ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 王立アルケミアは定期的に行われる人事異動で、随分と様変わりした。病気の治療や健康維持に寄与する不老長寿の研究部門が縮小され、魔法生物の部門が拡大する傾向が見て取れた。私の研究にも多くの予算が与えられるようになり、助手も付くようになった。私は所属し続ける錬金術師の中では古株の方となり、新たな所長としてワグミカが就任して随分と経った頃だ。
 所長室に呼び出された私は、大きな机の前に立つワグミカと向き合っていた。
「王都で酒池肉林の宴を開いたそうですね」
 私は二日酔いの頭を抱える。だって、研究室で飲むお酒は美味しくないし、王立アルケミアには美しい女性が圧倒的に足りない。私だって既婚者に手を出さない常識は弁えているんだから、このくらいは目を瞑ってほしいものだ。助手達も同僚達も私の宴を楽しみにしてくれていた。
 所長室に呼び出される時は、決まって注意のお小言である。
「まぁ、貴方は二日酔いという罰が、既に神から与えられています。これ以上は言いますまい」
 ワグミカは人間の女性としても大変小柄で、同じく小柄な私と比べても胸くらいしかないだろう。くるりと内巻きになった髪は愛らしく、大きな瞳やふっくらとした頬は子供のあどけなさを彷彿とさせる童顔っぷりだ。それでも丁寧に前に重ねられ指先まで伸ばして揃えた所作や、ぽってりとした唇が紡ぐ錬金術師の祖と討論できるような知識量が、所長に相応しき者だと皆に認めさせていた。ワグミカはふわりと誇らしげに微笑むと、ゆったりと頭を下げた。
「ヨンゲ殿。魔力保管系統を、魔法生物に制御させる研究が完成したと聞きました。まずは、完成おめでとうございます」
 研究が完成すると、所長直々に祝いのお言葉をいただく。所長のワグミカはそんな儀式めいた事をしたがったし、所属する錬金術師達は憧れの所長の言葉をいただける栄誉に喜んだ。互いに所属年数が長いだけあって浮き立つ事はないが、所長直々の祝辞は感慨深く染み入った。
 王子の激励の後、私は『時の指針書』の方針に従って保管するエネルギーを魔力に限定して研究を深めた。魔力切れを起こした場合、魔力回復の方法は魔力を含んだ精製水を摂取する他ない。しかし、この研究があれば、昏睡して精製水を摂取できない状況でも魔力を対象に補充し命の危険を遠ざける事が出来る。特にエテーネ王国では魔法を使う分野が盛んなだけに、需要も救われる命も多いだろう。
 最初は古くは二つ目の神話にあった『祈りの指輪』に着想を得て、保管方法を道具の形状にしようとした。しかし『時の指針書』が魔法生物に組み込むよう示したのだ。
 確かに魔法生物が管理すれば、意識を失い道具を使えない対象者を助ける事が出来る。さらに魔法生物に魔力保管を制御させる事で、錬金術の補充なく連続した活動が期待できる。魔法生物の活躍の場はますます広がり、王国の発展に貢献するだろう。すでの多くの部署から、この研究を活用したいと申し出が寄せられていた。
「ありがとうございます」
 私もゆるりと頭を下げて祝辞を受け取る。ヨンゲ殿。名前を呼ばれて顔を上げる。
「この研究を凍結し故郷へ帰りなさい。貴方の成果は世に広く伝えられ、故郷に錦を飾ることになるでしょう」
「何を言っているのです。この研究はこれから発展していくのですよ?」
 私が語気を強めて問えば、ワグミカは『わかっています』と苦々しく囁いた。
 ワグミカが私の研究を横取りし、己の功績にしようと考えていない事はわかっていた。そんな事をせずともワグミカが本気になって研究すれば、どの分野も五十年前進すると言われているのだから横取りなど必要ない。
「しかし、今はなりません。どんな良薬も、使い方を誤れば毒薬となります」
 使い方を誤れば。その言葉を汲んだ私は、声を潜めた。
「誰かが、私の研究を悪き事に使おうとしていると…?」
「私は錬金術に人生を捧げた身です。私は全ての権限、知識、命を賭けて、全ての錬金術師の研究が正しく使われるよう抗議します。しかし、それでも及ばぬ場合は…」
 肯定して頷いたワグミカは、己の無力を噛み締めるように唇を閉ざしてしまった。だが、その先は既に遠回しに言われていた。
 逃げろ。と。

公式だとほぼ割愛してるんだけど、こんな感じかなーって。
綺麗なワグミカとヨンゲで笑ってしまう。二次創作なんだし、いいじゃないか。

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