ハコの厚みはここ次第!
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稲野 巧実
『ハコの開き』の管理人。
様々なゲームに浮気しつつ、アストルティアに度々出没する駄目社会人。ルアム【XI881-625】で冒険中。エンジョイ プクリポ 愛Deライフ! 貴方の旅に光あれ!
行動してから後悔しろが信条の体育会系思考。珈琲とチョコと芋けんぴがあれば生きて行ける!
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 俺はグローリーアックスをゾンガロンへ向けて振り抜いたが、巨大な翼が羽ばたき風圧に圧されて僅かに届かない。振り抜いた時には既に悪鬼は届かぬ頭上に舞い上がっていた。
 笑った大きな口が三日月の形になって闇に浮かんでいた。
「我にとっては有意義だぞ、ギルガラン。貴様の絶望が極上のデザートになるだろう!」
 悪鬼は滑らかに滑空し、瞬く間に鬼岩城唯一の出入り口からするりと出ていった。それを見送るしかできなかった自分は、斧の石突きを地面に突き立てる。頑丈な岩肌がばきりと音を立ててヒビ入ったのを感じていた。
 俺は愚か者だ。
 なぜ、千載一遇の機会を棒に振り、意味のないゾンガロンの正体を暴いてしまったのか。
 この事実を伝えたとして、何の利益があると言うのだ?
 母である王妃ララリアの親友であり腹心の部下であるムニュ大臣は、探し続けた父のその後を知れたとして気分が晴れる事はないだろう。思慮深いグリエは父がゾンガロンに成り果てた事を、憂を帯びながらも受け止めるだろう。
 優しいグリエのことだ、王であった父の苦しみを想像して胸を痛めてみたり、辛い事を共に背負いたかったと綺麗事を言うのがありありと思い浮かんだ。
 父がゾンガロンになったと知って、何の意味がある?
 王は民を守り、国を背負うもの。
 所詮、王の器ではなかった父を殺す役目は俺がする事になるだろう。グリエの優しさも思慮深さも賢さも、父を殺す役には何一つ立たないのだ。
 だが。俺は拳を握り締め、きつく歯噛みした。
 俺は絶好の機会を逃し、ゾンガロンを殺せなかった。滅亡の窮地に立たされていたオーガ族だが、海に身を投じる状況に追い立てられていくだろう。俺は命を賭してでも、ゾンガロンを討たねばならない。
 肺の奥まで凍りつくような冷たい空気を吸い込む。目を開ければ、オーグリードの数多の王国が喉から手が出るほどに欲した大量の清流が滝となって流れ落ちていた。
「どうして俺は、判断を誤ってしまったのだ?」
 真っ暗い中に轟々と響く音が、オルセコの乾いた大地に吹き荒れる風に似ている。あの日、父が『弟』を連れてきた日も、こんな冷たい夜風が吹き込む日だった。
 ギルガラン。弟のグリエだ。
 どっしりとした父の声に促されるように、傍に立つ小さな影を見る。第一印象は痩せっぽちで弱そう、だっただろう。俺と同じ銀色の髪に涼しげな薄氷の色の瞳は大きく、オーガの肌の色であっても筋肉の付いていない体は手折れるような細さだった。檜の棒を振り回す幼い子供よりも頼りなかったが、その瞳が青白い炎のように力強く輝いているのが印象的だった。
 俺にとって最も遠くの異物が、微笑んでいる。まるで見守るように、労わるように、そして寂しげに、眉根を下げて目を細め唇の端がかすかに持ち上がる。
 王とて人ですよ、ギルガラン。
 この世界で唯一俺を諭す声が、寄り添うように響いた。

後半しゅうりょ!!!!!!!!!!

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