ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 自分には錬金術などという、難しい事は分からぬ。
 回復呪文を掛ければ昏睡に至るまで消耗しそうな大怪我も、ゼフの調合した薬品を掛ければ見る見る肉が盛り上がり塞がったものだ。ゼフは神の奇跡のような業を『貴方のような体力お化けだから可能なのです』と言っていた。
 そんな自分は主の従者として、王立アルケミアに何度か足を運んだ事がある。我が主も錬金術は詳しくはなく、これで民の生活がより豊かになる事に感動するばかり。ご婚約が決まってからは同行されるマローネ様の方が真剣に耳を傾けて、王国の招待で訪れたリンジャーラ殿は研究者達と時間いっぱいまで難しい論議を交わしておられたものだ。
 難しい文字。使えぬ魔法。不器用な自分には薬草を調合する事も難しい。
 それでも、そこには良き思い出が多くあった。
 このエテーネ王国の発展の為に心血を注ぐ研究者達の熱意は、剣しか知らぬも主を守るべき己の決意に似たものを感じた。主を奥方を友人の喜びは、このファラスの喜びでもある。
 錬金術はよく分からぬ。それでも、素晴らしきものであると理解できれば十分であった。
 それが、このような事に使われようとは…。
 王立アルケミアの所長ヨンゲが目指していた先進研究区画は、足元が照らされるだけで暗い。等間隔に培養液に満たされた硝子の柱が立ち、ぶくぶくと気泡が沸き立つ液体の中には製造中の魔法生物が浮かんでいる。魔法生物に過剰な刺激がいかぬよう、あえて照明を落としているのだろう。硝子の柱の土台には錬金術を制御する為の装置が付いており、そこから大蛇の太さの管が床を這って覆っている。管を踏まぬよう、人が歩く場所は網状の金属の板が渡されていた。空間は清潔を保っていたが、蠱毒の壺の底のような不気味な光景が浮き上がっている。
 自分の前に二人のルアム達が足を止め、硝子の柱の中に浮かぶものを見上げていた。
 なぁ、なぁ、相棒。プクリポが少年の毛皮のコートの裾を引く。
「これって、いぎょーじゅーだよな?」
 絶句しているのは、何も少年だけではない。自分も言葉を失っていた。
 硝子の柱に満たされた培養液に浮かんでいるのは、長い尻尾を胸に抱くように寄せて胎児のように体を丸める生き物。冷たい色の光源に黒い金属めいた質感の表皮は白く照り、相対した時は血を塗り固めたような真紅の玉は暗く沈んでいる。どこからどう見ても、この王立アルケミアの研究者達を屠った異形獣であった。
 驚きはなかった。予感が的中したと思うくらいだ。
 主を守る為に剣の腕を磨く為、自分はエテーネ王国の全ての魔物と戦った。主の行先には全て付き従った故に、このレンダーシアの主要な地域の魔物達も把握している。それ故にこの異形獣がエテーネ王国には存在せず、どの魔物にも属さぬと断言できた。
 魔物でないなら、異形獣とは何か? その答えが目の前にあった。
「え? え? ここって、エテーネ王国お抱えの建物なんだろう? どーして、いぎょーじゅーがいるんだ?」
 早口で捲し立てる声が、混乱しているのを物語る。
 そう、ここは王立アルケミア。エテーネ王国が設立し運営する、王国直轄の研究施設だ。この研究施設で行われる研究の全てが王国へ公開され、民も申請すれば研究内容を閲覧できる。例え、所長のヨンゲが隠蔽しようとしても、研究所の全てに実施される監査から逃れる事はできない。しかもこれほど大規模に異形獣製造を実施して、隠し通せる訳がない。
 しかし、異形獣の製造は秘密裏に行われ、実際に軍部でも把握できていない。
 誰が異形獣を隠したか。
 目の前に答えがあっても、信じたくはなかった。

後半はファラスさん視点で、答え合わせです。
ゲームではもっと後になって、別の理由で来るのですが、まぁ、この段階で判明しても問題ないでしょうってところです。4.1は謎に対して甘めでありまして、クオードの疑惑も魔法生物事件くらいで確信に変わってるので、倣ってこの段階から疑惑を確定していきます。

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