ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 一体、エテーネ王国に何が起きたのかしら?
 ルアムから私が意識を失っている間の事を聞いたわ。クォードと時見の神殿に私を助けにきた事は、雪山に倒れていた時に肩に掛かってたクォードの上着で察せられた。クォードと父が対立し、殺し合いに発展した事も予測はできていた。最も驚いたのは、パドレ叔父様が父に致命傷を与えたというもの。
 あり得ない。あり得ないわ。
 叔父様はエテーネ歴代最高の時渡りの使い手と評されるが、決して自身の力を驕ったりしなかった。人望厚い叔父様は王座も望まれる傑物だったけれど、父の戴冠を誰よりも望んでいた。妻と生まれる我が子の事を溺愛して、隣国の災害に我が事のように胸を痛める優しい人。
 民を害し神聖な時見を私物化した子供達ですら見放す王を、叔父様は最後まで諌める人よ。痛烈な憎悪を向けられようと、殺意を伴う暴力を振るわれようと、叔父様は殺す選択肢は選ばない。そう断言できる優しいパドレ叔父様。
 故郷の消失と叔父の心変わり。同列に扱うには違い過ぎるのは分かっている。
 それでも、決して見逃してはいけない、真実を見つけなくてはならない問題だった。
 重い沈黙を破ったのは、新たに地図を取り出して広げたヒストリカだった。陸地は濃い線で縁取られ、同じ高さを線で繋いだ等高線で高度を描く、先ほどの地図に比べれば精密な地図らしいものだ。方角を示すのはコンパスで、方向を示す線が地図の端へ伸ばされている。
 相変わらずエテーネ王国がある島は存在しない。落胆しそうになった私は、エテーネ王国がある辺りに点と描かれたものに目を留める。島と呼ぶには小さすぎる。しかし、その点はエテーネ領土だろう場所に存在していた。
 私が目を留めた島に、ヒストリカは そっと指先を向ける。
「この島は『マデ島』と呼ばれている。地名に心当たりはないか?」
 マデ。マデ島。私は言葉を口の中で転がす。
 マデの響きは確かに覚えがあった。
 目を閉じ、小さい頃の私に戻って記憶を遡る。たくさんの先生の顔が時に笑顔で、時に厳しく、歴史、地理、錬金術の知識、マナー、帝王学、エテーネの時期国王として必要なありとあらゆる知識を授けていく。与えられた一つ一つの言葉を、幼い私の中から汲み取っていく。
 ふっと目を開け、暗闇に浮かんだ温かい灯りをぼんやりと見つめる。
「…マデ神殿」
 そうだ。私はヒストリカの指差す場所と、脳裏に描いたエテーネ王国の地図を重ねる。
「確かに、この辺りにマデ神殿があったはず」
 マデ神殿は建国からキィンベル上空に還都するまで、王宮として機能していた場所。しかし、遺跡の老朽化による危険が高まったとして、王族以外が立ち入る事が許されない禁足地となっている。私もこの地に実際に訪れた事はないわね。
 確かに立地的に大エテーネ島からは少し離れた場所に存在する島だけれど、どうしてこの地域だけが現代に残っているのかしら?
 神殿か…。ヒストリカが顎を撫でながら呟く。
「この絶海の孤島は現世の柵から逃れ、神に身を捧ぐ修道女達が暮らしている。大規模な遺跡を礎に造られた修道院で、複雑な海流の関係で数回程度だが調査が行われている」
 おそらく、エテーネに関係があるかもとヒストリカも睨んだのだろう。手に取って手繰る資料を見ながら渋い顔をする。
「まぁ、お察しの通りエテーネに関連する事柄は発見されなかった」
 五千年。その年月を私は時渡りの力で生きて跨いできたというのに、時の流れは残酷なまでに全てを流し去ってしまった。
 私は一体、どうすればいいの?
 父は娘を犠牲にするやり方は顰蹙を買ったが、王国の滅亡を回避する為の先見を望んだ。つまり、父はエテーネ王国の滅亡を時見の箱を介して知っていた事になる。
 この世界を破滅に導く繭と、共に行動するパドレ叔父様。
 時代が違えど、エテーネ王国の滅亡と、アストルティアの滅亡は関係性があると思っていい。
 メレアーデ嬢。ヒストリカが私の手を両手でしっかりと握った。
「エテーネの民であり王族である貴女が行けば、新しいディスカバリーがあるかもしれない」
 顔を上げると、きりっとした切長の目元に真摯な光を湛える紫水晶の瞳が美しかった。肩で切り揃えた金髪は暖かい光に照り出されて、赤金のように燃えている。その色の白い顔に浮かんだ表情には、謎を明らかにしようと燃える決意で満ち溢れているの。
「私とマデ島へ赴いてはくれないか?」
 あぁ。私は息を吐く。
 五千年の間に何があったかは知らないけれど、エテーネ王国は確かに存在した。それを誰よりも分かっている私以上に、この子はエテーネの存在を信じている。この何も残されていない現代から、過去を手繰り寄せる揺るぎない力となっているのね。
 ヒストリカの手に空いた片手を重ね、ぎゅっと握り返す。ぼっと血と驚きが巡った顔に、私はにっこりと自然に溢れた笑みを向ける。
 私から、そうお願いするべきだったわね。


マデ島にもっとスポット当たるべきだよね!!
ってことで、メレアーデ嬢組はここから切り込んでいきます。

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