ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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こんなに走った事など、生まれて初めてだ。
樽宛らに蓄えた腹の贅肉が、走る毎に上下に激しく揺れて膝に伸し掛かり激痛を走らせる。四十肩の痛みに満足に触れぬ腕を、水の中でもがくように振って少しでも早く進もうとした。しかし、尻から太腿にへばりついた肉は砂を詰めたように重く、私に座って休ませようと限界をちらつかせる。肉をまとった首は顎と胸を繋げ、隙間に流れ込んだ汗を集めて滝として下半身に向けて放流した。心臓はこれ以上もない程に激しく脈打ち、豊満な胸を小刻みに振るわせた。王立アルケミア所長である、このヨンゲの優秀な脳を血流は潰す勢いで揉んでいる。
はっ。はっ。熱い息遣いが空間に響いている。覚束ない駆け足で激しく揺れる視界に映るのは、エテーネ王国の叡智が集う場所とは思えぬ凄惨な空間だった。
天使の羽で織られたと評判の極上の柔らかさを持つ絨毯は、夥しい血を吸って乾き、最早、廃墟に放置された床板のようにガタガタと波打っていた。壁は芸術家が真紅の塗料をぶち撒けたように、芸術的な線で彩られている。
床に転がっているのは、王立アルケミアで研究をする事を許された栄誉ある錬金術師達。ある者は胴体を切断されて絶命し、ある者は手足を断たれて失血して息絶え、ある者は踏み潰されて体がひしゃげた後も通路の真ん中にいた為に細かな肉塊と成り果ててしまった。
息を吸えば口の中に血が溜まるような、濃厚な血の匂いで溢れかえっていた。
どうして、こんなことになった? いや、理由は分かりきっている。
口封じだ。
王立アルケミアで研究されていた戦闘向きの魔法生物が残されてさえいれば、全滅は避けられただろう。しかし魔法生物を取り上げられてしまえば、錬金術師は魔力に優れた魔法使いだ。身体能力は優れてはおらず、距離を詰められ攻撃されれば抵抗できずに致命傷を負う。魔力が尽きれば赤子と変わらぬ。
魔法生物の破棄を強いたのも、研究者達を皆殺しにする為だったのだ。
私はどこの研究棟の錬金術師か知れぬ手を踏んで、大きくよろけた。所長である私を煩わせおって! 罰として手を蹴り飛ばすと、勢いよく壁に激突した。
想像以上に大きな音がして、私は体を硬らせた。ずずっと建物が揺れ、窓硝子が音を立てて軋む。
恐らく、最後の抵抗をしている研究棟で戦闘が始まったのだろう。私達を襲撃している連中は大きな物音に惹きつけられているようで、先進研究区画に向かう廊下は耳が痛くなるような静けさだった。先進研究区画から証拠を回収し、所長室から逃げ出すのだ。転送装置が生きていれば、先進研究区画から所長室に飛ぶ事が出来る。この先にある扉に飛び込んで閉鎖できれば、私の勝ちだ。精々、派手に暴れて注目を集めてくれたまえ。にまりと笑みが浮かぶ。
アルケミアの研究者達を皆殺しにし、全てを闇に葬るつもりなのだろう。
だが、私が生き延びれば全てが水泡と帰す。
「何が何でも、生き延びてやる!」
そして全てを明らかにし、計画を台無しにしてやるのだ!
王立研究所惨殺事件編が始まりました!
前後編で、前編はヨンゲ所長です。卑しい感じを頑張って出しています。
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