ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 リリトト湖から突き出た岩に蔦を這わすが如く家を作るリト族の集落は、他の種族に比べればずいぶんとこじんまりしている。朝賑やかに階段を昇り降りしていた子供達は、リリトト湖を超えて兄弟岩で遊ぶ。里の大人達はかつて子供だった自分達がそうしてくれたように、兄弟岩で遊ぶ子供達の事をそれとなく見守ってきた。
 リーバルも例外ではなく、飛行訓練場から里に直帰するのではなく兄弟岩を経由して戻るよう心がけている。今日もふくふくした羽毛で膨らんだ雛鳥達が、空を滑空するリーバルに向かって手を振っている。そのうちの一羽が地面にぺったりと座り込んでいるのを見て、リーバルは翼を傾けて高度を落とす。やはり座り込んだままの雛を認め、柔らかい草が旋風に撫でられる中心にふわりと降り立った。
「リーバルお兄ちゃん!」
 まだ餌を強請る甲高い声の雛鳥達が、わっとリーバルに駆け寄る。リーバルは里一番の狩人ではあるが、里のリト族の中ではかなり若い方である。雛鳥達にとってリーバルは凄いけれど、『大人』ではなく『お兄ちゃん』なのであった。
 ぴよぴよ! 群がる雛鳥達を大きな翼で撫でてやりながら、リーバルは座り込んだ雛鳥の前で膝を折った。雛鳥特有の大きな瞳がうるっと涙ぐんでいるものだから、リーバルは怪我がない事を素早く確認して生成り色のマフラーでその涙を拭ってやった。
「どうしたんだい? お腹でも痛いのかい?」
 ぶんぶんと大きな頭が振られると『疲れて動けないってところかな?』とリーバルは思った。雛鳥達が遊び疲れてリリトト湖を超えられないなんて、よくある事である。親が夕食の時間になっても戻ってこなければ、迎えにいって抱えて飛んで帰ってくる事は日常茶飯事だ。
 にいちゃん、あのね! 雛鳥が頭のてっぺんから出たような声で訴える。
「あの おさかな が たべたいの!」
 リーバルの首が、こてんと傾いだ。
 あのね! おさかなは しろいの! こんがり いいにおい! かむと じゅわーって なるの! でもね! しろい おさかなは こんがり ぱりぱりしてるの!
 リーバルを囲んでいた雛達が一斉に囀り出した。
 どうやら、座り込んだ雛鳥に触発されて、全員が『あの魚料理』の嘴になっているらしい。これが夕刻が迫る時間であれば抱えて連れて帰って『親に作ってもらいなさい』で済むのだが、リーバルはそうしなかった。
 雛鳥達の嘴が、すくっと立ち上がったリーバルに釣られて上向く。つぶらな視線の先で、にっと嘴が上がった。
「じゃあ、これから作ろうか?」

久々に新ジャンルの沼に足を踏み入れたのでピクシブとか行ってきたんですが、やっぱり玉石混合で胃がもたれてきちゃいますね。自分である程度作って、消化したほうが胃に優しいのです。

拍手に感謝!パチパチっとありがとうございます!

 俺はグローリーアックスをゾンガロンへ向けて振り抜いたが、巨大な翼が羽ばたき風圧に圧されて僅かに届かない。振り抜いた時には既に悪鬼は届かぬ頭上に舞い上がっていた。
 笑った大きな口が三日月の形になって闇に浮かんでいた。
「我にとっては有意義だぞ、ギルガラン。貴様の絶望が極上のデザートになるだろう!」
 悪鬼は滑らかに滑空し、瞬く間に鬼岩城唯一の出入り口からするりと出ていった。それを見送るしかできなかった自分は、斧の石突きを地面に突き立てる。頑丈な岩肌がばきりと音を立ててヒビ入ったのを感じていた。
 俺は愚か者だ。
 なぜ、千載一遇の機会を棒に振り、意味のないゾンガロンの正体を暴いてしまったのか。
 この事実を伝えたとして、何の利益があると言うのだ?
 母である王妃ララリアの親友であり腹心の部下であるムニュ大臣は、探し続けた父のその後を知れたとして気分が晴れる事はないだろう。思慮深いグリエは父がゾンガロンに成り果てた事を、憂を帯びながらも受け止めるだろう。
 優しいグリエのことだ、王であった父の苦しみを想像して胸を痛めてみたり、辛い事を共に背負いたかったと綺麗事を言うのがありありと思い浮かんだ。
 父がゾンガロンになったと知って、何の意味がある?
 王は民を守り、国を背負うもの。
 所詮、王の器ではなかった父を殺す役目は俺がする事になるだろう。グリエの優しさも思慮深さも賢さも、父を殺す役には何一つ立たないのだ。
 だが。俺は拳を握り締め、きつく歯噛みした。
 俺は絶好の機会を逃し、ゾンガロンを殺せなかった。滅亡の窮地に立たされていたオーガ族だが、海に身を投じる状況に追い立てられていくだろう。俺は命を賭してでも、ゾンガロンを討たねばならない。
 肺の奥まで凍りつくような冷たい空気を吸い込む。目を開ければ、オーグリードの数多の王国が喉から手が出るほどに欲した大量の清流が滝となって流れ落ちていた。
「どうして俺は、判断を誤ってしまったのだ?」
 真っ暗い中に轟々と響く音が、オルセコの乾いた大地に吹き荒れる風に似ている。あの日、父が『弟』を連れてきた日も、こんな冷たい夜風が吹き込む日だった。
 ギルガラン。弟のグリエだ。
 どっしりとした父の声に促されるように、傍に立つ小さな影を見る。第一印象は痩せっぽちで弱そう、だっただろう。俺と同じ銀色の髪に涼しげな薄氷の色の瞳は大きく、オーガの肌の色であっても筋肉の付いていない体は手折れるような細さだった。檜の棒を振り回す幼い子供よりも頼りなかったが、その瞳が青白い炎のように力強く輝いているのが印象的だった。
 俺にとって最も遠くの異物が、微笑んでいる。まるで見守るように、労わるように、そして寂しげに、眉根を下げて目を細め唇の端がかすかに持ち上がる。
 王とて人ですよ、ギルガラン。
 この世界で唯一俺を諭す声が、寄り添うように響いた。

後半しゅうりょ!!!!!!!!!!

 ゾンガロンの驚きの声が真っ白い光の向こうから聞こえ、徐々に光は薄れて大空洞は夜空のような闇が戻ってくる。大滝の飛沫で濡れた岩肌に残った煌めきが、満天の星のように見渡す限りに広がっている。その僅かな明かりを頼りに、俺は鏡を覗き込んだ。
 そこに映るものに、俺は息を呑んだ。
 鏡にはぎょろりとした目玉と、腕が発達しすぎてバランスに欠いた異形の魔獣の姿はない。艶のない白髪がぼさぼさと顔の上に覆いかぶさり、目深に掛かる前髪の奥に薄氷の瞳がぎらついているオーガ族の男がいる。ゾンガロンの前腕をそのまま嵌めたような隆々とした筋肉、赤い肌は何者をも受付ぬ鋼のような印象を与えた。しかし、前髪に隠れていない口元に浮かんだ笑みは、間違いなくゾンガロンである事を示すような邪悪で残虐を隠そうともしない。頭を口に放り込んだ腕には、かつて真剣に選んだ輝きが嵌まっている。
 俺の記憶とは似ても似つかぬ、憎しみに歪んだ顔。
 それでも、特徴は疑いようもなく似ていた。
「貴様のその腕輪は、父の誕生日に俺が贈ったものだ」
 嘘だと思いたかった。
 王国や部族間の激しい争い。滑落は死を意味する断崖絶壁、全てを凍てつかせる極寒の猛吹雪、渦を巻く激しい海流。強き魔物達。オーグリード最強と名を馳せた王であっても死ぬ理由は沢山あった。父が行方不明になる頃と、ゾンガロンが初めてオーガ族を襲った事が確認された頃が近い。父はゾンガロンに殺されたか、滑落などの事故で死んだのだろうと思っていた。
 しかし、ゾンガロンの腕には幼き日に父に送った腕輪が嵌められている。どんなに意匠が似ていても、見間違える事はない。父が俺の贈り物を身につけているという喜びから、腕輪に付けられた大小の傷の形や数を覚えていたからだ。
 ゾンガロンに殺され、その腕輪を戦利品として奪われたのだと心のどこかで願っていた。しかし、ラーの鏡は俺の願いを真っ向から否定する。ぼぉりぼぉりと無遠慮に頭蓋骨を噛み砕く音が、込み上げる絶望の色を濃くする。
 カラカラに干上がって硬い舌と上顎を動かし、どうにか唾液を出して飲み込んだ。
「貴様は我が父、ゾルトグリンだな?」
 ゾンガロンは『ほほぉ…』と感心ではなく、呆れた声を尖らせた唇の隙間から漏らした。
「気色悪い。ゾルトグリンなど捨てた名よ」
 腕に比べれば短すぎる足を地面につけ、ゾンガロンはもたれ掛かった体を起こした。殺意はなく、ゆっくりと俺の前へ歩み寄ってくる。手を伸ばせば喉を掴めるような距離で、ゾンガロンは俺の顔を覗き込むように見上げた。うっすらと開いた歯の隙間から、鼻が曲がりそうな生臭い血の匂いがする。
「その確認に何の意味がある? ギルガラン、貴様こそ何の意味がない事を知っているだろう?」
 ゾンガロンの言う通りだ。
 行方不明の父がゾンガロンであった事実を知って、何が変わると言うのだ? 父がゾンガロンという獣に身を堕とし、祖国を滅ぼそうとしている未来は変わらない。そこへ至る理由が如何なる内容であったとしても、俺はオルセコの敵を殺す事を躊躇ってはならない。
「我は力を求め力を得た。この姿こそ、我の真の姿よ」
 俺を頭から胸まで丸呑みしてしまいそうな大きな口が開き、腹の中から凄まじい悪臭がする笑い声が暴風となって俺の顔に吹き荒れた。心の底から愉快な笑い声が、悲しいくらいに父ゾルトグリンと重なって聞こえる。
「貴様の父がオーガ族を滅ぼす厄災である事に苦しめ! 悪鬼である我を心の底から憎むが良い! この瞬間我を殺さなかった最悪が、訪れる未来に恐怖しろ!」

ゾンガロンもいっぱい煽ってくるね!
本当にギルガラン王子ってどうしてラーの鏡でゾンガロンの正体暴きに行ったのか謎。
もちろん、腕輪が父親のもので、ラーの鏡で正体を暴けば父親が元に戻るって希望も微レ存ではあるがあっただろう。でも、公式でも正体がわかっても、殺害する意思が揺るがなかったので希望を本当に抱いていたのかは謎なのです。
そうなると、この行動は意味がないと理解しつつ、やってしまったことなのです。
そこは、締めでまとめます。

拍手に感謝!反応遅くなってしまいましたが、ぱちぱちっとありがとうございます!

 俺は悪鬼と呼ばれ残虐の限りを尽くす獣の強かさに、言葉を飲み込んだ。
 グリエは父王が行方不明になってまだオルセコが不安定だった頃、友好関係を結んでいた部族や王国に悪鬼討伐の協力を求める書状を送っていた。オルセコに訪れる闘士や商人達にも書状を持たせ、交流のない王国にも力を合わせ悪鬼と戦う旨を伝えようとした。長年の敵であるドランドにも、同様の書状が送られていた。当時の俺はグリエがオルセコの強さを信じきれていないのだと思っていた。
 その書状が全て受け止められ、オーグリードの総力でもって悪鬼にぶつかっていたら、きっと今のような状況には陥っていなかっただろう。数は暴力。遠くから矢と魔法を放ち、例え隣人が鬼人に成り果てようと誰かが押し留めていれば、別の誰かがゾンガロンに一撃を与えることができたに違いない。俺でなくても、各部族の長、王国の王、一騎当千の猛者の誰かが成し遂げたに違いない。
 しかし、今はもう、無理なのだ。
 オーグリードの各地に名を轟かせた王国は軒並み滅ぼされ、小さい部族は散り散りになった。最も戦力を残したオルセコでさえ、俺が単独で挑む事が最善と呼べる程に追い詰められている。ゾンガロンの言葉通り、オーガ族は小さな自尊心の為に滅びようとしているのだ。
 しかし、ガズバラン様は我らに好機を与えてくださった。
 この獣を殺す絶好の機会。
 ゾンガロンは俺をデザートと言い、今は食べぬと言った。俺が悪鬼を殺す気で襲い掛かれば、悪鬼は俺に反撃せざる得ないだろう。その時、俺が強ければ強いほど、悪鬼の選択は究極の二択となって眼前に突きつけられる。
 デザートを最高の状態で食べる為に、急所を外すべきか。
 今殺されぬ為に、不完全で不味いデザートでも食ってしまうか。
 普通なら生きる事を優先するが、ゾンガロンはそうではない。言葉の端々に食への拘りを滲ませる獣にとって、今、俺を生かすか殺すかは隙を生じさせるには十分な二択になる。一瞬であれ、俺にとっては十分な隙だ。
 何を迷う事がある!
 殺せ!
 ゾンガロンを! 今! ここで!
 俺は食いしばった歯を開け放つと、声が迸った。
「俺を見ろ、ゾンガロン!」
 手に持った布を取り払い、ゾンガロンへ突きつけた! 大滝の飛沫が反射した僅かな光を吸い込み、ラーの鏡から放たれた閃光が闇に浸された大空洞を塗り替える!

思った以上に長くなってきてしまいました。

 厚手の布に包まれた平たく丸いもの。太陽神の祝福が施された鏡で、真実の姿を映す『ラーの鏡』という宝だ。父の代に献上され、副葬品として埋葬された一つなら偽物ではあるまい。
 手元をちらりと見遣り、ふっと白い息が漏れる。
 弟のグリエならともかく、この俺が、こんな回り諄い事をするとは想像もつかなかった。俺の前に立ち塞がる敵は、どんなに切実に命乞いをしようと、どんなに信頼できる存在であったとしても、例外なく冥府に叩き落とすだけだ。
 この鏡で真実の姿を露わにしたとして、何の意味があるのだろう?
 最低限の警戒をして弛緩した意識の中で、そんな疑念が浮かび上がる。
「デザートはまだ早い」
 鼻先を血の匂いが掠める。俺は呑気に思考に耽った意識を引き締め、グローリーアックスを握る手に力を込めた。血潮が駆け巡り、ひんやりと漂う冷気が吹き払われる。
 鬼岩城の最も高き場所。オーグリードを滅亡へ追いやる悪鬼ゾンガロンは、轟雷王の玉座に肘を付いて座り、くちゃくちゃと肉を咀嚼していた。足元には肉片がこびり付いた骨が散らかり、夥しい血が滝の水飛沫と混ざってゆるゆると流れている。切断された鬼人の頭を掴んだ腕輪が嵌まった手を下ろすと、不味いものを仕方なく咀嚼しているような顔で俺を見た。
「聞こえなかったか? 我はメインディッシュを喰らっている最中だ」
 俺は不快感が込み上げるのを堪えられなかった。
 強さには自信があった。魔物達は俺が強敵であると察すれば、いきり立って襲ってくるか恐れ慄いて逃げ出した。例え敵対する王国であれ、俺の力量を見定めようと目を凝らす。戦士であれは強敵に感嘆の声を漏らし、子供や戦えぬ者は憧れに似た敬意を向けてきた。
 まるで道端の石のような扱いに、俺は今まで感じた事のない屈辱を味わっていた。そっと喉を通った息は燃える程に熱く、声が怒りに震えている。
「…俺をデザートだと言うのか?」
 そうだ。ゾンガロンが鬼人の耳を噛み千切り、噛みながら喋る。くぐもった声の合間に容赦なく咀嚼音が挟まる喋り声は、食らっている命に対する在らん限りの冒涜が詰まっていた。
「邪魔が入って、手駒にした鬼人共が使えなくなった。デザートをどのように美味しく調理するか、じっくりと考えているのだ。見逃してやるから、去れ」
 一瞥もくれず爪で目玉をほじくり返すゾンガロンに、俺は叫んだ。
「オルセコは滅びない!」
「そうか、それは良かったな。貴様のように己が国は滅びぬと宣った愚かなオーガ共が、殺し合う様を高みから見物してきた。結果は皆、我の腹の中よ」
 爪に刺さった目玉を指ごと咥え、ちゅぽっと引き抜けば唾液が糸を引いた。
「我を殺す機会を、貴様達は幾度も見過ごしてきた。その小さな自尊心を守る為に、な」

正体を知って何の意味がある?
今回のキーワードです。何度も出てきて、ちょっとうんざりしてしまいます。

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