ハコの厚みはここ次第!
■ Calendar ■
■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
□ search □
ランドンの雪解け水が大滝となって大空洞を二分する空間を、白い息がふわりと広がって消えていく。大滝の飛沫は大空洞に霧雨となって降り注ぎ、しっとりと濡れた岩肌が凍り付かぬのが不思議なくらい冷え切っている。
いや、これからこの大空洞は凍りついていくのだろう。
ドランド王国が滅んだ今、この大空洞は元の在るべき姿へ戻っていくだけなのだ。
鬼人の死体とオーガ族の体を保ったドランド兵の亡骸が、互いに凄惨な状態で折り重なっている。五体満足な遺体など存在せず、首を落とされ、腕がもがれ、足を踏み潰され、胴に穴が空いてる。裂けた下半身から大量の白濁と血液が流れ出したまま果てたもの、崖から落ちて滝壺に浮くぶくぶくに膨れ上がった水死体が、悪鬼ゾンガロンに蹂躙されたドランド王国の最後を物語っている。この世の地獄を煮詰めたような臭いを覚悟していたが、冷気によって腐敗臭がそれほどではなかったのは幸いと言えるだろう。
鬼人になったドランド軍の歓迎があるかと思ったが、もぬけの殻で拍子抜けだ。
宣戦布告の通りオルセコへ向かったとして、それを心配するつもりは毛頭ない。オルセコに滞在する闘士達をグリエがまとめ上げているならば、鬼人の軍勢など敵ではない。
「…これが難攻不落と謳われた、強国ドランドの末路か」
俺は感慨なく、足元に転がった敵兵の兜を蹴った。兜割を受けて頭頂部に大きな割れ目を作った兜は、硬い岩の上を何回か弾んだ後、柵の隙間から落ちて滝壺に飲まれていった。
轟々と鳴り響く大滝の音を遠くに聞きながら、何者も阻む者のない鬼岩城の中を独り進む。
ゾンガロンとの対決の際に、鬼人という敵になりかねない人数を引き連れるのは愚策だ。俺はゾンガロンに挑む時、必ず独りと心に決めていた。独りで戦うからこそ何者にも負けぬ実力であるべきと、全ての階級のチャンピオンを圧倒し、人一倍の修練を己に課した。
オルセコ闘技城の舞台から見上げる筒状の空に向かって、太い腕が太陽へ突き上げられる。背に国章を刺繍した真紅のマントを翻し、大岩のような頑強な肉体が聳え立っていた。
先王であり父ゾルトグリンを、俺は尊敬していた。
オーグリード大陸各地から猛者を集めて開かれる武術大会において、各階級のチャンピオンを相手取って大立ち回りを繰り広げ、喝采の中で拳を突き上げる父は間違いなく大陸最強だったと俺は思っている。逞しい腕は躊躇いなく家臣を労わり、快活な笑みは民に慕われた。勇猛さと優しさを兼ね備えた名君であったと、誰もが口を揃えて讃えただろう。
そう、全ては過去形。
父は誰にも行先を告げずふらりと出かけ、帰らぬ人となった。
普段なら生死も定かでない居もしない存在が、意識の端に上る事などない。そんな無駄な事よりも、体を鍛え精神を研ぎ澄ます方が余程有意義だからな。だが、その無駄が込み上げるのも、俺の手の中にある壊れ物の感触のせいだろう。
短くなるかなぁって思いながら、ギルガランとゾンガロン。
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!
