ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 まさか、僕達を殺す為にわざわざ来たのか?
 どうして? 身に覚えのない殺意の懐かしさに、胃の下がぎゅうっと痛んだ。
 僕達もルアム君達も、この国に偶然立ち寄った旅人だ。この国がどんなに荒んで滅びの道を歩もうと、国外追放にされれば二度と立ち入る事はないくらい思い入れはない。王国で関わり信頼を得た人達が僕達が処刑される事で抱く反感は、簡単に王国が握りつぶせる。しかし国外追放なら、旅立ち別れる日が早まる程度で反感すら感じないだろう。
 それ程までに『黄金刑』の復活は魅力的なのだろうか?
 だとしても、国王が危険な場所いわざわざ足を運んで、逃げる僕達を殺そうと深追いしている。なぜ、この王は、こうまでして僕達を殺そうとするのだろう? 考えれば考える程に理解できない殺意を、心底不気味に感じた過去はもう懐かしく思うほど昔の事だ。
 僕は悟った。ルアム君達はこの国の未来に大きく関わる。彼らを守る事は、きっとこのアストルティアの未来を守る事に繋がるのだろう…と。
 あの世界が崩壊し多くの人が死んだ大災害。あの時に感じた絶望を、背負わされる重責を、この幼さの残る子供に強いちゃいけない。僕はルアム君達の前に立ちはだかり、王に剣を向けた。
「逃さぬぞ! 国王直々に裁きを下してくれよう!」
 毅然とした声が煙を吹き払うように響き渡った。
 いや、頬に真っ直ぐと落ちていた髪が、さわさわと頬を撫でる。無風の為に立ち込めていた煙が、ゆっくりと動いているようだ。
 歩み寄ってくるドミネウス王を前に、普段は物怖じしない猫耳君が後退りした。耳を前にペッタリと折り、顔に露骨なまでの不快感を張り付かせる。ぎゅっと噤んだ口を薄く緩めると、呻くように言葉が漏れる。
「なんだ、この王様…。人間じゃねーのか?」
 目を凝らし王に意識を集中すると、微かに布だけのローブを着た人間から発する筈がない音が聞こえてきた。がちゃり、がちゃり。きり、きり。きっ。引き攣る音がひとつして、王が軽く膝を曲げた。
「え?」
 反射で動いた剣と錫杖が鍔競り合う。吐息が掛かる程近くに、ドミネウス王の顔があった。
 何があった? 僕は錫杖に押し潰されないよう、渾身の力を込める。
 飛び込む予備動作もなく、一瞬にして踏み込まれた。例え軽く曲げた膝と足首の力で踏み込んだとしても、あんな巨体がこんなに素早く、間合いの外から飛び込むなんて無理な話だ。そして口の中に鉄の味がしそうなくらい強烈な金属臭。もしかして、これってドミネウス王の口臭なのか?
 がちんと剣越しに鈍い衝撃が伝わると、相手の膂力が増す。このままでは押し潰されると、僕は咄嗟に錫杖を受け流した。勢いよく地面を打ちつけた錫杖が、磨かれたタイルを粉砕し破片が飛び散る。
 飛び退って間合いを開けると、一瞬の鍔競合いであったにもかかわらず全身がびしょ濡れなほどに汗が吹き出していた。顎をから滴る汗を拳で拭うと、王から視線を外さずに仲間に言う。
「強敵だ。早く対策を立てないと全滅するぞ」
「でも、王様殺しちゃったらヤバいんじゃねーの?」
 あぁ。その通りだ。僕は相槌を打ちながら、周囲に素早く視線を走らせた。煙幕は全て吹き払われ、逃げ惑っていた人々が足を止めてこちらを見ている。
 王を追ってきた近衛兵が避難を促しているが、王が直々に罪人を処刑する様子に人々は目を輝かせていた。ドミネウス王を応援する声が一つ上がれば、この場は黄金煮え沸る釜の前と変わらぬ空間に変えられてしまう。王の名を叫ぶ声が、正義の執行を称える声が、そして僕達の死を望む声が押しかかる。
 周囲の異様な熱狂に、猫耳君が途中で助けてきた女の子が母親の腕の中で大泣きした。何かを訴えているが、その声は僕達の死を望む声に掻き消されてしまう。
「エテーネ王国の民の前で王殺しになれば、冤罪だったはずの国家反逆罪が本当の事になってしまう。例え、目の前の王が人間でないと、僕達が気がついていたとしても、だ」
「どーすればいいんだ?」
 完全に周囲は観客に囲まれているし、転送の門を封鎖されてしまえば逃げ道はない。このままドミネウス王と交戦を続けている限りは、民の避難が優先されて封鎖はされないだろう。
 メレアーデ様やクオード様は人間なのだから、その親であるドミネウス王も当然人間だろう。だが、目の前の王が人間でないのを、僕は一撃を交えて体感した。つまり、影武者か何かなのだ。
 ルアム君が夕暮れと夜の合間の瞳を、ゆっくりと王へ向けた。
「目の前の敵の正体を暴きましょう」

まぁ、ゲームだと足止め的にディアンジが火の壁作るんですが、流石に混乱の最中に軽率では?とか思ったので、正体を暴くのもこっちでやります。

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