ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 それは二階建ての一軒家に相当する、見上げる程に大きな魔物だ。にたりと笑った口からこぼれ落ちた舌は、毒々しい紫の斑模様になって爛れている。体を覆う紫色の鱗は所々に剥がれ落ち、真っ黒いぶよぶよとした肉を覗かせていた。尾は途中で腐って落ち、巨体を持ち上げるには小さすぎる翼は根本から折れて垂れ下がっている。そしてでっぷりとした青白い腹には大きな穴が空いていて、腐った内臓がこぼれ落ちていた。
 生命活動がとっくに停止している肉体に、何らかの方法で魂を縛り付けているんだろう。
『貴様ラヲ喰ライ、我ガ糧ニシテクレル!』
 大木のような腕が掴んだのは折れた柱。大きく振りかぶるのを見て、アーヴさんがあたしの腕を引いて駆け出した。緩慢な動きは誰もいない場所に攻撃を振り下ろし、柱が砕けて扉を塞いでしまう。
 アーヴさんが自分にバイキルトを掛けて、魔力を杖に込める。
「ルアム! 私が前に出る! 援護を頼むぞ!」
 ルアム君の返事が舞い上がる土埃の向こうから聞こえる。
 アーヴさんは一気に駆け出すと、バルザックの肘に杖を叩き込んだ! 不自然な方向に折れ曲がった腕から、折れた骨が突き出る。本来なら絶叫する痛みのはずの一撃でも、バルザックは平然としている。痛覚を遮断しているか、感じる機能が腐ってしまっているんだろう。
 アーヴさんを薙ぎ払おうとした尾に、爆薬を仕込んだ矢が射掛けられて根本から吹っ飛び空振りに終わる。惰性で迫った尾を、アーヴさんは受け流した。
 錬金術師という後方の魔法使い系の職業のアーヴさんだが、戦士と変わらない戦い方ができる。自らにバイキルトを施し、魔力を攻撃力に変換させる理力の杖で殴打する。攻撃力は片手剣を使う戦士に負けないくらいあるらしい。オバリスのおじいちゃんに出会う前、エムリヤさんを守る為にこの戦い方になったそうだ。
 短剣と弓という大型の敵には不向きなルアム君に代わって、どんどんバルザックを打っていく。体が腐っている為に、アーヴさんの一撃でどんどん体が壊れていく。
 己の体が不自由になるのを実感したらしく、バルザックが憎々しげに吠えた。
 急激に部屋の温度が下がり、空気が凍りついて輝き出す。バルザックの腐った体も凍り出して、アーヴさんの一撃も、ルアム君の矢も通らなくなる。その様子を愉快そうに眺めていたバルザックは、体を仰け反らせ空間に反響する大声で呪文を唱えた。
『マヒャデドス!』
 勝利を確信した誇らしげな声が、輝く空気に吸い込まれる。
 吸い込まれて、それっきり。
 空気の水分が巨大な氷を形成し、目障りなアーヴさんやルアム君を押しつぶす事はない。その状況に愕然したのか、信じられないと言わんばかりにバルザックが叫んだ。
『ナゼ呪文ガ発動シナイ!』
 呪文が唱えられるのに、魔法が発動しない事に驚いてるのね。
 マホトーンは相手の声を奪う呪文だ。
 でも、実は声を奪われた程度では、魔法が使えない状態にはならない。術者が呪文を声に出して唱える事で魔法が発動するから、声を奪う方法が魔法を封じ込めるという結果になるだけなの。そもそも、呪文で起因する結果が大きいから、魔法が呪文によって発動する力と勘違いしているところから破綻してる。魔法が発動する道具の存在を知らないのかな?
 実は魔法は世界の理そのもの。世界を吹き渡る風も、満たされた海も、心臓が脈打ち血が全身を巡る事すら全てが魔法と言って良い。
 あたしは世界の理に干渉して、魔法の発動を阻害しただけだ。
 理の干渉と言っても、呪文を唱える事と大差はない。
 メラを唱えても火の玉は生み出せず、火打ち石をいくら打ち付けても火花一つ出ない。魔法を封じ込めるとは、本来はこういう事を言うんだ。
「魔法が発動する原理も分からずに、バルザックなんか名乗らない方が良いよ」
 まぁ、頭が腐って忘れちゃったのかもしれないけどね。
 あたしの言葉が相当癇に障ったらしい。バルザックは憎しみに真っ赤に燃えた目で、あたしを睨んだ。折れていない手をグッと伸ばしてくる。
『貴様ハ誰ダ!』
 あたし? そう小首を傾げて笑う。
 握り潰そうと姿勢を低くしたバルザックの頭に、アーヴさんの会心の一撃が突き刺さった。頭に王冠のように生えた角を粉々に割り、杖が叩きつけられた頭が陥没して口腔に抜ける。あたしを守る為に駆け寄ってきてくれたルアム君が、腹の空洞にカンテラを放り込み火薬仕込みの矢を射掛ける。爆発と共に腑が勢いよく燃え出した。
 炎は全身にまわり、バルザックの体が崩れていく。バルザックは『嘘ダ!』とか『コノワタシガ!』と叫んでいたが、そのうち叫び声は聞こえなくなり灰の山になってしまった。
 警戒を解いて武器を下ろした二人を横目に、肺の山に歩み寄った。
 流石に魂を留める器としては機能しないだろう。
 後は地下に廃棄された残留物を精製して、『エテーネルキューブ』をお腹いっぱいにするんだよね。それはアーヴさんがやってくれるし、後は帰るだけかな。
 …あぁ、そうだ。
 漂う魂に聞こえるように、あたしは名乗った。
「あたしはロトよ」


はーーーーーい!ロトちゃん、いらっしゃいませーーーー!!!!
ガライさん来たんでロトちゃんも来るよねー、っていうかカンダタ月クエストの時には登場確定でしたからねー!前回のプクランドで、で気がついた人はいたかな?

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