出される。それでも、盾は弾き飛ばされず、シルビアの足は折れる事はない。シルビアに受け止められた鬼人の動きは、明らかに鈍くなった。
シルビアの脇から飛び出した僕は、渾身の力を込めて鬼人の背に大剣を落とした。ばきりと背骨が折れる音が響き、万歳するような姿勢で胸から床に叩きつけられる。背に食い込んだ刃は肺や心臓を潰し、鬼人の体の下から赤い血がどくどくと流れ出ていた。
鬼人の頭が上がり、口がぽっかりと開く。
『召しませ! ゾンガロン様!』
そう叫んだ鬼人の首に斧が振り落とされ、黒い首が宙を舞った。ぎょっとして視線を上げれば、先程まで闘技場の舞台の上に立っていたギルガラン王子が立っている。重量のある斧を担いで、この瞬く間に3階相当はあるだろう正門まで上がって来たのだ。人間よりも優っているオーガ族の力を突きつけられ、驚きと悔しさがない混ぜになった気持ちが胸いっぱいに広がる。
「異邦人に打ち取られた分際で、宣戦布告とは舐めた真似をしてくれる」
ギルガラン王子は鬼人の死骸の腹を蹴って仰向けにする。上半身裸だが、下半身はベルトと毛皮を巻き付けている。ベルトに刻まれた紋章を眺め『ドランドか』と呟くと、鋭く斧を振って鬼人の血を飛ばす。
「グリエ」
駆けつけて息が上がっている弟に、兄は背を向けた。
「俺が戻るまで、ここを任せる」
兄さん、一人では…。喘ぐようなグリエ様を、ギルガラン王子は振り返ったりしない。
斧を担ぎ一人戦地へ向かう背は、あっという間に外の光に呑まれてしまった。
はぁあああああい!前編終了!!!!!
