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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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落下する感覚に、どう耐えるか。
 そんな事、リウ老師は教えてくれなかった。いや彼程の頭脳の持ち主であるなら、落下するなんて体験した事はないかもしれぬ。老師はこのような砂塵に塗れ、地べたを這うような生き方など知らぬに違いない。知識と才能はどんな金銀財宝よりも価値のあった世界で、リウ老師とは国の財産全てを引き換えにしても得難い存在だった。
 踏みしめていた地面の感覚が失せ、足の裏が空気を踏み抜いた瞬間に、言葉にしがたい恐怖が脳髄を貫いた。心の臓が縮み、体が一瞬にして冷え切る。体が強張り、視線が少し前にある床のある空間へ向けられる。それも一瞬。暗闇がそれらを上に追いやる。落ちる感覚。それを一言で表すなら、恐怖そのもの。耐えるなど、とても無理だった。
 余は肺の全ての空気を悲鳴に変えた。悲鳴を上げる事に何の意味があるのかは分からない。ただ、悲鳴を上げる事が余という一つの生命に刻まれた本能と言わんばかりに、余の意識とは別に体が実行したに過ぎぬ。
 恐ろしい。恐ろしい。叫ぶ。苦しい。天と地も失せて、ぐるぐると暗闇が笑っている。もう滅茶苦茶じゃ。
 次の瞬間、見えぬ何かにぶつかったような衝撃で、体が跳ねた。胸が押されて息が詰まる。落下する感覚が終わり、ぐらぐらと頼りなく世界が揺れている。冷たい鋼の感触が気持ちがいい。
「ビャン君。危なかったのぉ。今、引き上げるでなぁ」
 遠くから声がして、ぎしぎしと何かが軋む音がする度に体が引き上げられていく。暗闇が途切れてぐるりと世界が回れば、黄土色の土を固めた煉瓦のモザイクが余に覆いかぶさってくる。ひょこりと覗き込んだのは、ヘルメットを被ったデザートゴースト!
「ヒッ!」
「怖かったじゃろう。落とし穴の上にマヌーサの幻影が掛かっておって、床に見えておったのじゃよ。盗賊除けの罠じゃろうが、床に複雑なモザイク状に煉瓦が敷き詰められておるから気が付き難い。下まで落ちておったら、ビャン君もここの住人になっておったのぉ!」
豪快に笑うのは余の恩人であるガノだ。デザートゴーストと見間違うのも致し方ない、眉毛と髭で顔がほとんど覆われてしまっておる。砂まみれのトレジャーコートに、使い込まれた荷を背負い、余を絡め取った鞭を手慣れた様子で纏めていく。
 余が死にかけたというのに、冷静すぎて怒りが湧いてくる。
「ガ、ガノ! わ、笑い事ではないぞ!」
 余の荷物袋が動いたと思った時には、黒い影が飛び出してガノに体当たりした。ガンと音を立てて跳ね返り空中に投げ出された黒いそれは、ぱっと白い羽を広げた。ダストン殿の家に転がっていた、レプティリアと名乗る黒いメタッピーのような魔物だ。ちょっと舌を噛んでしまいそうなので、レプリアの愛称で呼ばせてもらっておる。
『ピピピ! ガノ! バカ! ビャン コロス ツモリカ!』
「痛いのぉ! 助けたのじゃから、突かんでもいいじゃろうが!」
 ががががが。痛そうな嘴を突き立てるレプリアと、逃げ惑うガノのやり取りはしばらく続いた。しかし、亀の甲より年の功なのであろう。ガノがレプリアを掴んで、瞬く間に鞭でぐるぐる巻きにしてしまいおった。
『ピピピ! ガノ! バカ! バカ! ピピピ!』
「羽も嘴も出まい! 我輩の勝ちじゃの!」

3テイク目の正直。墓泥棒編は、墓泥棒を追いかけるガノさんと、初登場のビャン君です。
ビャン君がどんな子かはガタラ外伝クエストを参照していただきたいですが、彼は外伝で止まらない重要キャラに今後なるのでここから出張っていただきます。個人的にすごい好き。彼のために最新バージョン追いかける体質になりました。
最新バージョンで遺跡探索とかやり始めた設定が出たので、最初からガノの弟子ポジションにするつもりでしたが、明確に師弟関係に近いものになってもらうことになるでしょう。実際、ガノから学ぶ事は何もないでしょうけど。

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 それから、ブロッゲン様とノガートは墓の中に何か手がかりが残されていないか念入りに調べていた。
 私はピペとラチックに寄り添われて、勇者アルヴァン様の妹君、私のご先祖に当たるフェリナ様の棺の傍に座っていた。フェリナ様の棺はそれはもう見事な螺鈿細工で、花と星が描かれた美しい棺だった。そんな事を思っているうちに、二人が何の手がかりも見つからず戻ってきて私達は帰路へつく。海風の強い道が終わり、緑の匂いに包まれていても、心のどこかは上の空だ。
 ぼんやりしていた私の手に、ピペの小さな手が何かを押し込んだ。
 掌を広げると、そこには美しいロケットペンダントが収まっていた。希望の花の美しい青はサファイアのモザイクと、繊細な螺鈿細工、銀で出来たペンダントの裏には藤の花の紋章が刻まれている。びっくりした拍子にペンダントが開くと、そこには私とトーマ兄様の肖像画が嵌められていた。蓋の裏には『親愛なるアンへ』と刻まれている。
「ピペ…これ…」
 驚く私の顔を見て、ピペが嬉しそうに笑った。そして、蝋で封をした手紙を差し出す。
「それ 俺達と 別れて 城 戻ったら 読め」
 私は周囲を改めて見回した。レビュール街道の分岐点。グランゼドーラへ向かう東の道と、三門の関所へ向かう南の道へ分かれる場所だ。どうして、気がつかなかったんだろう。これが、私達の最後の旅だった筈なのに…!
 私は堪らなくなって、その場で短剣を引き抜き、封を切った。一国の王女なのに、なんてはしたない事をするんだって思うけれど我慢できない。ピペの言葉を、今、確かめたくて仕方がなかった。

『親愛なるアンへ
 貴女を助けたお礼に、アリオス陛下に無茶なお願いを聞いていただきました。
 グランゼドーラにある勇者アルヴァンの石像には、かつて対になるように盟友の石像が立っていました。
 今回、私はその石像の復建を希望し、アリオス陛下は聞き入れてくださいました。
 私達が高貴なる御方から託された使命を、果たす時がきたのです。故郷の皆も喜んでくれるでしょう。
 ミシュア。貴女は勇者アンルシアで、貴女にしか出来ない使命がある。
 でも私とラチックさんは、いつまでも、どんな事があっても、貴女の仲間で友人です。
 故郷で石像の復建の準備が終わったら、グランゼドーラに…』

 涙でピペの綺麗な字が読めなくなってくる。
 手紙の通り短い別れのはずだった。ピペとラチックが、城に石像を作りに戻ってくる。だから、直ぐ再開できるって分かってる。
 でも、これが最後の旅なのだ。アンルシアという一人の女の子が旅をする、最後の時間だった。これから先、私は勇者として勇者の力を鍛え、盟友を得て、大魔王と戦って勝利しなくちゃいけない。このアストルティアの全ての民の運命を背負わなくてはならないんだ。
 もう、二人は隣にいない。
 それに、私は二人に隣にいて欲しいと強いれない。二人は一般人だ。ピペは芸術家で、ラチックは少しだけ力が強いだけで武術も自己流。勇者の共をするほど強くないと、ノガートに断言された。足手まといを連れて、勇者が斃れては意味がないとまで言われてしまった。
 それに、ピペは…
「アンルシア」
 野太い男性の声に横を見れば、私の顔面に何かが迫った。ぱっと光が散ると、世界が鮮明に感じられる。視界は涙で歪んでいるというのに、そこに左手を向けているブロッケン様の姿がはっきりと見える。
「それは先代勇者より預かりし目。それで小さき者の魂を見よ」
 促されるようにピペとラチックに向き直る。ラチックは変わらない。見た通り、外見通りの姿だ。
 ピペはベビーサタン姿に、幼い人間の女の子の姿が重なっていた。夢の中で見たピペだ。ルシェンダ様に、お母様に、したり顔で諭された。ピペとラチックはアラハギーロの戦争に巻き込まれ、人間と魔物の姿が逆転してしまった。ピペは人間に戻るつもりはないという。何時、魂が肉体の形に変質し、理性を失い魔物となるやもしれぬから、金輪際付き合わぬ方がいい…と。
「魔物の肉体になろうと、魂は人を維持している。稀有な堅牢さだ」
 涙が溢れる。
 戦うことも路銀を稼ぐことも出来ない、ただの村娘と旅をしてくれた友。勇者姫に囚われた私を救いに、危険な場所に死を顧みずに来てくれた友。兄様の死に向き合う時、傍にいてくれた友。向き合えば、私を勇者ではなく一人の女の子として向かい入れてくれる友。なんて得難い存在なんだろう…! そんな友人を、ただ魔物の姿だからと捨てよ、と示唆された事が悲しかった。
 それでもピペとこのまま友達でいて良いと、神様が認めてくれた気がした。嬉しくて、嬉しくて、世界が輝いて見える。
 私は小さい女の子を抱きしめて大声で泣いた。

前半終了!
高貴なる御方はかなり先の布石です。ピペの存在は王家の迷宮の段階で決まっていましたが、ピペの故郷と使命の設定は4を想定しています。4の設定を汲む事が出来るピペの柔軟性に、ちょっと運命感じてます。
ここに来て明言されたピペの正体。アラハギーロの事件でベビーサタンになっちゃったけど、プクリポっぽいからプクリポに擬態して生活してます。いけると思うんだ。私はプクの兎耳、ヴィエラ族くらい盛って良いと思ってますから!


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「む。ガノの施錠か…」
 ようやく眉毛が上がり、ゆっくりと手が掲げられる。魔法陣が淡く輝き、歯車を噛み合わせるように動いていく。ブロッゲン様が起きた事に、一同はホッと安堵の溜息を零した。ざぶんざばんと波が岩を打つ音が押し寄せる中、解除は難航しているらしく私達の想像以上の時間が経過している。ピペだけがブロッゲン様の隣に座って、魔法陣を食い入るように眺めている。
「アン。兄貴 墓参り して 大丈夫か? 辛い 思い しないか?」
 私の横に立っているラチックが、気遣わしげに訊いて来た。本当に優しい人。私は扉を見つめた視線を外さぬまま、彼の逞しい腕にそっと触れた。
「本当は怖いし辛いわ。兄様の死を目の前で見届けたけれど、棺の中に眠っている姿を見たら『あぁ、やっぱり兄様はあの時死んでしまわれた。私を庇って、勇者の影武者としての責務を全うしたんだ』って実感すると思うの。そうしたら、きっとミシュアになるまでの全ての感情が、吹き出すと思う。本当は避けたいし逃げたいわ」
 でもね。口元が上がる。
「夢の中で兄様に出会って、夢の中でも言葉を聞いて、抱きしめてもらった。こうして、ピペとラチックに一緒に来てもらって、寄り添ってもらえる。その事が、とても嬉しくて、とても頼もしいの。どんな困難も苦しみも乗り越えられる気がするの」
 私が兄様の墓参りにピペとラチックを一緒に連れていきたいと、わがままを言った。胸に忍び寄る不安の冷ややかさが、二人が居てくれるだけで安堵で暖かくなるからだ。
 まだ、勇者の影武者を兄様に任せたという事実がしこりになって、両親や賢者様、信頼できる筈の家臣達にさえ、この感情以上のものが湧く事がなかった。二人の存在が幸せな事だと思う反面、罪悪感が募る。それを実感すると、勇者姫を思い出す。勇者になろうと努力を重ね、実らなかった同じ顔の彼女。
 私は勇者として覚醒したけれど、大きな問題が目の前にあった。
 盟友だ。
 勇者は必ず盟友を得る。魂が結びつく程の絆を持った友は、盟友の力に目覚め共に戦う運命を定められる。その役目を負うのは、トーマ兄様の筈だった。兄様が存命で私が覚醒していれば、間違いなく兄様が盟友になっただろう。お父様も賢者様もトーマ兄様が盟友になると、確信すらしていた。誰よりも兄様がそれを望んでいた。
 けれど、兄様の死を確認したら、その望みは断たれる。
 そうしたら…。胸が不安に締め付けられる。誰が私の盟友になってくれるのだろう? 兄様と同じかそれ以上に、親愛を寄せる人がこの世界に存在するのだろうか? 小さな背中が視界に入る。もし、存在したとして『魔王と戦おう』と、頼めるのだろうか? 誰もが恐れ慄く強大な存在に立ち向かい、己の命を共に賭けてくれと、私は言えるのだろうか?
 あぁ、でも、隣にいて欲しい。私は、私は勇者だけれど…
「アン 不安か?」
 肩に大きな手が乗った。優しく、労わるように、肩を大きな手が温める。
「アン 勇者。でも 俺と ピペにとっては ミシュア。大事な 仲間。いつでも 頼る して欲しい」
 視界が大きく歪む。一気に魔法陣の仄かの光が膨れ上がって、視界を大きく染めた。頬を熱いものが止め処もなく流れていく。光の中から小さな影が飛び出して来て、私達の足元に駆け寄った。
「いたっ! ピペ 叩くな! 俺 泣かせてない!」
 スケッチブックで叩いているのかしら。ばんばんと景気の良い音が、波音を押し寄せて響く。そんなに痛くもないだろうに悲痛な声を上げるラチックと、私が泣いているのを見たピペの怒りの声の代わり攻撃が愛おしい。私は思わず大声で笑ってしまった。小さな私の勇者様を抱き上げる。
「大丈夫よ、ピペ。嬉しくて涙が出てしまったの」
 小さな手がハンカチを持って私の頬を拭う。愛らしい、可愛い、ピペ。優しくて、思い遣りに溢れたラチック。この二人の為にも、私は頑張らなくちゃいけない。ミシュアとして返せなかった恩を、アンルシアとして返していきたいと思った。


結構大変だよね盟友問題。勇者が頑張れば良いとかそんな問題じゃないのが問題。
アルヴァンさんは運命の出会いしてるから、アンちゃんも大丈夫だと思ってるけど時期的に余裕がないのが可哀想である。

髪の毛切ってさっぱりした!よきかな!


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 横殴りの潮風は、海の中に潜ったような濃さで吹き荒ぶ。潮の侵食によって螺旋階段のようになった狭い道を、潮風は竜巻のように過ぎ去っていくのだ。断崖絶壁の道を進む私達は、潮風の暴力の前に立ち止まっては進むを繰り返す。風に蹌踉めき道を踏み外せば、墓参りどころか葬儀を行わなければならなくなる。
 先頭を進むノガート兵士長が、強い風が吹く度に安否を確認する為に振り返ってくれる。殿を務めるラチックさんが、時々私の肩を支えてくれるので落ちる心配なんか全くない。王家の墓へ行くのはいつも怖かったけれど、今回は全然平気だ。
 やがて道は洞窟に入り込む。荒波が細かい飛沫になって岩盤を濡らし、海が削った洞窟は神殿のような神秘的な雰囲気を醸している。先頭が足を止めた場所こそ、グランゼドーラの紋章が刻まれし大扉の前。歴代のグランゼドーラの王族が眠る神聖な場所であるはずだった。
「なに…これ?」
 岩すらも侵食する潮風に錆びる事を知らない大扉。グランゼドーラの紋章が彫金された扉には鍵穴はなく、王族にしか開けられぬ仕組みが施されている筈だった。しかし見慣れた大扉の前に、見慣れぬ魔法陣が描かれている。何らかの封印の魔法陣であろうそれの前に、私の前を歩いていた小柄な人影が歩み寄った。
『おやおや!これは正しく、ドルワーム王国の規定に則った施錠の魔法陣ですな!』
 小柄な影が持つ両手杖の先端がぱかりと開いて、ぱかぱかと喋り出した。ひょこひょこと先端の羽を弾ませて、杖は持ち主に語りかけた。
『ブロッゲン様、お目覚めください! これ程までに見事な施錠の術式は、彼の作品に間違いありませんでしょう。ドルワーム王国に問い合わせたとしても、貴方様以外の適任はおられますまい!』
 ぐぅ。
 持ち主が船を漕いだ。この世界に名を馳せし賢者ブロッゲン様。眠りの賢者と呼ばれる通り、御高齢も手伝ってか常に寝ていらっしゃるの。私も起きてお話しされたことなんか、片手で数える程度しかないわ。とっても器用なお方で、ここまで寝ながら歩いて来ているの。私にはとても真似できないわ。
 ぐぅぐぅと鼾をかくブロッゲン様の顔を覗き込んだピペは、にこにこしながらスケッチを始めた。ドワーフ最高位の賢者様は、顔の大半の覆う髭を三つ編みにされたり、頭部の髪は竜巻のようにうねっているんだもの。服装も賢者らしい幾何学模様と重厚なローブ。描きたくって仕方がないわよね。早速、大きな鼻提灯が描かれているわ。
「アン。兄貴の 墓参り できるのか?」
「ブロッゲン様次第だそうよ」
 肩を叩いてきたラチックに答える。
 事が発覚したのは私が帰還して直ぐの事だった。私がトーマ兄様の墓参りに行きたいと願った時、王家の墓を巡回して来た兵士から『墓に怪しい封印が施されている』と報告が上がったのだ。直ぐ様ルシェンダ様が見にいくと、どうやらドルワーム王国で管理している遺跡施錠に用いる魔法陣と判明した。しかし、遺跡施錠の魔法陣はいくつものパターンが組み合わさる複雑なもので、流石のルシェンダ様も時間がかかる。
 その時、丁度、ホーロー様の羅針盤と、ルシェンダ様が灯した聖なる種火の力でやって来たグランドタイタス号に賢者ブロッゲン様が乗っていたのだ。ブロッゲン様なら解錠できる筈。そうルシェンダ様に言われて私達はやって来たのだ。
 一生懸命、杖が起こそうと頑張っているのだけれど、ブロッゲン様は起きそうにないわ。ノガートも肩を揺すったりするんだけれど、まるで揺り籠で揺すられているかのように気持ち良さそうな鼾が続いている。
 スケッチをしているピペが、唇を尖らせた。どうやら鼻提灯でよく見えない場所を見たいらしく、芯を長く切り出した鉛筆で鼻提灯を突きだす。突こうとしては引っ込み、突きそびれて手が引っ込めば鼻提灯が膨らむ。あぁ、こんな時でなければ、和やかな光景なのに。
 ぱぁん! 想像以上に大きな音を立てて、鼻提灯が割れた。
『おぉ! ブロッゲン様、お目覚めでございますか! ルシェンダ様が目の前に施された封印を解いてほしいと、ご依頼が来ております!』
 ぱかぱかと脳天から突き出るような声で杖が言う。ようやく、扉が開くんだわ。そう、期待が胸に湧いた。
 …ぐぅ。
「寝るな…!」
 異口同音のツッコミが、四方八方から飛び出した。驚いたのか、今度はピペが突かなくとも鼻提灯が割れた!


今までで一番ひどい編名である。マシな名前が浮かびませんでした。
かなり本編でもブロッゲンさん空気なので、色々出しゃばって頂こうと思ってます。まぁ、この流れは、ガノさんを真レンダに先に解き放っちゃったのがいけないんですけどね!
これでもかなり最初は端折りました。初めはアンちゃん救出のお礼の交渉からだったからね!

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『これが、勇者姫がアンルシアさんの力を手に入れれば、勇者になれるって言った根拠かもしれないな』
 まるで硝子越しのような不明瞭な声色だったが、それは確かに聞こえた。
『レンダーシア全土で攻防を繰り広げた魔王軍との戦いで、かつての勇者が用いた鉱石だよ。この石を用いて、勇者はレンダーシアの何処にでも移動し、魔王軍と戦い続けたらしい。ルーラストーンよりも高度で強力、さらに勇者が用いることから勇者の石…ブレイブストーンと呼ばれている』
 魔物が立っていた場所に、背の高い旅人風の男が何かを拾い集めた。その掌の中をアンルシアとプクリポと、大柄な男が覗き込む。プクリポはスケッチブックを取り出して、アンルシアの肩に乗っているのに熱心にスケッチし始める。
『この石を使えば、元の世界に帰る事ができるだろう』
『どう やる?』
 拙い大柄な男の言葉に、背の高い男はツバの広い帽子を小さく持ち上げ天空を指差した。
『今丁度、大きな穴が空いた。きっと、俺達が今立っているグランゼドーラと、本当のグランゼドーラは凄く近い位置にある。世界の自己修復が働く前なら、この砕けた石と、リレミトの力で移動してしまえるだろう。相棒が言うには、勇者の力と両次元の分子を保留した個体が揃えば、二つの場所を行き来する事ができるそうだ』
 なかなかの知識を持ち合わせた男だ。私は感心し、五大陸から調査団として送られた精鋭は実力者ぞろいだと実感した。
 プクリポがアンルシアの肩から降りると、絵筆を取り出し彼らの周りの地面を一周回り始める。淡い妖精の粉で描かれた魔法陣は、なんとリレミトの魔法陣だ。多くの魔法使いが呪文として行使する為に、魔法陣を描ける者はそう多くない。先ほどの暴走魔法陣を発動させた護符のような物も、このプクリポが製作したのだろう。魔法への深い理解と共に、魔法陣を正確に描ける技量が揃わなくては出来ぬことだ。
 淡い光が魔法陣から湧き出し、リレミトの力が空間に干渉していくのを感じる。
『さぁ、アンルシアさん。故郷を、破壊されていない本当のグランゼドーラを思い描いてください』
 託されたブレイブストーンの破片を胸に抱き、アンルシアが願う。勇者の力が優しい光となって満ちていく。肌を一瞬違和感が走る。二つのグランゼドーラが重なった瞬間、炎で蹂躙された戦場と瘴気の臭いが鼻腔を掠めた。
 光の中に気配を確実に感じる。背後に幾人もの足音が駆け寄ってくる。振り返れば兵を伴ったアリオス王が、目を見開いて光の中に見え始めた赤を見つめている。アンルシアが好んで使っていた赤い色は、戦いで煤汚れ所々切れていたが、光の中で最も早く浮き上がっていた。
 熱に浮かされたように歩む王を、私は止めなかった。
「お父様…?」
 アンルシアの声が聞こえる。王は恐る恐る手を広げ、小柄な何かを抱きしめた。その肩が小刻みに震えているのを見て、王がどのような表情であるのかを察するのは簡単なことだった。
「よく…よく生きて戻ってきた…。おかえり、アンルシア…」
「ただいま。お父様」
 王の大きな背に、細い腕が回った。親子の再会に兵士達が涙を流すのを聞きながら、私は天を仰いだ。
 勇者が帰還した。このうら若き乙女に戦いの道を強いる咎人である我々に、未来を与えてくださる神の寛大さに感謝した。そして、もう二度と彼女が危機に瀕せぬよう我々は力を尽くさねばならぬ。賢者とは、その為にいるのだ。
 だが、今はこの喜びを民と分かち合おう。歓声が爆ぜ、じきに王城に届く。
 

おわりっ!格納は後日やる!

たった今考えた、ブレイブストーンと勇者の石塔の理屈。
勇者の石塔は、ブレイブストーン用の誘いの石碑なんですよね。結局、勇者単体なら自由に移動できても、勇者の力のない盟友は移動に制限がかかる。その点を補ったのが誘いの石碑の役割を果たす勇者の力を込めた石塔って考察。こうすれば、主要拠点に石塔があるのも納得だし、勇者でもないプレイヤーが石塔の力を借りるにしろ移動できるって根拠も強くなるかなーって書いてて良く分からなくなってきたー。やっぱ、考察向かないな私ー。

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