ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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テンレスが制作した『エテーネルキューブ』は、時間跳躍を制御する装置として開発されたキュル。冥王ネルゲルに故郷を滅ぼされた日に飛んで、弟を助ける。それがテンレスの目的であったからキュル。
しかし、完成しても目的は達成できなかったキュ。
『エテーネルキューブ』が完成してから、テンレスは故郷を救う為にありとあらゆる事をしたキュ。直接、冥王ネルゲルを止めようと戦いを挑もうとしたり、村人に危機を訴えて危機を回避しようとしたり、弟を連れ去ろうと企んだ事もあるキュ。でも、実行しようとすれば様々な妨害や、強制的な時間跳躍が発生して完遂に至れなかったキュル。
この時間軸は冥王ネルゲルに故郷を滅ぼされた事が、一つの始点として存在しているキュ。本来なら過去が変わっても未来の影響が最小限になるよう、時間の修復力が働くキュル。でも、エテーネ村の滅亡だけは、修復力ではどうにもできない非常に大きな点だったキュ。
その事実を受け入れる事は、テンレスにとって刃物を飲み込む苦痛を伴ったようキュル。『もう、ルアムさえ救えれば良い』そう、故郷の滅びを受け入れた時のテンレスは、ボクでさえ大好きなチョコレートを半分分けてやろうと思ってしまうくらい痛ましかったキュル。
「私は皆が正しき未来へ至るよう、手伝っているだけ」
例えば。そう言ってメレアーデは、厚手のグローブに覆われた手を人垣に向けたキュル。そこには昏睡状態のマローネを抱き抱えるファラスと、頭から出血しているが必死に赤子を抱き抱えている侍女が慌ただしく部屋に入っていく所だった。扉が閉まる前にクオードが飛び込み、部下達に鋭い声で指示を飛ばしている。
今の時代のメレアーデに通じる、柔らかい笑みが浮かんだキュル。
「ルアム達はただの人助けにしか、思っていないでしょうね。彼らの何気ない行いが、滅びの未来を回避する一歩となるです」
『滅びの未来を回避するなんて、不可能キュ』
終焉の光景を見たルアムは、この滅びの未来を変えたいと願っている。だからと言って、具体的に何をすれば良いか分かっている存在はいないキュ。
そもそも滅びを回避する方法なんて、存在しないキュ。卵が存在すれば、割れる事が確定している。始まりと終わり、生と死、全てのあらゆる時間軸には必ず終末が存在する。終わり方がどうであれ、その終末の姿は同じ。全て虚空に消えて無に還る。ルアムが到達したのはその無に還る少し前、生き物が存在出来る環境が残った最後の瞬間だったキュ。
実は、アストルティアの終末は常に近く存在するキュ。
冥王ネルゲルという魔族の活動が本格化すれば、空に第二の太陽が浮かび世界は焼き尽くされ命が絶えるはずだった。大魔王がアストルティアを征服すれば、どんな治世を経たとしても全ての生命は破滅を間逃れなかったキュ。竜の神ナドラガの暴走でアストルティアは壊滅的な打撃を受け、終末を迎えるはずだった。棒が突き立った砂の山を崩すように、世界は危うい均衡で今に存続している。運良く棒に例えた終末の可能性は消失しても、別の終末の可能性が浮上する。
終末の可能性はアストルティアが存続する限り、決して消える事はないキュ。
無知だから願える、希望的観測キュ。
主人公の兄弟姉妹の行動もちょっと触れておきます。
かなり時間云々の設定は頭使うので、賢くない稲野は大変苦労しております。かしこさ4くらいしかないんじゃないか?魔法が使えないのもさもありなん。
ボクは時の妖精。普段は『エテーネルキューブ』の中で待機状態で宿っているキュル。
製作者であるテンレスは、ことある毎に弟や幼馴染や故郷の話をするキュ。全く不毛な記憶容量圧迫問題キュ。そして弟の話題の最後には、『弟のルアムをよろしく』と依頼されているキュ。『よろしく』とは明瞭を欠いた内容キュルが、『エテーネルキューブ』の所有者を援助する。それがボクの役割キュ。人間の価値観で、好ましい選択して欲しいと認識しているキュ。
テンレスの要請に常に最善を尽しているキュけれど、ボクにも不得意はあるキュ。
ボクは時の妖精の見た目宜しく、愛らしいふっくらとした丸みのある造形や、キュッと伸びやかな手足、ふわりと体を覆うフード付きの外套に、キュルっとした目や口元から戦闘向きではないキュ。
第一、『時渡りの力を制御し指定の時間に時間跳躍する行為を援助する』。それだけで、どんな強大な攻撃魔法よりも制御が難しいキュ。遥か遠くの針の穴に糸を通すような、普通なら不可能な領域キュル。それを可能とするボクは、非常に優秀な存在キュル。
だからといって、万能とは言えないキュ。
「キュルル。そこにいるのでしょう?」
メレアーデの声が、過去から今に囁くキュ。
その言葉を聞いたのは、パドレア邸の主人であるマローネと赤子を守り抜いた後。ルアム達が連行されるのを遠巻きに見る王宮の人々の向こうに、王宮には相応しくない格好のメレアーデが立っていたキュ。誰も窓際に立つ高貴な女性に気がつく事ない。それどころか、その周囲だけ少しだけ時間の流れが澱んでいたキュ。
『お前は何者キュ?』
ボクの問いにメレアーデが動きやすい革のワンピースの裾を摘んで、流れる動きでカーテシーを披露したキュ。伏せたまつ毛が上がると顎も上がって、ボク達がメレアーデと認識する顔と寸分違わぬ面差しが向けられる。
「私はエテーネ王国国王ドミネウスの娘、メレアーデ」
ふんわりと笑みを浮かべた口元だけれど、目は強い意志が朝日のように輝いていた。ルアム達が連行されているのを驚愕の表情で見ている、ドレス姿のメレアーデとは雰囲気が全く違うキュル。ボクの時間測定能力は、二人のメレアーデは同一時間軸に存在する同一人物であると告げているキュ。冒険者姿のメレアーデの方が、経過時間が長い。つまり今のメレアーデより未来の存在と言えるキュ。
エテーネの民が持つ時渡りの力で、未来より時間跳躍してきたメレアーデ。
それが目の前にいたとしても、全く不思議ではないキュ。
『お前も過去を変えたいキュル?』
エテーネ王国編は、ついにキュルル視点です!
いや、今キュルル出さないとマジで出番がないので出ていただきますよ。
余が腕を振るうと、時見の神殿の天井が割れた。王宮中央にある環境維持装置が生み出す大量の水が球体となって、綿毛のように緩やかな時に身を任せて降りてくる。その水飛沫の間を、凄まじい勢いで降りてくるのはヘルゲゴーグ達だ。
赤い光の線が走る体にこびり付いた血や肉片を、停滞する時間の中に置き去りにして、四肢で床や壁を激しく抉りながら疾風のように駆けつける。その額から伸びるの先端を飾る宝石が、隆盛のような光の尾を描いて美しかった。
デク人形が企画した『黄金刑』をつまらないと思ったが、王宮に多くのエテーネ人が集う良い機会だと判断した。ヘルゲゴーグを放ち、効率よく時渡りの力を集める事ができる。メレアーデとクズが共謀し、多くの人間が地上に逃げ果せるという余計な事をしおった。それでも『時の指針書』に従って留まる者だけでも、これだけの力が集まるなら上々と言えよう。
十はいるだろうヘルゲゴーグ達が『時見の箱』を囲むように床に着地する。
停滞する時間の中で引き伸ばされた音を聞きながら、ヘルゲゴーグ達が背筋を伸ばし『時見の箱』に角を向ける。光の柱が『時見の箱』へ伸び、眩かった光が空間を飲み込み全てを白く染め上げる。
おぉ! 余の感嘆の声を聞きながら、未来を見る為に意識を集中する。高齢の父上に代わり時見の司祭の神事に関わるようになった年月を思えば、呼吸するのと等しい慣れた行為だった。
いつもならエテーネ全土の民の未来が、風景を見るかのように感じ取れた。民の行いが風のように向かうべき方向へ流れていく。司祭の時渡りの能力を補佐する『時見の箱』が、余の見た未来を実現すべく最も合理的な言葉を『時の指針書』に書き連ねていくはずだった。
真っ白い光が晴れぬ。
「なぜだ! なぜ、何も見えぬ! この状況を切り抜ける未来を、どうして見せぬ!」
余はエテーネ王国の国王ドミネウス! 世界中の愚民共を導く、偉大なる王となる存在であるぞ! 余は腹の底から、人生で最も大きな声を張り上げる。
「どうした、箱よ! 応えろ!」
箱は相変わらず光を放ち続けるが、満たされた力が増す感じがしない。なぜ、求めに応じぬ。エテーネ王国中の時渡りの力で溢れんばかりの箱から、一片でも力を与えられれば、余はこの窮地を容易く脱する事ができると言うのに!
神器と呼ばれるも所詮は箱。時渡りの力を持つ者の補助しかできぬ、道具に過ぎぬのか!
矢はもう手を伸ばせばすぐの場所に迫っていた。時の停滞を解除すれば、瞬く間に眉間を穿ち抜くだろう。いつまでも代わり映えのない世界に、焦りが黒いシミになって落ちる。
「えぇい! ここぞとばかりに役に立たぬ箱め!」
叩きつけた言葉と同時に、何か鋭い物が背中から胸を貫き、胸を張った拍子に顎が上がる。『時見の箱』の眩い光が網膜を灼く。込み上げる熱が喉を遡って口から溢れた。ドクドクと心臓が脈打つ毎に、口からごぼりごぼりと次々にあふれて息を吸う事もできず溺れそうだ!
「俗物が…」
低い声が耳朶に触れると、時が動き出す。
大きく開いた口腔の中から頭に向かって衝撃が貫く。
中編完走!さらば、ドミネウス!
拍手に感謝!ぱちぱち嬉しい!ありがとうございますー!
錫杖が光の尾を引きながら愚弟を薙ぎ払うと、ほろほろと崩れ去った悪夢の向こうに、あどけなさが残る童が立っていた。その姿を見て、冷や汗が噴き出る。怒りで燃えるような熱と、悪寒によって震える程の寒さに、体が二つに割れてしまいそうだ。不意に沸いた対極の感情に、余は言いようもない不気味さを感じていた。
神と称えるに相応しい余が、見窄らしい旅人の子供に何を感じている?
『時見の箱』はその童を殺める、様々な未来を余に見せた。小箱が流星群となって童を貫く未来。錫杖が薄い胸を貫く未来。吹き飛ばし四肢があらぬ方向に折れて動けなくなる未来。余が手ずから細い首を手折る未来。一瞬の間に、余は童をこの世界に存在する、ありとあらゆる方法で殺害した。しかし、どの未来も訪れない。指一本動かす事はできなかった。
静かに童が立っている。
余をひたと見つめる夕暮れの最後の一片を宿した瞳が、余に狙いを定める鏃の光に灼かれる。弦が引き絞られる音が甲高い音の隙間を縫って、余の耳に突き刺さる。
「貴方はあんなにも多くの命を奪ったのに、自分の手を汚すのは嫌なんですね」
童の瞳にはっきりと軽蔑の光が浮かんだ。
「僕の兄さんを動物か何かだとお思いですか?」
や。漏れそうになった声を飲み込んだ。
余が何を言おうとした? あり得ぬ。あり得ぬ! 余は世界の王として全ての愚民を導く使命を帯びているのだ!
童が矢を放つ。その動きはまるで水の中を進むように緩慢で、軌道に小箱を滑り込ます事など造作もなかった。鏃にクズの一撃を完全に防いだ小箱の一片が触れる。こんな細く頼りない木の矢など、いとも簡単に弾いてくれるだろう。
にやりと持ち上がった口角が、そのまま開く。
鏃はまるで砂糖菓子でも貫くように、小箱を砕いた。驚愕と己の身を守ろうとする反射で、多くの小箱が矢の進軍を阻もうと隊列を組んだ。軌跡に幾重にも重なって重厚な盾となろうと、矢は悉く貫いてみせた。矢を叩き落とそうと、如何なる魔物もの打ち砕く鉄槌を落としても、そこには既に矢は存在しない。
なぜだ! なぜ、たかが一本の矢止められぬ!
鏃の金属面に、余の顔が映り込む。エテーネの王として肖像画に描かれし威厳ある顔ではない。恐怖に塗れ、生き延びようと醜態に歪んだ男の顔。これが余の顔だと言うのか?
嘘だ! 拒絶が時を止めようと足掻くが、どんなに遅くなろうとも矢は止まらぬ。錫杖で振り払おうとしても、矢はまるで巌のように固くそこにある。
移動して逃げようとしても、見えない力に縫いとめられたように体が動かなかった。
どうしてこうなった?
何がいけなかったのだ?
突きつけられた現実に、やり場のない怒りが湧き上がる。そしてその怒りは、全ての元凶たるあの名前すら呼ぶのも悍ましい愚弟に向いた。
愚弟の時渡りの力があれば、箱はとうに満ちておった。彼奴がリンジャハルの厄災に乗じて、姿を眩ましおったのが最も悪い。エテーネの王族の責務を放棄し、余が王国の滅びを回避すべく身を粉にしているのも、彼奴が協力を惜しんだからだ。
愚弟の従者の言葉の通り生きておったなら、魂までもを箱に捧げ時渡りの力を搾り取ってやろう!
「『時見の箱』よ! 今一度、余に栄光の未来に至る道を示せ!」
もう一話いくんだ。やばいなぁ。意外に面白い感じに話が進んでるよ?
生き物の丸みを帯びた腹に、錫杖が吸い込まれる瞬間。
甲高い音と小さい衝撃が、錫杖の先に走った。ほんの小さな衝撃が手に伝わり、ちりっと静電気が走るような痛みが走る。
瞬きを一つして見上げた未来は違うものになっていた。
一本の矢が錫杖の先端を突いていた。あんな細い錫杖を突いた矢は弾かれ、まるで川魚が跳ねたかのように跳ね返って光を振り撒いた。錫杖は光の軌跡が大きな弧を描いた。錫杖の先につられてゆっくりと捻られていく手首が、他人のもののように思えた。
さまざまな光が散る世界を、赤が引き裂く。
熱が顔を斜めに走り、そこからドロリとしたものが滴る頃には痛烈な痛みが走る。視界が真っ赤に染まって、思わず手が痛みに触れた。生暖かいぬるりとした気持ち悪い感触が、手から肘に向かって流れていく。口の中に血の味が流れ込んでくる。
なにが起きた?
『時見の箱』が見せた未来が、変わった?
なぜ。
「なぜだ!」
余はエテーネ王国の神器を、『時見の箱』を見上げた。多くのエテーネの民の『時の指針書』に正しき未来を書き込んできた神器が、未来を違えるなどあり得ぬ事だ。だが、たった今、余が箱を通じて見た未来は変わった。
まさか。汗と混じり合った血が、ぽたりと顎から滴り落ちた。
「ドミネウス陛下」
余の名前を呼ぶ声に、意識が外界を意識する。赤くぼやけて良く見えない世界に、人影が浮かんでいた。
「独りで出来る事って、本当に何もないんですよ?」
声は嘲るでも、同情するでもない、ただ淡々と真実を述べるように紡がれる。ただその声の主は、独りで何もできなかった過去を振り返るような、底の見えぬ谷のような感慨深さを言葉に乗せていた。
この声を余は覚えている。
父だ。父はルミラーハと出会う前の余に、こんな声で語りかけていた。
「貴方の服も、貴方が暮らす王宮も、貴方の頭上にある王国の神器も、誰かの途方もない努力を紡いで作られているんです」
人影が一歩前へ踏み出す。
やめろ。来るな。余の拒絶を感じ取り、小箱が防御体制となって人影と余の間に壁を作る。しかし、人影はまるで壁などないかのように、するりと抜けて近づいてくる。余が大きく後退り、錫杖を振ってどんなに強固な防壁を築こうと、人影はカーテンを開けるかのように突破していく未来に置き換えられる。
人影がはっきりと姿を結んだ。この世界で最も憎悪すべき、愚弟の姿。
「貴方は積み重ねた全ての上に立つ者として、敬意が足りなかった」
凛とした真っ直ぐな瞳には、邪な感情など何一つなかった。余に向けた言葉に何一つ嘲りの感情などなく、清く朗らかな言葉が汚い言葉よりも余を打ち据えた。貴様の妻と子を殺そうとした余に会って言う事が、憎しみの言葉ではなく殊勝にも諌める言葉であるとは…!
そ ん な 貴 様 が 大 嫌 い な の だ !
今まで感じた事のない鮮烈な怒りとなって、余の体を引き裂き迸った!
「エテーネ国王である余に、説教を垂れるなっ!」
やべぇ。3話で終わるかと思ったら終わらないわ。
人影はレナート君でもいけそうですが、ルアム君かなぁって思って書いてます。
わぁー!皆さん、稲野が拍手沁み入るーとか言ったからぱちぱち下さった感じなんですかね。優しくってありがてぇ!拍手に感謝!!ぱちぱちっとありがとうございます!!!