ハコの厚みはここ次第!
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■ Profile ■
稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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博士の助手のクロニコが淹れた紅茶が行き渡り、エンジュが持ってきた茶菓子が並べられる。私達が互いに自己紹介する様子を、ファラスにやんわりと肩を押さえられ椅子に座らされていた博士は呆然と眺めていた。もそもそとセレドで買った焼き菓子を口にし、突然博士は叫んだ!
「げんじつ!」
私の仲間は嘘を申しませんわよ! そう、頬を膨らませて怒るエンジュに、博士はソーリーソーリーと頭を下げる。すっかり憑き物が落ちた博士は私達に自己紹介をし、背後に用意していただろう箱を手に取ってテーブルの上に置いた。
「エンジュからの手紙で、大まかな事は知らされている。先ずは、これを見て頂こう」
持ち運びやすい手頃なサイズの木の箱を開け中の布を解くと、一眼で古いと分かる手帳が入っている。表紙である皮は真っ黒に汚れ、紋章が箔押しされているようだけれど箔押しされた部分は完全に剥がれ落ちている。それでも箔押しで凹んだエテーネ王国の紋章が、灯りに照らされて浮かび上がる。表紙を補強する金属はボロボロに錆びて辛うじて体裁を保ち、中にある紙も茶色に変色してしまっている。
これがエンジュの言っていた、リンジャハルの厄災に遭遇した時期に書かれたファラスの手記なのね。劣化の具合に、私達の時代がいかに遠いか実感してしまうわ。
ヒストリカは布の手袋をして慎重に手帳を取り出すと、ぱらりと表紙をめくった。雑に扱えば紙は粉々に砕け、頁がバラバラになってしまいそうな危うさがあった。
「これは五千年前に記された、ファラスというエテーネ王国の従者の手記だ」
この場全員の視線を受け止めたファラスは、明るい空色の瞳を僅かに見開いた。なんと…。声にはならないけれど、唇がうめくように動いた。
ファラスは今は粗野な見た目だけれど、細やかで筆まめな人なの。生真面目な叔父様の従者らしい丁寧で美しい文字で、叔父様と訪ねた遠い異国の事を書き綴った手紙を何度もくれたわ。今も日記を書き綴っていて、それは記憶を失った彼を確実に支えている。
ファラスの前にひらりと紙が舞い、コトコトとインク瓶や羽ペンが置かれる。
「勿論、同じ名前で同郷の別人という可能性もある。筆跡鑑定をしたいのだが、何か書いてもらえないだろうか?」
無骨な手がサラサラと美しい文字を書いていく様を、皆がじっと見つめている。
何時如何なる時も、主に従い主を守る。従者が主となる王族へ忠誠を誓う文言が綴られ、ファラスの名前が添えられる。すっと回転させてヒストリカへ向けると、ヒストリカは可愛らしい黄色い鳥のルーペを手に文字を鑑定し始めた。
筆跡っていうのは、同じものが二つとないくらい個性が反映されるんだよ。手記に記された文字は膨大で、衝撃的な事実を記載している時も文字の揺らぎが少ない。ヒストリカはファラスという人物は武術に長けた真面目な人物で、従者という肩書きを裏付けるって言ってたっけな。そんなクロニコの解説を聞いている間に、ヒストリカは顔を上げた。
「貴方が書いたもので間違いないようだ」
そう言うが早いか、ヒストリカは椅子を立って膝を折り深々と首を垂れる。驚く私達を後目に、金色の旋毛から真摯な訴えが響いた。
「ファラス殿。この手記は考古学学会で捏造と断定された品だが、リンジャハル崩壊において非常に価値ある証言が記載されている。今後の研究のため、是非、このまま私に管理をさせてはくれないだろうか?」
私は古い手記に視線を落とす。
この時代においては五千年前の出来事を知る手がかりだが、私達の時代においてもリンジャハルの厄災を語る重要な資料だ。彼の地に赴き死んでいった身内の最後を知ろうと、多くのエテーネの民が王宮に嘆願書を出した。死体が上がっていない為に一縷の望みをかけ、大切な者の時の指針書の再発行手続きも少なくはなかったと聞いている。
ファラスの報告は国の公的文書として残され、閲覧を求めれば誰もが知る事ができる。
しかし、お父様が異形獣を繰り民を襲っていたという事実を知った今、国の公文書は果たして正しいのかしら? 裏には私達が知らなかった真実があって、この手記は真実への手がかりではないかと思ってしまうの。
いいえ。私は首を緩く振った。
知りたければヒストリカの元を訪ねればいい。エテーネの外へ開かれていく情報を、我が国の物だと抱え込む事は公平ではないわ。むしろエテーネ王国と無関係な彼女だからこそ、真実を明らかにしてしまうでしょう。
ファラスが膝を折ってヒストリカの顔を上げさせ、了承の旨を告げる。雲のように囁いた誘惑が輝く太陽に霧散していくのを感じて、それで良いと呟いた。
メレアーデ嬢だと文章量が増えるワカメなのかな??????
再びのファラスの手記です。中身はver2の話を参照ください。
まぁ、目の前に執筆者が現れるだなんて、挙動不審になるのも致し方ないだろう。私だって持ってる本の筆者さんが目の前に突如現れたら『ファッ!!!???』ってなる。変な声を出さなかったヒストリカちゃん偉いわ。
拍手に感謝!パチパチっとありがとうございます!
