ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 俺は悪鬼と呼ばれ残虐の限りを尽くす獣の強かさに、言葉を飲み込んだ。
 グリエは父王が行方不明になってまだオルセコが不安定だった頃、友好関係を結んでいた部族や王国に悪鬼討伐の協力を求める書状を送っていた。オルセコに訪れる闘士や商人達にも書状を持たせ、交流のない王国にも力を合わせ悪鬼と戦う旨を伝えようとした。長年の敵であるドランドにも、同様の書状が送られていた。当時の俺はグリエがオルセコの強さを信じきれていないのだと思っていた。
 その書状が全て受け止められ、オーグリードの総力でもって悪鬼にぶつかっていたら、きっと今のような状況には陥っていなかっただろう。数は暴力。遠くから矢と魔法を放ち、例え隣人が鬼人に成り果てようと誰かが押し留めていれば、別の誰かがゾンガロンに一撃を与えることができたに違いない。俺でなくても、各部族の長、王国の王、一騎当千の猛者の誰かが成し遂げたに違いない。
 しかし、今はもう、無理なのだ。
 オーグリードの各地に名を轟かせた王国は軒並み滅ぼされ、小さい部族は散り散りになった。最も戦力を残したオルセコでさえ、俺が単独で挑む事が最善と呼べる程に追い詰められている。ゾンガロンの言葉通り、オーガ族は小さな自尊心の為に滅びようとしているのだ。
 しかし、ガズバラン様は我らに好機を与えてくださった。
 この獣を殺す絶好の機会。
 ゾンガロンは俺をデザートと言い、今は食べぬと言った。俺が悪鬼を殺す気で襲い掛かれば、悪鬼は俺に反撃せざる得ないだろう。その時、俺が強ければ強いほど、悪鬼の選択は究極の二択となって眼前に突きつけられる。
 デザートを最高の状態で食べる為に、急所を外すべきか。
 今殺されぬ為に、不完全で不味いデザートでも食ってしまうか。
 普通なら生きる事を優先するが、ゾンガロンはそうではない。言葉の端々に食への拘りを滲ませる獣にとって、今、俺を生かすか殺すかは隙を生じさせるには十分な二択になる。一瞬であれ、俺にとっては十分な隙だ。
 何を迷う事がある!
 殺せ!
 ゾンガロンを! 今! ここで!
 俺は食いしばった歯を開け放つと、声が迸った。
「俺を見ろ、ゾンガロン!」
 手に持った布を取り払い、ゾンガロンへ突きつけた! 大滝の飛沫が反射した僅かな光を吸い込み、ラーの鏡から放たれた閃光が闇に浸された大空洞を塗り替える!

思った以上に長くなってきてしまいました。

 厚手の布に包まれた平たく丸いもの。太陽神の祝福が施された鏡で、真実の姿を映す『ラーの鏡』という宝だ。父の代に献上され、副葬品として埋葬された一つなら偽物ではあるまい。
 手元をちらりと見遣り、ふっと白い息が漏れる。
 弟のグリエならともかく、この俺が、こんな回り諄い事をするとは想像もつかなかった。俺の前に立ち塞がる敵は、どんなに切実に命乞いをしようと、どんなに信頼できる存在であったとしても、例外なく冥府に叩き落とすだけだ。
 この鏡で真実の姿を露わにしたとして、何の意味があるのだろう?
 最低限の警戒をして弛緩した意識の中で、そんな疑念が浮かび上がる。
「デザートはまだ早い」
 鼻先を血の匂いが掠める。俺は呑気に思考に耽った意識を引き締め、グローリーアックスを握る手に力を込めた。血潮が駆け巡り、ひんやりと漂う冷気が吹き払われる。
 鬼岩城の最も高き場所。オーグリードを滅亡へ追いやる悪鬼ゾンガロンは、轟雷王の玉座に肘を付いて座り、くちゃくちゃと肉を咀嚼していた。足元には肉片がこびり付いた骨が散らかり、夥しい血が滝の水飛沫と混ざってゆるゆると流れている。切断された鬼人の頭を掴んだ腕輪が嵌まった手を下ろすと、不味いものを仕方なく咀嚼しているような顔で俺を見た。
「聞こえなかったか? 我はメインディッシュを喰らっている最中だ」
 俺は不快感が込み上げるのを堪えられなかった。
 強さには自信があった。魔物達は俺が強敵であると察すれば、いきり立って襲ってくるか恐れ慄いて逃げ出した。例え敵対する王国であれ、俺の力量を見定めようと目を凝らす。戦士であれは強敵に感嘆の声を漏らし、子供や戦えぬ者は憧れに似た敬意を向けてきた。
 まるで道端の石のような扱いに、俺は今まで感じた事のない屈辱を味わっていた。そっと喉を通った息は燃える程に熱く、声が怒りに震えている。
「…俺をデザートだと言うのか?」
 そうだ。ゾンガロンが鬼人の耳を噛み千切り、噛みながら喋る。くぐもった声の合間に容赦なく咀嚼音が挟まる喋り声は、食らっている命に対する在らん限りの冒涜が詰まっていた。
「邪魔が入って、手駒にした鬼人共が使えなくなった。デザートをどのように美味しく調理するか、じっくりと考えているのだ。見逃してやるから、去れ」
 一瞥もくれず爪で目玉をほじくり返すゾンガロンに、俺は叫んだ。
「オルセコは滅びない!」
「そうか、それは良かったな。貴様のように己が国は滅びぬと宣った愚かなオーガ共が、殺し合う様を高みから見物してきた。結果は皆、我の腹の中よ」
 爪に刺さった目玉を指ごと咥え、ちゅぽっと引き抜けば唾液が糸を引いた。
「我を殺す機会を、貴様達は幾度も見過ごしてきた。その小さな自尊心を守る為に、な」

正体を知って何の意味がある?
今回のキーワードです。何度も出てきて、ちょっとうんざりしてしまいます。

 ランドンの雪解け水が大滝となって大空洞を二分する空間を、白い息がふわりと広がって消えていく。大滝の飛沫は大空洞に霧雨となって降り注ぎ、しっとりと濡れた岩肌が凍り付かぬのが不思議なくらい冷え切っている。
 いや、これからこの大空洞は凍りついていくのだろう。
 ドランド王国が滅んだ今、この大空洞は元の在るべき姿へ戻っていくだけなのだ。
 鬼人の死体とオーガ族の体を保ったドランド兵の亡骸が、互いに凄惨な状態で折り重なっている。五体満足な遺体など存在せず、首を落とされ、腕がもがれ、足を踏み潰され、胴に穴が空いてる。裂けた下半身から大量の白濁と血液が流れ出したまま果てたもの、崖から落ちて滝壺に浮くぶくぶくに膨れ上がった水死体が、悪鬼ゾンガロンに蹂躙されたドランド王国の最後を物語っている。この世の地獄を煮詰めたような臭いを覚悟していたが、冷気によって腐敗臭がそれほどではなかったのは幸いと言えるだろう。
 鬼人になったドランド軍の歓迎があるかと思ったが、もぬけの殻で拍子抜けだ。
 宣戦布告の通りオルセコへ向かったとして、それを心配するつもりは毛頭ない。オルセコに滞在する闘士達をグリエがまとめ上げているならば、鬼人の軍勢など敵ではない。
「…これが難攻不落と謳われた、強国ドランドの末路か」
 俺は感慨なく、足元に転がった敵兵の兜を蹴った。兜割を受けて頭頂部に大きな割れ目を作った兜は、硬い岩の上を何回か弾んだ後、柵の隙間から落ちて滝壺に飲まれていった。
 轟々と鳴り響く大滝の音を遠くに聞きながら、何者も阻む者のない鬼岩城の中を独り進む。
 ゾンガロンとの対決の際に、鬼人という敵になりかねない人数を引き連れるのは愚策だ。俺はゾンガロンに挑む時、必ず独りと心に決めていた。独りで戦うからこそ何者にも負けぬ実力であるべきと、全ての階級のチャンピオンを圧倒し、人一倍の修練を己に課した。
 オルセコ闘技城の舞台から見上げる筒状の空に向かって、太い腕が太陽へ突き上げられる。背に国章を刺繍した真紅のマントを翻し、大岩のような頑強な肉体が聳え立っていた。
 先王であり父ゾルトグリンを、俺は尊敬していた。
 オーグリード大陸各地から猛者を集めて開かれる武術大会において、各階級のチャンピオンを相手取って大立ち回りを繰り広げ、喝采の中で拳を突き上げる父は間違いなく大陸最強だったと俺は思っている。逞しい腕は躊躇いなく家臣を労わり、快活な笑みは民に慕われた。勇猛さと優しさを兼ね備えた名君であったと、誰もが口を揃えて讃えただろう。
 そう、全ては過去形。
 父は誰にも行先を告げずふらりと出かけ、帰らぬ人となった。
 普段なら生死も定かでない居もしない存在が、意識の端に上る事などない。そんな無駄な事よりも、体を鍛え精神を研ぎ澄ます方が余程有意義だからな。だが、その無駄が込み上げるのも、俺の手の中にある壊れ物の感触のせいだろう。

短くなるかなぁって思いながら、ギルガランとゾンガロン。

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 ハイラルの王族はリト族一番の弓の名手から、弓術の手解きを受ける。ゼルダ姫の弓術の師匠は、リーバルが優勝を収めた弓術大会の審判を務めた里一番の狩人だった。ハイラル王の師匠はもう里にはいないが、大人達なら誰もが知っている弓の名手だったはずだ。ゼルダ姫に子が生まれたら、リーバルに声が掛かるだろう。
 それを知っておきながら、王族の狩猟は娯楽だと心の何処かで馬鹿にしていたリーバルは、あまりに実践的で驚いてしまった。
 耳を澄まし、身を低くして森に溶け込む。獣の足跡を探し、足跡を読む。
 ハイラル王宮で豪華な衣装に身を包み、リト族に負けぬ胸筋を張って歩く王が膝を泥で汚し藪に潜り込む。勿論、先ほど薪割りをしていた森に溶け込む渋い色のシャツとズボン、森の中では光るほどに目立つ白髪を黒いフードの影に押し込んでいる。リト族の里長も狩人から引退してる思い込みも手伝って、国で一番偉い者が本格的な狩りをする姿に、開いた嘴がなかなか閉じなかった。
 ぎっと弓を引き絞り、息を詰める。
 獲物が王の漏らした殺気に、はっと顔を上げた。
 たぁん!と音を響かせて、鹿の眉間に矢が穿たれる。倒れた鹿に素早く近寄ると、解体用のナイフを取り出しさっと首を掻き切って血抜きを行う。その手際の良さにリーバルは感嘆の声を漏らした。
「お見事です」
 世辞ではなく、心の底からそう思う。
 一撃で獲物を屠り、喜びの声を上げるよりも血抜きを優先する、リト族なら一人前と評価される狩人だ。王はようやく真剣な表情を緩ませ、『リト族の英傑に褒められるとは、嬉しいのぅ』と冗談めいた口調でも喜びを露わにした。
 蔦を切って鹿の手足を結ぶと、よっこらせと担ぎ上げた。
 シーカータワーを用いて食料を安全な地域から運ぶことは出来ているが、陥落したハイラル城から撤退した兵士達の胃袋を満たすにはまだ心許無い。この鹿も解体されて兵士達の糧になるし、狩った獲物が血肉になるのは正しいと、リーバルは獲物を背負った王の大きな背を見上げた。
「少し前までは、良く取り逃がしておったよ」
 ご冗談を。そう返事をしようとしたが、切ない王の声にリーバルは黙り込んだ。
 ゼルダ姫の努力を、リーバルは高く評価していた。それと同時に、その努力が報われていない事もリーバルは知っていた。王宮ではゼルダ姫は『無能な姫』と呼ばれ、王は姫を貶す不敬を沈黙という形で黙認していた。
 リーバルは姫に同情していた。
 努力はリーバルだけが使える唯一無二の力になったし、村一番の戦士として同族から評価されていた。それは当然のことなのに、その当然が姫には与えられないことが不憫でならなかったのだ。
 勿論、王には王の事情がある。その事情は同じ英傑となり肩を並べる者達の方が詳しかったし、健気な姫君は王を決して責めなかった。姫様が責めないのなら、部外者の自分がどんなに囀ったとしても意味はないと若くともリーバルは弁えていた。
「娘と和解出来て、迷いが消えたのじゃろう」
 ほっとした安堵の声。
 確かに、王宮で会った張り詰めた感じでは、獲物にも逃げられてしまうだろう。そんな事は、弓を持たせてもらったばかりの雛鳥でもわかる事だ。あんなにも頑なな顔で近づかれては、雷が落ちると尾羽を腹の下に収めて震え上がってしまう。
 厄災が復活し娘の優しさに助けられた父は、封印の力が全てではないとようやく受け入れられたのだろう。娘も封印の力に目覚め、ようやく父と向き合うことができた。
 当然が、ようやく始まったのだ。
「それは、良かったですね」
 本当によかった。
 リーバルは心から同意しながら、何気なく弓を引いた。たぁん!と音を響かせて、木々の隙間を縫って鹿の眉間に矢が刺さる。リーバルが斜面を降りて、素早く鹿の血抜きを行う。
 にこりと笑顔を王に見せれば、王はむっと唇を尖らせた。
 狩人達の朝は、明日も早いだろう。

始まりの台地でリンクの先生してた王様めちゃくちゃ狩り上手だったので。リーバルも当然狩り上手いだろうし、張り合ってほしい願望がこもってます。
捏造かなりあるので鵜呑みはしないでほしいです。
元々最推しでしたがリーバルがすごく若くて、リンクやゼルダと同年代か年下かもしれないという話を聞いてまじか!!!!!!????ってなって今に至ります。

 女神が降り立ったと言われ、ハイラル最大級の大聖堂が建てられた台地。宿場町から階段を抜け大聖堂へ至る参道は美しい石畳が敷かれ、煉瓦を積み上げ白い漆喰を塗り重ねた美しい道が整備されている。参道の傍らには聖堂の預かり手である聖職者達の建物があるだけで、台地の殆どは手付かずの自然が残されている。天を貫くヘブラよりも低くとも防寒具なしで登るのは無謀な雪山に、心の臓を止めるほどに澄んだ雪解け水の湖。森は鬱蒼として多くの命を育み、魔物達でさえ我が物顔できぬ原始のままの世界がそこにある。
 そんな大聖堂から少し離れた場所に、使い込まれた丸太を組み合わせた頑丈な小屋が一つ。見晴らしのいい平原にポツリと生えた大樹の木陰に、ひっそりと隠されるように建っている。
 しかし、隠れる気がないと言いたげに、一定の間隔で音が朝霧の中に染み渡っていた。
 音の主はぶおんと無骨な樵の斧を振り上げ、切り株の上に置かれた不揃いな木の上に振り下ろす。慣れぬ者なら木の上に斧を当てる事すら難しいのに、音の主にかかれば子供でも出来るように易々と薪にかえてしまうのだ。
 大樹の樹皮に似た渋い色合いのシャツの上に、丈の短いフード付きの短い外衣。緩く波打つ真っ白い髪を一つに結わえ、滴る汗を使い込まれた手拭いで拭う。
「起こしてしまったかね?」
 その顔は威厳溢れる皺が刻まれているが、立派な体躯から溢れる生命力は若者のそれである。厄災ガノンの襲撃により辛くもハイラル城から撤退したローム・ボスフォレームス・ハイラルに見上げられた、若きリト族は小鳥のように喉を震わせて笑う。
「リト族の朝の早さはご存じでしょう?」
 他の種族と比べれば夜目が利かぬリト族は、夕日が沈む頃に眠り朝日と共に目覚める。勿論、リト族のみの集団なら不寝番も行うが、他の種族と行動を共にする場合は免除されることが多かった。
 枝から飛び降り、翼を一つ羽ばたかせてふわりと降り立ったリト族の英傑リーバルは、丸太の周囲に転がる沢山の薪の一つを手にした。申し分ない大きさの薪は、小屋の脇に積み上げられて乾燥されるのだろう。
「精神を研ぎ澄ますのに、薪割りは丁度良くての」
 そうなのですか。リーバルは当たり障りない相槌を打った。
 リト族は薪割りという重労働を、里の近くの馬宿に住み込むハイラル人に委託していた。リト族自前の暖かい羽毛のお陰で夜に火を必要としないが、食事の支度で薪は必要だったからだ。こーん、こーんと薪を割る音は、リーバルの望郷を掻き立てた。
 リーバル。リト族の若者が畏まる前に、王は二の句を告げていた。
「共に狩りに行かぬか?」

なんかアストルティアの星の執筆乗らないし、厄災の黙示録面白かった記念に10本くらいは書きてぇなぁくらいは思ってます。
私はハイラル王のめっちゃパワータイプでつよっっっっ!!!!ってなった人です。
両手剣で横殴ってガーディアンよろけさせそうで、その白髪はわざと色抜いてるんじゃないですか疑惑がある。めちゃんこ筋肉ついて強い。

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