ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 過去を振り返っていた意識が、微かな衝撃に今に向く。
 音もなく滑らかに昇降機の扉が開くと、さらりとした闇が広がっていた。洞窟のような様々な生物をない混ぜた漆黒ではなく、ただ光が届かないだけの濃い影が闇となって澱んでいる。洞窟と違って空気は寒々しくさらりとしており、微かな水音に水の匂いが鼻を掠めた。
 闇に目が慣れれば、下から光が湧き上がっているのに気がつく。昇降機から飛び出した赤い猫耳が、光を覗き込んで歓声を上げた。
 エテーネ王宮は時見の神殿という聖域の上に建てられている。
 地上からは巨大な岩の部分が神殿であり、地上の王宮と同じかそれ以上の規模を誇る。光を吸い込んで黒く沈む特殊な石を積み上げ、最下層の祭壇から最上部までの吹き抜けを生み出す。石の隙間から淡い黄緑色の光が漏れて、幾何学的な模様を刻んでいた。遥か下方まで円形に吹き抜けた空間には、建物くらいの大きさから、ちょっとした大箱くらいのものまで無数の黄金の立方体が浮かんでいる。立方体を構築する面は凪いだ湖面のように平らで、黄金の輝きに目を凝らせば精緻な模様が隙間なく施されているのが見えるだろう。まるで水の中で攪拌されているように、巨大な立方体の周りを小さい立方体が回っている。
「浮かんでいるのが、エテーネ王国の神具だ。災害や飢饉の訪れを事前に予知し、対策を講じる事で被害を最小限に押さえ、多くの民を助けてくれた存在だ」
 猫耳の後ろから見下ろしていたルアムが首を傾げると、夕暮れの瞳が朝焼けに燃える。
「神具の力を借りないと、未来が見えないんですか?」
 変な問いだったが、俺は『いや』と小さく首を振った。
「時渡りの力が優れている者の中には、神具の力を借りずに未来を見れる。しかし神具と交信し望んだ未来を引き出す力が優れた司祭の子孫が、今日の王族を務めている」
 説明しながら、緩やかに降る坂道へ足を向ける。螺旋状に坂道を下っていくと、水が滝となって落ちるのを裏から見る。滝は細やかな雫となって最下層に降り注ぎ、神具の黄金を煌びやかなものにする。光は黒い神殿を藍色に切り取り、柱の黒とで二分して神秘的な雰囲気を醸した。
 神具同士が共鳴する不思議な音と、ふわふわとした空気の流れが肌の上を這いずる。
 最下層は水がくるぶしまで浸かり、硝子張りの床は頭上に輝く神具の光を照り返していた。さらさらと降り注ぐ霧雨のような雫が、神具の光を受けて丸く虹を描く。レナートが丈の短い外套のフードを被り、プクリポが身を振ってぐっしょりと濡れた毛皮から水を吹き飛ばす。
 ここが時見の祭壇の筈だが、父上の姉さんの姿も見えない。
 姉さんはどこに? 視線を巡らすと、流れ落ちる雫に逆らって金色の光が立ち上っている。ふわりふわりと淡い光の球が、最も大きな神具に吸い込まれるように向かう。その光の元を目で追うと、ガラス張りの床の端に設られた装置に辿り着く。同じ装置がいくつもある中、それだけが稼働しているようだ。
 嫌な予感に急きたてられ、ばしゃばしゃと水を跳ね散らかして近づく。この神殿と同じ光を吸い込む黒い素材でできた装置の内側から溢れる光から、人の影が像を結ぶ。紫の髪が赤銅色に炙られ、明るい色のドレスが光に透けて溶けている。
 誰か。確認するまでもなかった。
「姉さん!」
 目を閉じ、薄く開いた唇。触れようとした手が、見えない何かに遮られる。
 よく見れば硝子が姉さんの体を覆うように、装置に嵌め込まれている。素早く目を走らせ、手元の高さにある菱形の光に手を振れれば、硝子が上にスライドして外れる。膝が折れない絶妙な角度の傾斜に身を横たえる姉さんを抱き上げる。
 固く閉じられた目は震える事なく、唇は呼吸をしていないかのように微動だにしない。それでも抱えた姉さんの体は冷え切ってはいたが、弱々しくも鼓動を感じていた。外傷は目に見える限りなく、ただ意識を失っているだけのようだ。
「装置に触れるな!」
 吐こうとした安堵の息が、胸の奥で痞えた。

はーい!今回の舞台捏造ですよぉ!!!
神秘さをマシマシでお送りしてみた!

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