ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 王都キィンベルから子供の足でも一時間程度でたどり着ける場所に、ラウラの花が咲き乱れるラウラリエの丘がある。多くの国民がピクニックとして足を伸ばす道は、バントリユ地方へ向かう道のりは舗装されている。道から外れてさらに南を目指しても、土が剥き出しの道は歩きやすく踏み固められていた。
 王都から南の海岸線は緩い坂道になって開けていて、日当たりの良い草むらではももんじゃ達が互いを毛繕いしあい、ぶっちズキーニャが光合成し、ドラゴンソルジャーが鱗を暖めている。大きな大木の横を通り抜ける時、居眠りをしていたフォレストドラゴの鼻息が掛かった。遥か彼方の砂浜では、砂のお城が岩飛び悪魔のラインダンスで崩れ去って、作ったプチアーノンがカンカンに怒っている。南から吹く潮風を受けながら、私とレナートさんは進んでいく。
 下り坂が迫り上がった崖に急坂となって立ちはだかり、鬱蒼とした森を抜けると甘い花の香りに包まれる。崖に打ち付け地面を震わせる潮騒を聞きながら、目の前に突然開けた光景に目を奪われる。
「こんな綺麗な花園、私、初めて見るわ!」
 地面を覆い尽くすラウラの花は満開だ。
 シャンテの舞台衣装にも施されたラウラの花は、エテーネ王国領の固有種だ。一枚では透明に透ける薄い花弁が、幾重にも重なって桃色に色付いて見える。重なって大輪となった花は蜜をたっぷりと蓄えて重く、虫達を招き寄せる為にかうっとりとする良い香りを放っていた。この花の蜜を飲めば歌が上手になるような気がすると、記憶を失った私だって思ってしまう。
 レナートさんも花畑の縁にしゃがんで、青空に花開くラウラの花を覗き込む。
「ラウラの花の蜜は喉飴の材料になるみたいだよ」
 そう言って、レナートさんは採取用の瓶を取り出した。一つ花を茎から摘み取ると、花弁の根元をナイフで切断する。断面からとろりと滴った金色の蜜を瓶で受け止めた。一輪から採取できた蜜は、指で掬ったら一舐めで終わってしまう微々たる量だ。
「お花は捨ててしまうだなんて、勿体無いわね」
 私の為に捨てられてしまった花を見て、申し訳ない気持ちになる。
「キィンベルでは、ラウラの花ごと煮てジャムにするそうだよ。岸壁側の潮風を受けた花は仄かな塩気があって、お菓子のアクセントにするんだとか。僕は岸壁側の花を摘んでくるけど、見える所にいて欲しいな」
 はい。私が力一杯頷くと、レナートさんは森の草むらを伝って岸壁の方へ向かっていく。その背を見送ると、私は渡された瓶とナイフを握りしめて花の傍らに座り込んだ。花を摘んで、花弁の根元を切って、蜜を瓶に落とす単純作業をしていると、意識は記憶の海に飛び立ってしまう。
 ゼフさんのお店の二階の部屋は、記憶を失う前から私の部屋だった。その戸棚の奥に仕舞われていた日記には、記憶を失う前の私の日常がたくさん書かれていた。

薔薇ジャムとか普通にあるらしいで。ちなみに、桜の塩漬け付きの和菓子とか結構好きです。
キィンベルも特産でラウラの花ジャムとか売ってそう。無難なお土産。

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