ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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ゾンガロンの驚きの声が真っ白い光の向こうから聞こえ、徐々に光は薄れて大空洞は夜空のような闇が戻ってくる。大滝の飛沫で濡れた岩肌に残った煌めきが、満天の星のように見渡す限りに広がっている。その僅かな明かりを頼りに、俺は鏡を覗き込んだ。
そこに映るものに、俺は息を呑んだ。
鏡にはぎょろりとした目玉と、腕が発達しすぎてバランスに欠いた異形の魔獣の姿はない。艶のない白髪がぼさぼさと顔の上に覆いかぶさり、目深に掛かる前髪の奥に薄氷の瞳がぎらついているオーガ族の男がいる。ゾンガロンの前腕をそのまま嵌めたような隆々とした筋肉、赤い肌は何者をも受付ぬ鋼のような印象を与えた。しかし、前髪に隠れていない口元に浮かんだ笑みは、間違いなくゾンガロンである事を示すような邪悪で残虐を隠そうともしない。頭を口に放り込んだ腕には、かつて真剣に選んだ輝きが嵌まっている。
俺の記憶とは似ても似つかぬ、憎しみに歪んだ顔。
それでも、特徴は疑いようもなく似ていた。
「貴様のその腕輪は、父の誕生日に俺が贈ったものだ」
嘘だと思いたかった。
王国や部族間の激しい争い。滑落は死を意味する断崖絶壁、全てを凍てつかせる極寒の猛吹雪、渦を巻く激しい海流。強き魔物達。オーグリード最強と名を馳せた王であっても死ぬ理由は沢山あった。父が行方不明になる頃と、ゾンガロンが初めてオーガ族を襲った事が確認された頃が近い。父はゾンガロンに殺されたか、滑落などの事故で死んだのだろうと思っていた。
しかし、ゾンガロンの腕には幼き日に父に送った腕輪が嵌められている。どんなに意匠が似ていても、見間違える事はない。父が俺の贈り物を身につけているという喜びから、腕輪に付けられた大小の傷の形や数を覚えていたからだ。
ゾンガロンに殺され、その腕輪を戦利品として奪われたのだと心のどこかで願っていた。しかし、ラーの鏡は俺の願いを真っ向から否定する。ぼぉりぼぉりと無遠慮に頭蓋骨を噛み砕く音が、込み上げる絶望の色を濃くする。
カラカラに干上がって硬い舌と上顎を動かし、どうにか唾液を出して飲み込んだ。
「貴様は我が父、ゾルトグリンだな?」
ゾンガロンは『ほほぉ…』と感心ではなく、呆れた声を尖らせた唇の隙間から漏らした。
「気色悪い。ゾルトグリンなど捨てた名よ」
腕に比べれば短すぎる足を地面につけ、ゾンガロンはもたれ掛かった体を起こした。殺意はなく、ゆっくりと俺の前へ歩み寄ってくる。手を伸ばせば喉を掴めるような距離で、ゾンガロンは俺の顔を覗き込むように見上げた。うっすらと開いた歯の隙間から、鼻が曲がりそうな生臭い血の匂いがする。
「その確認に何の意味がある? ギルガラン、貴様こそ何の意味がない事を知っているだろう?」
ゾンガロンの言う通りだ。
行方不明の父がゾンガロンであった事実を知って、何が変わると言うのだ? 父がゾンガロンという獣に身を堕とし、祖国を滅ぼそうとしている未来は変わらない。そこへ至る理由が如何なる内容であったとしても、俺はオルセコの敵を殺す事を躊躇ってはならない。
「我は力を求め力を得た。この姿こそ、我の真の姿よ」
俺を頭から胸まで丸呑みしてしまいそうな大きな口が開き、腹の中から凄まじい悪臭がする笑い声が暴風となって俺の顔に吹き荒れた。心の底から愉快な笑い声が、悲しいくらいに父ゾルトグリンと重なって聞こえる。
「貴様の父がオーガ族を滅ぼす厄災である事に苦しめ! 悪鬼である我を心の底から憎むが良い! この瞬間我を殺さなかった最悪が、訪れる未来に恐怖しろ!」
ゾンガロンもいっぱい煽ってくるね!
本当にギルガラン王子ってどうしてラーの鏡でゾンガロンの正体暴きに行ったのか謎。
もちろん、腕輪が父親のもので、ラーの鏡で正体を暴けば父親が元に戻るって希望も微レ存ではあるがあっただろう。でも、公式でも正体がわかっても、殺害する意思が揺るがなかったので希望を本当に抱いていたのかは謎なのです。
そうなると、この行動は意味がないと理解しつつ、やってしまったことなのです。
そこは、締めでまとめます。
拍手に感謝!反応遅くなってしまいましたが、ぱちぱちっとありがとうございます!
