ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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こ、これはどういう事なのでしょう?
現国王ドミネウス様のお屋敷は、戴冠され王宮に居を移されてから地上に墜落したのです。転送の門は二つの空間を行き来するだけの装置であって、時空を超える能力があるはずがない。
いったい、ここは何処なのか?
玄関に続く石畳を進んでいけば、玄関に私を出迎える人影があります。妙に薄暗い世界で赤い髪は黒っぽく沈み、丁寧に腹の前で手を組んだ細い体は爪楊枝のように突き立っています。別れ際と同じ動きやすそうな服装のまま、手を前に組み流れるように頭が下げられる。
「お待ちしておりました、ディアンジ様」
「ザグルフ! 無事だったんですね!」
一足先に転送の門に飛び込んで調査していたザグルフの無事な姿を見て喜びが溢れましたが、言いようもない違和感に足が重い。
私と共にクオード様にお仕えするザグルフは、諜報部では重宝されるだろう優秀な感性をもっていました。人の名前と顔を一瞬で記憶し、その何気ない仕草から戦士であれば得意な武器を、その人が患う病や怪我まで見抜いてしまいます。額縁の角度が少しでもズレていれば気がつき、魔力の流れからその場で効果を発揮している錬金術まで察知します。
そんな優秀なザグルフでしたが、極度のあがり症。調査の為に街を歩けば、まるでゴーレムが歩くようなぎこちなさ。報告を口頭でさせようものなら、いつまで経ってもマホトーンが解けない有様です。協力での調査も上手く行った試しがなかったそうです。
そう、違和感はザグルフの口調です。横隔膜が痙攣するようにつっかえる声が、滑らかに紡がれる。これだけで、普通ではないと思うのです。さらに、私と彼は同僚。ザグルフが私に頭を下げたり敬意を払ってくれた事は、一度もありません。
魔物の類がザグルフに化けているのでしょうか?
警戒して足を止めた私に、ザグルフは気持ち悪い笑みをにっこりと浮かべました。
「さぁ、メレアーデ様がお待ちですよ」
どうぞ、と開けられた玄関を潜れば、使用人として働く様々な人々の姿が見えます。転送の門の事件で行方不明になった兵士達。王宮で働く女官や、文官の姿もありました。二階からメレアーデ様が階段を降りてくれば、エテーネ王国の民として深々と頭を垂れる。私も居住まいを正して、近づいてくる主の姉上を迎えました。
クオード様と同じ青紫の艶やかな髪を結い上げ、赤いリボンで結んでいます。肩の出ている桜色のドレスは、華美でも質素でもない丁度良い塩梅です。凛と伸びた背筋、一挙手一投足が美しい立ち振る舞いを叩き込まれ、まさに女王の風格でありましょう。クオード様は姉上様の美しさと素晴らしさを、時間の許す限り語るのですが、まさにその通りと言えましょう。
「良く来ましたね、ディアンジ。待っていましたよ」
勿体無いお言葉です。そう深々と頭を下げて、メレアーデ様の足元が見える。
足先まですっぽりと覆うロングドレスが、床に擦れる擦れないかという長さでふわりと揺れる。その足元を見て私は、ふと違和感を感じたのです。
浮島に差し込む日差しが、ドミネウス邸の奥へ燦々と差し込んでいました。私のずんぐりとした影が、ザグルフのひょろりと引き伸ばされた影が、窓から差し込む日差しに黒々と床に縫い付けられる。そう、影は二つだけ。
メレアーデ様の足元から影が伸びていませんでした。
私は下げた頭を上げると、メレアーデ様を正面に見据えて問いました。
「貴方は誰ですか?」
原作だと『星華のライト』で正体が明かされて、暴力に物を言わせて解決するんですが、ここでは非戦闘員のディアンジさんの為に一捻りします。
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