ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 視界が黄金に眩み、ぐつぐつと煮え沸る黄金の熱が顔を舐め上げる。処刑台の前に設られた黄金がなみなみと注がれた釜は、大きな幌馬車がそのまま入ってしまう巨大なものだ。
 僕は空気を含んで頬を膨らませると、舌の下から固い感触を引き出して唇の真裏に当てがう。
 故郷でやった西瓜の種飛ばしの要領で、一つ輝きが口から飛び出した。
 メレアーデ様の愛猫チャコルが運んできた『命の石』が、きらりと一つ瞬いてぽちゃりと沈んだ。まるで濃厚なコーンスープのようなとろみに緩く弧を描くと、ぷつぷつと沸騰する泡が何事もなかったかのように湧き出してきた。
「貴様! 一体、何を…」
 怒りの声を迸らせたベルマが、ナイフを素早く振り上げた。しかし、いつまで経っても振り下ろされない。振り下ろせなかったのだろう。
「罪深き罪人に黄金の審判を!」
 人々の声が地鳴りのように響く。ある者は笑顔で死を望む声を上げ、ある者は復活した極刑に興味津々と視線を注ぎ、ある者は己よりも弱い立場である罪人に対し嗜虐的な笑みを浮かべている。それらが次の瞬間、凍りついた。
 嵐の前の静けさ。そんな不気味な静寂だからこそ、誰もがはっきりと感じ取った。
 足の裏から微かな振動が這い上がってくる。それを自覚した時には、大きくどっしりとした錬金釜がぐらぐらと揺れ始めた。黄金がびしゃびしゃと錬金釜の縁からこぼれ落ちたのを見て、バディントが『うおっ! もったいねぇ!』って声が後頭部を叩いた。
 皆が錬金釜から目を離せない中、釜から天高く黄金が噴き上がった。溶けた黄金の飛沫を浴びて熱い熱いと悲鳴が上がる中、元凶が黄金の中から現れる。
 大きな大きな手。金塊を積み重ねたごつごつとした手が、捕まる所を探して僕目掛けて手の平を振り下ろす。僕が素早く下がると、目の前で舞台が破壊され砕けた板が舞い上がる。僕が回転してベルマの緩んだ手元から鎖を抜き取ると、そのまま大きく飛び退る。ベルマが気がついた時には、振り回した手の平に薙ぎ払われて吹き飛んでしまった。
 サーカスのイリュージョンのように華麗に手枷から手を抜いた猫耳君が、花びらのように手の平を避けて煮え沸る黄金の中に『命の石』を投げ込む。どんと音を響かせ腕を振り回す巨大な上半身が錬金釜から押し出され、錬金釜ごと横倒しになった! ざばりと流れ出す黄金から、ぬるりぬるりとゴールデントーテムが生まれ、集まった群衆の中を駆け巡る。
 錬金釜からようやく下半身が抜けた巨体は、ゴールドマンとなって立ち上がる。
 黄金の巨人の背後で錬金釜は大きくヒビが走り、真っ二つになった残骸からゴールデンスライムが誇らしげな顔で現れた。
 民衆達の悲鳴が上がり、我先にと背を向ける。転んだ者を踏み締め、足の遅い者を押し退け、進めずに足踏みする者の肩に乗り上がって踏みつけて逃げ出してた。
「すげーな! もう、処刑どころじゃねーな!」
 おでこに手を翳して遠くを見る猫耳君に並んで、バディントがガタついた歯並びを見せびらかして豪快に笑う。いく筋も古傷が走る筋肉隆々の腕で、手の平に拳を打ち付けると景気の良い音がした。
「で。どうするんだ? 逃げちまうか?」
 その言葉に僕達は改めて前を見る。逃げる人達が巻き上げた砂埃に乗じて、姿を眩ますのは簡単そうだった。人々が殺到すると思えば、紛れて転送の門を潜れるだろう。冤罪とはいえここに残っていれば殺されるんだから、逃げない選択はなかった。
「皆さん、こっちへ!」
 突然横から掛けられた言葉に、僕達は弾かれるように顔を向けた。


ゴールドマン以外にも出てきちゃったのは、稲野の趣味です。

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