ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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羽織が欲しいなぁーーーーー(鳴き声)
冬の装備として凄く良いショール買ったし、真冬もショールと分厚いインナーでホッカイロって最終兵器も使用せず乗り越えたが、羽織が欲しい。春先新作的な感じでレースの羽織があったし、下の着物が透ける感じとても素敵、あんな感じの羽織良いよね。
まぁ、何はともあれ、羽織難民ではあるのです。先日の骨董市でも全くと言って良いほど羽織がない。あのレースの羽織買おっかなーなんて思いながら、まだまだ先かなーなんて思っていたんです。
時は決算年度末。きものやまとさんも決算セールということで、とってもお安い品を呼び水にのこのこ行く訳ですよ。でも、今回は新しく買った帯に合わせる三分紐とあげ帯買うんだって固い決意でお財布の紐だってガッチリ締めてるんだ! 胸元にトマトソース一滴飛ばしてしまった木綿ちゃん洗濯機に掛けてお怒りの皺まみれになったのをえっちらおっちら伸ばしておりますが、次の着物は母の振袖を直して着るって決めてるんだ!高い買い物はしないぞ!!!!!
『この反物で羽織を仕立てるのも良いですよね』
青天の霹靂な一言でありました。
え? 仕立てる? 羽織を???????
いやいやいや。そういえばそうだよね。稲野の着物知識が主だった漫画でも、反物から羽織お仕立てしてたよね。いや、でも、なんだかレースの羽織が先入観にガッチリ食い込んでて、既に羽織として出来上がってるものを買うんだと思っていたが、お店に羽織なんて全くないですよねぇええ!!!!!そうか!反物から仕立てるのか!!!!なるほど!!!!!!
既に頭の中が小物買うモードだったのが、羽織お仕立てモードにスイッチ切り替えられ、さらにセール品で値段がお安くなった反物がいっぱいで買うか!って気持ちになっちゃう!
まぁ、でも、羽織が欲しいのは本当だし、羽織の反物を探すのは楽しいです。
着物が重たい木綿ちゃんなのもあって、何はともあれ軽さが大事。しかも木綿ちゃん厚みもある子で、しかもショールで真冬乗り越えちゃったのでそこまで防寒要素もいらない。
透け感ある羽織って憧れますよねー。
ただ、漫画に出てる派手に柄がついた羽織もすごく良さそうで、最初は明るい色から派手な柄物まで色々漁ってたんですが、後半になってくるとやや高い反物に移行しつつ濃色を目にする機会が増えてきます。染めの具合で黒地から柄が浮かび上がる反物めちゃくちゃ素敵なんだけれど、こういうやつの兵児帯で地味言われちゃってるので、好きなんだけれどつらみとかなってしまいます。
そして最後の方で現れたのが、今回のセールで特別販売されている『青柳』さんです。
良いものは高い。それが世の常識だとはわかっていますが、これは確かに高いし良いものだってわかります。正直、着物初心者すぎて大河ドラマでもお着物提供してますって言われてもよくわからないんですが、技法的にも手芸やってる関係でこれは難しいやつ、この櫛引とかいう隙間とか寄りを着ても洗っても維持できるってすごいなとか思う訳です。
軍資金二倍するスゴクタカイ反物買い物カゴに入れられちゃったけれど、グラデーションの美しい一品です。その日は職人さんがいらしてましてねぇ、『この色の滲みに5色使ってるんだよ』『短い時間で染めが決まるんだよね』とか言われちゃうと、そうですよねーーーー(自分もグラデ描写は色調も変えるわーー)ってなる。
なんだかんだで持ってる着物に色味の似た反物を着物に見立て、合わせていきます。
着物の黒はすごく黒々して強い。服だと黒くてもここまでの硬さというか頑なさを感じないのは、やはり洋裁で一面の面積が曲ったりとかして黒単色でも明度の差が生まれるからなんだろう。和服の黒は面が広いので、圧倒的に強い威圧感が出ます。すごい黒。なんというか、黒だけで他の印象全部食っちゃう。鉄を噛んだような主張があって『いや、黒はない』と稲野も即判断するレベルです。光の具合で柄の出る黒い反物すごく良かったけれど、その良さを上回る黒の暴力。
最初の方に選んだ明るい色のは、やはり明るい着物には合わない感じで候補から外されていきます。
そして一騎討ちになったのは、紺色ベースで白く植物の絵が全面に施された反物と、青柳さんのスゴクタカイ反物です。
いやもう、本当にスゴクタカイ反物凄く素敵なんですよ。肩とかに当たる光の具合で花みたいな模様浮かび上がるし、光に対して透け感あるし、グラデーションで単色の重みもそんなにない。稲野の欲しい羽織の条件はほぼ備えてる。母に地味とかディスられそうだが、イイヤツ!って一眼で解っちゃうその面の良さに唇噛んじゃう。
漫画に触発されて派手柄の羽織も凄く欲しいんですよ。ぶっちゃけると、着物が落ち着いた縞模様で地味とか母にディスられてるから、羽織が派手なくらいが丁度良くねぇ!!??とかなってる。お財布にもとても優しい値段で、スゴクタカイ反物が対抗馬にいなかったら絶対選んでる。
一瞬目の前にぶら下がった、羽織二枚作っちまうか?って誘惑は振り払いました。着物も二枚買ってないうちに、羽織二枚作ってんじゃねぇよって感じです。
スゴクタカイ反物は手持ちの軍資金じゃ買えない。銀行で追加下ろして来いって????骨董市で元呉服屋だろうおじちゃんに、快活に言われちゃったもんねぇ!!!!呉服屋怖い。こっちのお財布事情割と関係なくオススメしてくる。いや、それはたぶん圧倒的に善意だと思う。一期一会で次に買いに来た時には店頭にないし、下手するともう作らないよってなる訳です(お店に来てた職人さんも、新潟だから土地がいっぱいあって型がいっぱい置けるんであって、京都とかはもう土地がないから型も取り置けない(=次の生産はない)らしい)。今買っとけって圧は、客を慮った意思がある。わかる。手芸本は基本増版しないから、売り切れたら絶版さようならである(昔、書店勤めの友人に古い手芸本の捜索を頼んだら、全国の支店に問い合わせして探してくれた)。本なら中古でも良いけど、服の中古はどうかなーーー???(お襦袢は母のお下がりだから良いが、知らぬ他人のだったら絶対着ないって汚れがある)
うーーーーーん。
スゴクタカイ反物買いました。これで羽織作ります。
く!!!俺はネギを背負った客。店員さんの掌の上でコロコロされちゃう!くやしい!!!!
高い羽織1枚あると、その下の着物がポリ100でも大丈夫とか、濃い色の羽織は一枚あると安心とか、帰り際に『凄い素敵です。絶対合います』って囁いてくれたのに慰められました。
羽織紐も当然お薦めされたが、ミネラルフェスタみたいな宝石即売会行っちゃうレベルの人間の目で見てしまうと物足りなさを感じてしまうんです。というか、今現在、ブレスレットとかネックレスが全部羽織紐に見える。
この物足りなさを補う情熱的な心当たりに、声をかけております。
キュルル、バグド、エリガンと視点を渡り歩いて苦労しました、中編です。
最初は順当にルアム達とファラスさんがグレンに合流したのをキュルル視点で書こうとしたんですが、これがまたつまんなくてですねーーーーーー(お前はいつもそうだな)状況説明なんか聞いてたくないから、キュルルのチョコ食レポとか挟んで面白おかしく書こうと思ったけどだめだったつまんない、ってなっちゃう。バグド王視点で書いてると、自分でプレコーグぶん殴りに行っちゃうので、頭痛いって頭抱えるゲーム公式に忠実なバグド王がどっか行っちゃって、これはバグド王視点違うなーってなりました。最後に登場したのが、ちょっと早いけどエリガンくん。これが意外にですます口調と観察眼で、一方的にプレコーグぶん殴るバグド王も生き生きして良いんじゃない?ってなったので、正解!ということで今回の形になりました。
一応、消化期間は長めに用意してあげちゃう稲野ですので、プレコーグくん、早速食べられちゃいました。うーーーーん。グロいですねーーーーー(お前が書いてるんだよ)
もう一話でゾンガロンの能力とオーガの関係に触れて、現代オーグリード編をひと段落させたいな!(本当は前後編で良くないか?って思ったんだが、お題、これが一番良かったから前中後なんだよなぁー。ままならないが、そういうのも執筆ってもんよ!!!!)
炸裂音が響くと、悪鬼ゾンガロンへ大砲が放たれたのです。シールドオーガすら盾ごと押しつぶす鉄球が悪鬼へ襲い掛かるが、それは肉厚な翼によって受け止められてしまいました。
「そう急くな。堪能した食事の余韻を味わっている」
バグド王が拳を振り上げ叩きつけようとしましたが、悪鬼の体から黒い力が迸り、危険を察したバグド王は攻撃を中断して大きく間合いを開けたのです。体から黒い光を溢れさせる悪鬼は、げっぷと生臭い息を漏らしたのです。
「おぉ。昔日の力が蘇っていく…」
それは美味しいものを、たらふく食べた満足感が溢れた声色でした。
「コイツを消化し吸収すれば封印による消耗も癒え、全盛期の力を取り戻すだろう」
異形獣だったものはもう幾許かの骨と外装の欠片が散らばり、地面に染み込んだ血は牡丹雪に覆い隠されていく。異形獣を嗾けた黒衣の剣士の姿も、いつの間にか消え去っていたのです。
あの黒衣の男が繭と関係があるとして、一体、何をさせたかったのか?
グランゼドーラを襲撃した異形獣は、不死の力を封じられなければ、勇者や賢者様が死力を尽くしても勝利できない強敵だったと聞きます。アストルティアを滅亡に導く強敵として差し向けられたなら、納得の敵であったでしょう。
しかし、グレンを襲った異形獣は、ゾンガロンの乱闘がなかったとしてもバグド王が討伐できていたに違いありません。
まさか、悪鬼に食事を提供してやるつもりだったのでしょうか?
悪鬼が力を取り戻せば千三百年前の続きをすると見越し、アストルティアの滅亡の一歩として悪鬼を利用しオーグリードが滅亡する未来をもたらそうとするのは分からなくはありません。
しかし、傲慢な悪鬼がオーグリードを滅亡させた後、黒衣の剣士が望むように動くとは思えないのです。いつか、必ず悪鬼は黒衣の剣士に牙を剥く。異形獣を食らったゾンガロンを見て、分からない訳がありません。
不死の力を持った異形獣を使役する黒衣の剣士にとって、ゾンガロンとはそんなに利用価値のある魅力的な存在なのでしょうか? 不死の力を持つ異形獣をオーグリードに放てば、ゾンガロンと同等の被害を与えることは容易いはず。どうして裏切るのが確定している存在を、復活させ、力を取り戻させてやるのでしょう?
無料より高いものはない。
我々では想像もつかない謀が蠢いているとしか、思えませんでした。
ゾンガロンの体が黒い靄に包まれ、ふわりと浮かび上がったのです。
「オーガ共よ、震えて待つが良い!」
黒い風となった悪鬼がグレンを旋回し、吹雪の彼方へ消えていく。
しかし、それを追う者は誰もいませんでした。吹雪の中を深追いすれば、追手として向かわせた戦士の命が危ぶむだけではありません。あの悪鬼だけが脅威ではない。その事実が、頭上に繭となってのし掛かっているのです。
「頭が痛いな」
戦って叩きのめして終わり。
そんな簡単な問題ではないと、誰もがわかっていました。
中編終了!
バグド王が咄嗟に身を引いた先で、異形獣は頭上から鉄槌のように落ちた暗闇に押しつぶされてしまいました。黒い靄の塊のように姿形が定まって見えぬものの、その重みは鉄球の如きだったのでしょう。下敷きになった異形獣の胴体は完全に潰れ、ねっとりと生臭い血溜まりを作るのです。異形獣は痙攣しながらも、鋭い爪で地面を引っ掻き足掻いているようでした。
「このオーグリードで暴れて良いのは我のみ」
腹の底から響き渡るどっしりとした声色が、淡々と事実を述べる自信を吐き出す。
身震いして黒い靄を払ったのは巨大な獣。立ち上がれば逆三角形になるアンバランスな体つきで、二足歩行を放棄した脚は短く退化し、前身する事に特化した大腿部から上が筋肉ではち切れんばかり。重い筋肉を支える両腕は、樹齢百年を超えるブラウンウッドを彷彿とさせる太さと密度。背に生えた肉厚な翼は、羽でも皮膜でもない、骨と肉で出来た異形の形。ぎょろりとした目が睨みまわし、怯えるオーガ達の反応に邪悪な愉悦を浮かべます。
悪鬼ゾンガロン。
オルセコ王国史を研究する一環で、僕はロンダ岬に封印された悪鬼の姿を見たことがありました。本当に復活したのだと、僕は恐怖に歯の根が噛み合わないのを他人事に感じたのです。オルセコ王国史には悪鬼ゾンガロンによって、他国が如何にして滅んだかが数え切れぬほどの記録に残されています。国王を逃す為に兵士達が犠牲になり、民を失って瓦解した悲しき王国の末路。ゾンガロンの手によって、仲間同士が殺し合い全滅した王国。嗾けたゾンガロンが高みの見物をする中で、潰しあって滅んだ隣国だった国々。当時のオーグリードは部族が王国を名乗っており、大小様々な王国が犇いていました。国同士の諍いも、闘争心の強いオーガ族では日常。しかし、そんな中でゾンガロンは単独で数多の王国を滅ぼし、星の数の命を貪り、悪鬼と恐れられるようになったのです。
伝説の悪鬼はすり鉢のように平たい歯をがちりと剥き出しにし、頭上に浮かぶ男へ苛立ちを込めた視線を向けたのです。
「我が縄張りで獣を遊ばせるとは、見逃した事で随分甘く見られたものよ」
黒衣の男の表情は何の感慨も浮かべず、ただ空に浮かんでいるのみ。その様子に目を眇めたゾンガロンは、手の下に組み敷いた異形獣へ視線を向けたのです。
くあ。勢いよく顎門を開けると、異形獣へ噛み付いたのです!
異形獣の剣をも阻むような硬い外装を噛み砕けば、その下の柔らかい肉を噛んで引きちぎる。繊維を引っ張ってぶちぶちと切っていく力に体が引っ張られ、異形獣がのけぞり悲鳴をあげる。手で筋肉を裂いて腑分けすれば、脈打つ臓器を引っつかんで旨々と口元に運び、歯で噛み潰してのたうつ異形獣の体を鮮血に染める。折って剥き出しになった骨を引き摺り出し、しゃぶったかと思えば噛み砕いて音を立てて脊髄を吸い上げる。
ばきばき。むしゃむしゃ。ずるり。ぶちぶち。悪鬼が咀嚼する音を、吹雪は覆い隠してはくれません。
金属を引っ掻くような凄まじい音に、耳を塞ぎ顔を顰める者が続出する。しかし、つんざくような金切り声が、次第に爪を失った手で掻きむしるが如く湿った音を含んでいく。耐え切れずに嘔吐する音を横で聴きながら、誰もが目の前の虐殺から目を背けることはできませんでした。
もう金切り声が聞こえなくなった頃、名残惜しそうにしゃぶった指先が口から引き抜かれ、ちゅぱっと音がしたのです。口と指先を繋ぐ細い唾液の糸が、撓んでいく。
「ゲテモノは美味いというが、どうやら真実らしいな」
稲野。飯テロも大好きだけれど、食ってる描写を密にした事に自分で引いてる。
いや、ゾンガロンの悪食を誇張させるには大事なんだけどさ。
勇ましく立ち上がり敵の元へ向かう王の後を追って、僕も城の外へ出る。
外はラギ雪原でも滅多に見られぬ猛吹雪です。グレン城の大階段でも三段先はもう白く霞んで見えないのに、頭上の繭だけは暗雲から浮き出たように明瞭に見えて覆いかぶさっています。階段を降り切った広場では篝火が焚かれ、白い中に赤い点が穿たれていました。
兵士達が一匹の獣を取り囲んでいます。
大きさは馬くらいの大きさでしょう。後ろの長い尾でバランスをとっている為に、前傾姿勢になりがちな体を長い手が支えている。銀色だが金属とは異なり甲殻を思わせる外装が体を覆い、顔の部分には巨大な黄色い宝石のようなものが嵌まっている。『異形獣』の名が確かに相応しい、どんな魔物にも当てはまらない特徴を持った魔物でした。
金属同士を引っ掻いたような声に、兵士達はたまらず耳を塞いだのです。
「耳障りな鳴き声だ」
吹雪の轟音の中に混じった感情のない声。ラギ雪原で稀に聞こえる幻聴かと思う場違いな声の出どころを探る兵士達の顔は、一様に上を向いたのです。
黒い外套、黒い鎧、黒づくめの剣士の姿は、白い吹雪の中で異様さを放っていました。立っているのもやっとの吹雪の中でありながら、剣士の肩に掛かる茶色い直毛も踝まである外套も、微風に撫でられているかのように穏やかに揺れているのです。最も肌に近い服は濡れているのか張り付く皺を刻んでいるのに、この寒さに凍りついてもいない。
ジダン兵士長がバグド王に耳打ちします。
「王。グランゼドーラより通達された襲撃者と、格好が一致します。繭の出現と共に現れているなら、同一の人物と断定して問題ないかと」
階段を降りていく王を見て、囲んでいた兵士達が道を開けていきます。グレンの国章が縫い付けられた毛皮のマントを脱いで兵士に手渡すと、異形獣の前に進み出たバグド王はごきごきと音を立てて首を回しました。
「行け原獣プレゴーグ! 本能のままに暴れるが良い!」
金切り声を上げて爪を振りかざす異形獣を前に、バグド王は不敵に笑って見せたのです。
その強さは流石グレン最強。
鋭い爪を振り上げ襲う異形獣の腕を取ると、瞬く間に背をとり腕を捻り上げる。耳障りな悲鳴をあげ、首を捻って苦しむ異形獣に王は失笑を漏らした。
「異形獣とやらの強さを我直々に見定めてやろうと思ったが、赤子のように素直な奴よ!」
激昂して強引に身を捩った異形獣の一撃を半身をずらして避けると、その太い腕で異形獣の首根っこを捉える。次の瞬間バグド王の背中の筋肉が一回りと大きく膨らみ、異形獣が逆さに持ち上げられてしまったのです。瞬く間に異形獣は首から大地へ墜落する。ばきりと、何かが折れる音が吹雪を退けて響き渡りました。
振り回された尾を上半身を捻って避けると、その大きな手が尾の付け根をむんずと引っ掴みます。両手でしっかり掴んだ異形獣を、円を描くように回す。最初はグレンの岩に体を擦り付けていた異形獣の体が、速度と共に浮き上がる。ついに水平にまで上がり速度が増すと、バグド王は『上手く避けるのだぞ!』と笑いながら手を離すのです。異形獣が投げられた方向にいた兵士達は慌てて逃げ出し、異形獣はグレンの石壁に叩きつけられる。
剣や槍では硬い装甲で阻まれたでしょうが、体に直接ダメージを叩き込まれては異形獣もたまったものではないのでしょう。それでも耐久力はあるのか、ずるずると体を引きずり迫ってくる。
「屈せぬとは大した根性! さぁ、貴様の渾身の一撃を見せてみろ!」
バグド王の声と、異形獣の雄叫びと、今日三度目になる警鐘が同時に響いたのです。
レスリングは対異形獣に有効すぎるな。バグド王がとっても強くてニコニコしちゃうね。
拍手に感謝!ぱちぱちっとありがとうございます!