ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 ドミネウス様には、メレアーデ様とクオード様という二人のお子様がおられる。ドミネウス様が王冠を返還し、我が主であり第二王位継承者であるパドレ様が帰還なさらぬ場合、メレアーデ様とクオード様の順で王位が譲り渡される事になる。残る王位継承者はパドレ様とマローネ様のお子様が挙げられるが、まだ乳飲み子で継承権が発生していなかったはずだ。
 メレアーデ様もクオード様も心根の真っ直ぐなお方。父親の狼藉に衝撃を受けるであろうが、毅然とした態度で事態を直視できる強さを持っておられる。お二人ならば、この証拠を手にドミネウス様の間違いを正そうと立ち上がってくださるだろう。
 特にエテーネ王国軍軍団長を担うクオード様は、異形獣の問題に奔走しておられる。この証拠に書かれた、魔力を抜かれた者へ魔力を戻す方法は多くの被害者を助けるに違いない。クオード様ならこの証拠を確実に守り抜いてくださるはずだ。
 導き出された結論に大きく頷くと、自分は少年の肩に手を置いた。
「礼を言う、ルアム。其方のお陰でこの証拠が、研究者達の死が無駄にならずにすみそうだ」
 少年が柔らかく微笑むのにつられ、自分も頬が緩んだ。
 肩に置いた手を離すと、自分は部屋の隅に置かれた大きな硝子の筒の前に立つ。異形獣ことヘルゲゴーグの資料にあった、角の宝石に蓄えた魔力を抽出する装置だ。硝子の筒の蓋の部分に専用の器具を付ける事で、抽出した魔力を人の体に戻したり、時渡りの力を精製する事ができるらしい。専用の器具は硝子を傷つけぬようヨンゲのものだろうローブで包み、筒の中に入れておく。証拠も散らからぬよう箱に収めて紐で縛って放り込む。硝子が割れぬ為に付けられた金属の格子に手を掛けて担ぐと、少年に向き直った。
「兄さんが所長室に繋がる転送装置を見つけています。そこから所長室の秘密の通路を渡って、脱出しましょう」
 自分達が証拠を捜索している間に、周囲を探索し、異形獣が扉を打ち破ってきた際に即座に知らせる為に、部屋の外に待機してくれていたのだろう。プクリポらしい明るい剽軽な態度だが、細やかな心遣いがありがたい。
 自分が頷いて研究室の扉を開けると、少年に名を呼ばれる。
「国王陛下は、どうしてこんな事をしたんでしょう?」
 兄上は、なぜ、こんな事をしたのだろう?
 主の声と少年の声が、悲痛な響きを重ねた。
 この世界で最も発展し、栄華を誇るエテーネ王国の玉座。そこに座って手に入らぬものなど、何一つない。王の資質を持つ二人の子供は賢く、類い稀な才能で父王を支えておられる。王弟であるパドレ様は王位に関心はなく、ドミネウス様を強く支持していた。堅実なドミネウス様の治世が続けられれば、エテーネ王国の輝かしい歴史に名を刻み賢王と評価されたに違いない。
 それがどうして異形獣を使役し、民を苦しめているのか?
 何かしら理由が存在しなければ、こんな悪行に手を染めはしない。
 ドミネウス様に直に問いただしたとて、納得する答えは帰ってこないだろう。そう正直に返せば、この少年も、己が想定する主の反応も悲しみに沈ませてしまう。だが、このファラス、偽りを申す訳にはいかぬ。だから、こう答えるしかなかった。
「わからぬ」
 頭降った脳裏に浮かんだのは、『時の指針書』に書かれた時渡りの力という言葉。このエテーネ王国の栄華の象徴であり、王族の証と言える力。それが、脳裏を離れない。
 時渡りの力は、人々を幸せにする為のものではないのか?
 その疑問に己は『わからぬ』と答えた。


王立研究所惨殺事件編終了!おつかれさまでした!
パドレさん全力でわからないなーって思ってるだろうから罪深い男よ。

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