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ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
DQ11小説アンソロジー主催を勢いでしている傍ら、switch購入してバケツを愛でるイカであり、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコがあれば生きて行ける!
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 薄っすらと私達の体を包み込んでいるのは、キラキラポーンと星弓の守りの力だ。それらが魔障の風を遮り、冥界の魂を摘もうとする力を拒絶している。それでも、この力は長く保たない。
 タジウスさんは私を見つけると駆け寄り、力強く私の腕を掴んで早口で言った。
「セラフィさん。今すぐ、天使の守りを私に施して欲しい」
 その一言で、私は分かった。タジウスさんは、ゴリウスさんを止めることを諦めていないんだ。
 天使の守りは、死ぬことを無かったことにできる魔法って言っていいと思う。魂を無理やり肉体に繋ぎ止め、肉体と魂が引き剥がされる即死の状態であっても冥界に魂が行かないようにできる。これは大きくて、肉体の損傷次第ではすぐにホイミが唱えられて、生存率が上がるんだ。
 風に当たって魂が冥界に持ってかれそうになっても、天使の守りを施しておけば、肉体に魂を固定させているから踏みとどまることができる。この魔障を含んだ冥界の風を突破するには、この天使の守りの力が必要なんだ。
 私は頷いた。両手を組み祈ると、清らかな光がタジウスさんを包んだ。タジウスさんは天使の守りを授かったことを確認し、深々と頭を下げた。
「セラフィさん、貴女の優しさに心から感謝します。お達者で…!」
 身を翻そうとするタジウスさんの服を、私は咄嗟に掴んだ。
「私、ゴリウスさんを見殺しにしようとしていた。もう、何も出来ないんだって思ってた」
「どう見ても、何か出来る状況ではありません。お逃げなさい。貴方には関係のないことだ」
 私はタジウスさんの瞳を覗き込んで言った。
「私はホイミスライムだった頃から何も変わらない。誰にも死んでほしくないし、傷ついてほしくない。苦しむ姿なんて見ていられない。だから、諦めない貴方の助けになりたい。貴方を助けることで、ゴリウスさんもアラハギーロの皆も救われて欲しいの…!」
 タジウスさんは息を飲み、そして小さく頷いた。そのまま服を持っていてくださいと囁いて、私達は魔障の風の吹く方向に向かって歩き出した。
 それは、心臓が鷲掴みにされているような、言いようもない恐怖との戦いだった。天使の守りが薄氷のように感じて、何時、風に魂が掴まれ冥界に持ち去られてしまうか気が気では無かった。足元には逃げる際に転がった椅子が砕け、討伐隊の面々が取り落としただろう武器が散乱していた。芝生だったそこは踏みしめると乾いた土のように崩れ去り、オアシスには仰向けになった魚が沢山浮かんでいる。
 風の中心に着いた時、私達は絶望のあまり舌が乾ききっていた。風は倒れ込んでしまうような横殴りで、魔障は私自身の手すら見えなくなる程に濃い。そして、ゴリウスさんの魂が感じられなかった。魔障の竜巻は轟々と音を響かせ、どんな声も届きそうに思えなかった。
 もう、引き返すまで守りは保たない。重ね掛けされていた星弓の守りは、もう効力を失いつつあった。
 何が出来るのか。それすらも見つからないまま呆気にとられる私の視界に、ほんのりと柔らかい光が写り込んだ。それは風の中を歩いて来る、イエティみたいな体格のいい男の人だ。彼は私を見ると、愛嬌のある笑顔を浮かべた。ひょろりと身の軽そうな青年が、魔法が得意そうな壮年の男性が、風の切れ間にぽつぽつと見え始めた。
『兵士長、ベルムドは分からんかったみたいだが、俺達は分かってる。あの場で、魔物諸共玉砕してアラハギーロの民を守ろうって魂胆、兵士長らしかったぜ! 口が足らねぇのは、本当に死んでも治らなかったみたいだがな!』
 がはは! そう笑い飛ばした男の声が風の合間から聞こえてきた。
『俺は今も兵士長を尊敬しています。貴方は俺達に厳しかったけど、それ以上に自分に厳しい人だった。だから、俺は貴方が誰より強いのを知ってます。怨念に屈するような弱い人ではないのを、知っています…!』
『王は貴方の死を誰よりも悼んでおいででした。冷酷な判断でも国を守るためだと察し、貴方こそ真のアラハギーロの守護者であったと評しておられた』
 声が細波のように語りかける。その声は人が喉を震わし発する音ではなく、魂が発する声なき声。風の中でも明瞭に響き、冥府の中にまで届く唯一の音域。
『この戦争に悪者はおりますまい。誰もが最善と選んだものが、結果最悪であっただけなのです。さぁ、兵士長殿。今から選べる選択を少しでも最善のものと致しましょう』
 そして、私は気がついた。この人達はアラハギーロの元兵士、つまり魔物の姿になってしまった人間達なんだ。彼らは、ゴリウスさんを止める為に魔障の風に飛び込み命を落としてしまったんだ…!
 掴んでいた指先の感覚が、するりと失せた。私は慌てて掴もうと手を伸ばしたが、何もつかめない。そしてふわりと目の前に淡く輝く青年が立ち上がった。リリパットにザオを施した時に見かけた弓兵の男の人。彼は両手を広げ、風の中心に語りかけた。
『父さん。もう、終わりにしましょう』
 タジウスさんは弓を取り出し、天に向かって引きしぼる。放たれた輝く矢は、高く高く舞い上がり、鳥の姿になって天を穿つ。鳥は風を切り裂いて夜空まで届き、そのまま竜巻の中心に飛び込んでいった!
 瞬間。竜巻が四散した!
 聞いたことがある。優秀な弓使いはたった一撃で戦局を変える。怒りに突進する者を踏みとどまらせ、自棄を起こす者を我に返させる、ロストスナイプという粛怒の一撃を放つことができると…。
 竜巻が晴れ、星空の輝きがオアシスを照らした。その中に一人の男性が立っていた。彼は眉間に深くシワを刻み、不機嫌そうに口元を曲げた厳しい顔つきの男性だった。彼は周囲に集まってきた男達を見て、響き渡る声で叱責した。
『死なずにすむことを選ばず、自ら死を選ぶ…どいつもこいつも、甘い腑抜け揃いよ! 鬼のような上司など、優しくもない父など捨て置けば良かったのだ。貴様らは目先のことに囚われ、短絡的な思考しかできない愚か者どもだ…!』
 ひ! 酷い! 皆、命を捨てて貴方を救おうとしたのに…!
 でも、兵士達は叱責を嬉しげに聞いていた。『元気なことだ』とか、『これでこそ、兵士長』なんて言う人までいる。
『そこの娘。カレヴァンが連れていた、ホイミスライムだな?』
 ずばりと言い当てられて吃驚! 私は驚きすぎて頷くことしかできない。ゴリウスさんは私の驚きなんか知らない様子で、天を仰いだ。タジウスさんが雲を射抜いた為に、空は珍しく雲ひとつない星空だった。
『今宵は美しい星空だ。この愚か者共が昇天の梯を昇れるよう、祈ってやってくれ』
 うーん。言い方はキツイけど、部下思いなんだよね? それに、人間の姿だって言うのに、ホイミスライムって普通見分けだって付かないだろうに、私を『カレヴァンさんのホイミスライム』って言い当てちゃうんだ。他の人が思った以上に、皆を見ているんだろう。だから、慕われているんだろう。
 私は頷いて、心を込めて歌を歌った。歌声は輝く星屑になり、風に乗って天へ吸い込まれていく。兵士達は私に口々にお礼を言って、どことなく魔物っぽい仕草で手を振りながら風に乗って星空を目指し始めた。腕を組んで明後日の方向を向いている兵士長さんを、タジウスさんが引っ張って連れていく。
 最後にタジウスさんが私を振り返った。満面の笑みで、『ありがとう』と、彼は言った。

 砂塵と共に 舞い上がる
 死した魂 見送れば
 星々と共に見守らん

 星が降る夜 舞い降りて
 同じ時 生きるなら
 再び共に歩みゆかん

 アラハギーロで死者を送り出す、昔から歌い継がれた音楽だ。私を含めた魔物達は、昇天の梯を登った先を信じている。星降りの夜に転生して、死んだ先の世界を歩むことができる。そこには、死に別れたマスターとの再会があるのだ、と。
 人間達はわからない。彼らは梯を登った先、どうなるかを知らないのだ。
 酷くて、誰も救われない戦いだった。
 彼らが梯を登った先で、幸せになれるよう、私は心から祈った。


うおおおおおおおおおお!!!!!なんか!!!!最後、救われた気がするっっっっ!!!
もう、実際プレイした時は、『は!? なに!? 全員死んじゃうの!? 誰も救われないじゃん!!!!』とか激おこでしたからね! 魔物を盾にする作戦で激怒したベルムドさんは、立案したゴリウスさんを殺す。ベルムドさんは討たれて死亡したのを知らず、ゴリウスさんはベルムドさんに復讐せんと怨霊化。ゴリウスさん昇天させる為に部下が全員死んでしまうとか、もう本当に屍累々ですよ!もう、ほんっとうに誰も救われない。
これが戦争の悲惨さ、後味悪さって奴なんでしょうけど、本当にはぁあああ!?って叫んでました。
なんだかんだで、最終的にまとまって一安心です。これも全てセラフィちゃんの優しさがあってこそです。

アラハギーロ三巡目は、予想だにしない驚きのゲストが登場します。早く書きたい。
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